「これ、あげるよ。」
このたわいのない会話が彼女との最初の会話だった。
第1章 輝きの失い宝石
「これ、何?」
「宝石」
この、キラキラしてないただの石ころみたいなのが?
「本当だよ」
「嘘だよ」
「なんでそう思うの?」
「輝いてないからさ」
「輝いてなくたって宝石は宝石だよ」
確かに、言われてみればそうだ。
なぜ人は輝きがないと宝石だと思うのだろう、
「なぜ、これは宝石だとわかるんだい?」
「輝きを失っていたって美しいから」
美しい、この石ころが、
「俺はそう思わない」
「でも、あげる」
「なぜそんなに僕にあげたがるんだい?」
「何故だろう、」
やはり、俺に渡さなくたっていいものなんだ。
他の誰かに渡せばきっと貰ってくれる人もいるだろう。
「答えは簡単だったよ」
「答え?」
「答えはね、君がー」
チリリリン チリリリン
カチャ
答えが分からないまま鬱陶しい目覚まし音に起こされた。
いつも通り起きたら水を飲む、そしてその後朝食を食べ、顔を洗い、歯磨きをする、そしてその後は
学校に行く準備をする。
「光の失い宝石、」
そして、宝石を太陽にかざし見つめる。
この宝石は確かにあの女の子が言ってた通り、光を失っても美しい。
第2章 救い
やばい、
やばい、やばい、
宝石に魅入っていたらバスの発車時間5分前になっていた。
俺は盛大に靴を鳴らし、バスに飛び込んだ。
キーンコーンカーンコーン
「ふぅ、」
昼休みは俺はいつも屋上で1人素朴にご飯を食っている。
「今日もぼっち飯かァァァ」
どうせなら、すっげぇ美少女がいきなり現れないかなぁ、
ガチャ
いきなり、屋上のドアを開ける音がなった。
「翼さん!!」
え!?今、俺の名前呼んだ、?
「翼さん!いますか!?」
え、やっぱり俺の名前だよな!?
「っー、はい、俺です」
「翼さんですか!?」
「はい、そうですけど、」
って、え、めっちゃ可愛い美少女なんですけれども、
髪は綺麗な白色で、まつ毛長くて、鼻高くて、
完璧美少女なんですけれども!?
でも、どっかで見たことが、
「ところで、なんですか?」
「翼さん、私が以前あげた宝石、持っていますか?」
「以前、?」
こんな美少女に、宝石を、?
「……もしかして、これ、?」
俺はポケットの中から光の失った宝石を取りだした。
「それです!」
「え、?これ!?」
「で、これがどうしたの?」
「私はその宝石を差し上げた日あなたを救いました。」
は?
いや、待って、救われてない、
「え、?」
「その宝石は寿命の短い人に差し上げるやつです。
そして、寿命を伸ばすのです。」
「え、?」
「なので、あなたには私を救う義務があります。」
「え、?」
第3章 ノンフィクション
ん?ん?ん?
こんなのドラマでしか見た事ないんだが、
ウッソォ、
えぇ、
「救うって?どうやって?」
「私、恋というものが分からないのです。なので、私に恋を教えてください!」
、、、は?
「待って、どうやって?」
「私と、お付き合いしてください!」
きたぁぁぁぁぁ!!年齢=彼女いない歴の俺に、
やっと完璧美少女ちゃんと付き合える日が来たァァァァ
「いいよ、」
「ありがとうございます!!!じゃぁ、早速今日デートしましょう!」
話の展開はやすぎん??
あぁ、そういえば、恋したことないって言ってたよな、
最後、あれ、なんて言ったんだろう、
第4章 天野 翼
俺はずっと1人だった。
だけど、あいつに宝石を貰った日から良かれ悪かれ何かが変わった気がした。
両親は前よりも厳しくなった。
ずっと勉強をさせられた。
そのせいで友達は人付き合いが悪い人と見られ消えていった。
悲しいも、苛立ちも、孤独も、喜びも、愛しさも、
全部全部同じに見てきた。
親から振るわれた暴力も、暴言も、罰も、全部全部、辛くなかった。
悲しくなかった。
全部全部、同じだったから。
でも、ずっと勉強ばかりしていたおかげで、成績も学年トップ、先生からの期待も厚かった。
でも、誰よりも目立たない人にもなっていた。
勉強以外に俺には取り柄がなかったのだ。
でも、辛くはなかった。
ずっとずっと苦しかったから、苦しさにも、悲しみにも、ずっと耐えてきて、慣れたから。
ずっと耐えてれば、慣れる。
だけど、一瞬でも光を見てしまうと、慣れという魔法は、溶けてしまう。
だから、光からは目を背けて生きてきた。
だけど、宝石が光だったのだろうか、
俺は今まで苦に思わなかったものが、苦だと思ってしまうようになった。
殴られて、泣きじゃくってしまい、勉強が捗らなくなってしまった。
だけど、次の日学校に行って気づいてしまった。
皆、仮面をつけていることに。
本性を悟られないように、猫を被っていることに。
第5章 君だけは
まさか、今日付き合って、今日デートに行くとは思いもしなかった。
「ごめんごめん!先生の話長くてさぁ、」
「いや、大丈夫だよ、俺、そんなに待ってないし」
「ありがとぉ!!」
こいつだけは仮面を被ってないように見えてしまった。
「じゃっ!行こっか!」
「あぁ」
俺たちはゲームセンターに行った。
「わぁぁぁ!見て見て見て!」
「なんだ、これ、?」
「可愛くない???」
「いや、ブサイクだろ」
「そんな事言っちゃダメでしょぉ?」
「ごめんごめん、じゃぁ、俺が取ってやるよ」
「いいの!?」
こいつの笑った顔が俺は大好きだ。
だから、こいつが笑顔になるなら、なんでもしたい、
そう思った。
「ん、取れた」
「え!?1回で!?凄い!!!」
「いや、簡単だったし」
「天才だよ!!」
「ありがと、」
やっぱり、こいつは仮面を被ってない、
こんな生活が毎日続きますように、神様、お願いします。
俺は親のレールに従ってた方がお似合いなのかもしれない、それに、俺は親の傑作品として生きなきゃいけない。
だけど、もう、嫌だ。
「なぁ、このまま2人で逃げ出さないか?、、、な〜んて、」
「いいよっ!私、翼さんと一緒ならどこへだって行けるよ」
「そうか、」
「じゃぁ、美味しい物食べに行こ!沢山遊んだからお腹すいちゃった」
「そうだな」
両親はこんなこと想定していないだろうな、
だって、人形が主に逆らうはずがないもんな、
あぁ、
こんな幸せな生活、俺がおくっていいのだろうか、
きっと、神様は、俺に来世ひどい仕打ちをするに決まっているよ、
こんな素晴らしい生活をさせてくれてありがとう、
あんなに酷い罰を受けてきたから、神様からのご褒美なのかもしれない、
だけど、ずっと幸せな日々が続いてしまうと、苦痛が地獄になる、だから、少しは苦痛を味わらなければ、いけない、
「俺はずっと、他愛ができなかった。」
「そう、なの?」
「だけど、今はもうできるよ、」
「なんで?」
「君がいるからだよ」
「そっ、か」
「私、こんな生活が続けばいいのにな、なんて、そんなことばかり考えちゃってるや、今、」
「俺も、」
「そんなことあるはずないのにね、」
「私が、君に宝石を上げた理由はね」
コメント
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え?なに?え?やば、天才?