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「えっ!?誰だ!?」
振り返るとそこに立っていたのは、見たことのない女性だった。
もの凄い美人さんだが、残念っ!!
聖奈やミランという二人も美人な妻を持つ俺を、見た目で動揺させることは出来んぞっ!
「初めまして。聖」
「は、は、初めまして?」
めっちゃ動揺するーー!!
いや、美人なんだが、それ以外になんかこう……
神々しいというか・・・・
「…あれ?その声は……ひょっとして、ルナ様?」
「やっと気付いたわね。千年ぶりくらいかしら?顕現したのは」
「えっ!?ホンモノッ!?」
マジかよ…どうした急に?
「ル、ルナ様!初めまして!聖奈です!」「ミランです!」
「ふふっ。二人とも緊張しているようね」
「当然だろうよ…アンタ神様だって自覚ないのか?」
初めて会ったが、この人は間違いなくルナ様だ。
魔力的な繋がりがあるからなのか、俺は疑うことなくこの事実を受け入れることが出来た。
「ないわよっ!もう何百年も祈られてないんだからっ!」
「そ、そうか…それは済まない…」
…地雷踏んだ?
「でも!聖達のお陰で、こうして力を取り戻すことが出来たわ。信者ももの凄い数ね!ありがとう」
「もしかして、態々そのお礼を言う為に?」
「ええ!もちろん!それと、美味しいデザートを食べたかったからよ」
いや、そっちが本命なんじゃ?
なんで俺の周りの女性は食いしん坊多めなんだ?
「ルナ様!良ければケーキを焼くので、お待ち頂けますか!?」
「まあ!本当!?いいわ!待っているからお願いするわねっ!」
「はい!直ちに!ミランちゃん!行くよっ!」
はいっ!ミランの元気な返事の後、この部屋には俺とルナ様が取り残された。
いや〜。神様と二人きりとか、何話せばいいんだ?
「何か考えているわね?残念ながら顕現すると心を読めないのよね。でも、わかるわ。どうせ『美人な女性との会話なんてわからん』とかでしょ?」
「…当たらずも遠からず……」
ずっと心を読まれていたのだから、丸わかりか。
「それで?二人を遠ざけてまで俺に話したいこととはなんだ?」
神様が態々その力を使ったんだ。
どんな制約があるのか知らんが、顕現をしなくては伝えられない話とは……
胃がキリキリする……
「え?何もないわよ?」
「えっ?」
「「・・・・・えっ?」」
驚きまでシンクロさすなっ!!
流石神とその使徒ですねっ!って、ツッコミ入れる人達がこの場にはおらんのじゃっ!!
「マジかよ…この駄女神」
「ちょっとっ!!信仰する神に向かって駄女神はないでしょ!!」
「聖奈とミランがいないと、取り繕おうともしない駄女神が」
もういい。俺の胃のキリキリを返せとは言わん。
しかし、取り繕うことは俺もしないぞっ!
いくら恩があっても、こんな駄女神を敬えるかよ!
俺とルナ様が暫くワイワイしていると、扉がノックされた。
「ルナ様!お待たせしました!!」
ケーキが出来るくらいの時間が経っていたのか……
意外にも話が盛り上がってしまったぞ。
「きゃーーっ!!凄いわっ!!これがあの見るだけで食べられなかったケーキねっ!!」
おい。素が出ているぞ。取り繕えよ。
「お口に合えばいいのですが…」
ミラン。そんな心配は必要ないぞ。
ミランが頑張って作ったケーキを残すなんて、神であっても許さんから。
「こちらを」
聖奈がルナ様にフォークを手渡した。
その姿は、まるで聖剣を神に捧げるかの様な……
いらんいらん!そんな畏まった演出!
パクッ
「!!」
「…どうでしょうか?」
「………美味しいぃ…」
ガクッ……
こけそうになったぞ……
何だよその大袈裟なタメは。
「良かったです!さあっ!食べてください!」
「えっと…」
「聖奈。流石にワンホールはやめろ。切り分けてあげなさい」
聖奈とミランがワクワクした視線をルナ様にぶつけていた。
ルナ様としては食べられないこともないだろうが、じっと見られているのは居心地が悪いだろう。
同じ元ぼっちだからわかるぞ。その気持ち。
聖奈が紅茶を淹れてくれて、俺たちはケーキをいただくことにした。
席に着くと早速食べながら話をすることに。
聖奈とミランは同席することを畏れ多く感じ、床に座りそうになったから俺が止めた。
ルナ様はそういうのは嫌なはずだ。
何となく、そう思う。
「二人とも、過剰に敬うのはやめとけ。ルナ様は寂しがり屋だから、なるべくフランクに接して欲しいはずだ。な?」
「…コイツみたいに不敬なのはどうかと思うけど、二人ともそんなに固くならず、もう少し楽にしてちょうだい」
「「は、はぁ」」
二人はまだ理解できていない様子だな。
神の気持ちを理解できている俺がおかしいだけなんだけど。
「あぁそれで、さっき聖には言ったのだけれど、私が顕現した理由は特にないわ。でも、強いて言うなら助言を与える為に。かしらね」
「助言…ですか?」
「ええ。このまま進んだところで、貴方達は別大陸に行くことは出来ない。ってね」
!!!
「そ、そうなのですね。ではどうすれば?」
無理だったのか。このまま行けたらめっちゃ楽だったのにな……
「無理ね」
「えっ!?無理なのか?」
流石にこの一言には口を挟まずにはいられなかった。
「ええ。貴方達の魔法の腕では、異世界の歪みを突破することは出来ないわ」
「…歪み、ですか?」
「ええ。ソニーには魔力が満ちているのは知っているわね?その満ちた魔力は、地球の天気図の様に、高気圧、低気圧といった感じで区分出来るの。
実際は高気圧とか低気圧といった概念ではなく、混じり合わない魔力の衝突ポイントといった感じだけどね」
つまり普通では混じり合う大気中の魔力だけど、実際は混ざらないモノもあり、その境界線にもう少しで辿り着けると?
「このまま行くと…?」
「何もないわよ。歪んだ魔力により、貴方達は歪みのない位置まで押し戻されるわ。それも気付かないうちにね」
えっ…それって無理ゲーじゃね?
「じゃあ諦めるしかないのか…?」
「そう。さっきまでならそう告げていたわ」
「さっきまで?じゃあ…」
今なら?
なんか変わったことがあったか?
「ええ。特別に私が通してあげる」
「えっ?いいのか?過干渉過ぎないのか?」
良くある話では、神は下界に干渉し過ぎてはいけないって聞くもんな。
バランスが悪くなったり、それこそ世界に歪みが生じるとか、漫画やゲームでよくある設定だ。
「大丈夫よ。船に乗っているだけだから」
「そうか。それなら……え?一緒に旅をするのか?ずっと?」
神様同伴ってどんなチートだよ。
修学旅行に保護者が同伴するみたいで恥ずかしいぞっ!
「まさか!流石にずっとは無理よ。暫くの間、船旅に付き合ってあげるだけよ」
「そうか。こっちとしては有難い。が、何が対価だ?」
「相変わらず失礼ねっ!私は神よ?下々の者達に何かを強請るような見苦しい真似はしないわ!」
ふーーん。
「じゃあケーキとか、デザートも要らないんだな?」
「ギクッ!!?」
いや、声に出すなよ。何だよギクッて……
長過ぎるぼっち期間の弊害が出てるぞ。
「はぁ…聖奈。悪いが二、三日はお菓子作りに注力してくれ」
「勿論だよっ!!ルナ様!必ずやその神々しい舌に適う物を作ってみせますっ!!」
「い、いいのよ?気を使わなくて」
そう言いながらも、めっちゃ目が泳いでるじゃん……
「話が纏まったところで、そろそろ旅の続きをしないか?」
「はい。ルナ様。狭い船室ですが、精一杯のもてなしを致します。至らない点があれば何なりとお申し付けください」
「……いいのよ?」
素直に『友達みたいに接して』って言えばいいのにな。
これだからぼっちを拗らせた奴は……
俺もか……
「じゃあ準備はいいな?」
船に乗り少し沖に出したところで最終確認をした。
「うん!」「ルナ様。少々揺れますのでお気をつけください」
「え、ええ。でも待ちなさい」
いざ出発ってところで、ルナ様から待ったが掛かる。
なんだ?やっぱり拙いからやめるなんていうなよ?
「私が転移させるわ。聖と違い、私なら転移先の状況がわかるから、衝撃などなく転移できるもの」
「流石神様だな。頼むよ」
俺達とは違い、月に祈ることもなく、異世界転移が発動した。
「流石ルナ様ですっ!」「神のお力添え、感謝の言葉もありません」
二人がめちゃくちゃ持ち上げる。
あんまり言うと、恥ずかしくなるぞ? ルナ様が。
本人からしたら呼吸をするよりも簡単なことだろうからな。
「いいのよ。さっ!ミラン。案内なさい」
「はいっ!こちらです!」
強気な姿勢を見せるが、足が震えているぞ?
それよりも……
「なぁ。一ついいか?」
「何よ」
…俺には当たりを強く出来るのに………
「ルナ様なら、態々ここじゃなくても、別大陸にそのまま転移できたんじゃないのか?」
「!?」
・
・
・
「か、過干渉になるからここにしたのよっ!」
何の間だよ…絶対忘れてたろ……
「ぶ、分体だから思考能力も格段に下がっているのよ!分体だからっ!!」
「いや、強調しなくても嘘だなんて思ってないから。そもそも本当か嘘かなんてわからんし」
「嘘だと思っているってことじゃないっ!!」
ぼっちの神様は、プリプリしながらミランの後を追って行った。
デレがないツンとか需要ないぞ?