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ルナ様の協力もあり、俺たちは無事に旅を続けられることになった。

協力と言っても、その時にならないと何もしないというモノで、今はミランとゲームをしながらおやつを食べているようだ。

打ち解け過ぎだろ……

敬われたいのか、仲良くしたいのか……

本当に天邪鬼な神様だな。

そんなルナ様の見た目だが、腰まである長い銀髪に、陶器の様な真っ白な肌、均整のとれた顔、その顔に付いている目はオッドアイだ。

本人曰く、視界の半分は地球とこの世界を俯瞰して見ているから、目の色が違うとのこと。

よくわからん。

身長は168くらいでミランや聖奈よりやや大きい。

服装は羽衣を纏っておりヒラヒラしているが、その中は窺えない。

なんでも認識を改変しているらしい。

これもよくわからん。

後、ヒールを履いているから見た目上の身長は俺ともそう変わらないな。

ちなみに全て神力で作っているそうで、売ればとんでもない値が付くこと間違いなしだ!

歩くATMだなっ!!

「暇だ……」

そう。俺は暇なんだ。

これまでは聖奈とミランの二人が、俺を退屈させない様にちょくちょく顔を見せて話し相手になってくれていた。

だが、俺の相手よりも優先しなくてはならない接待相手が来たことにより、俺は構われなくなっていた。

「まぁ、ルナ様の長い人生からすれば、この触れ合いは一瞬の出来事。長期間のぼっちは辛いからな。ここは我慢して譲るか」

元々俺は一人の方が気楽で過ごしやすかったのに……

聖奈とミランのせいでぼっち耐性がなくなってしまったじゃないかっ!!

責任を取ってもらう為に、俺を生涯ぼっちにしない罰を二人には与えよう!!

うん!これは必ずだな!






「セイくーん!お昼ご飯出来たから、船を停めて降りてきて!」

俺がどーでもいいことを考えていると、階段の方から聖奈が大声で呼んできた。

エンジンと波の音に掻き消されないとは…やるな!

「わかった!!すぐ行くっ!」

秘密だが、寂しかったからなっ!!

何せ時折、三人の楽しそうな笑い声が聞こえていたんだから。

俺はすぐに船を停めて、船内へと向かって行った。




「流石聖奈ね。どれもこれも美味しいわ」

ルナ様はいつも聖奈の料理を見ていたそうな。

いつかあれを食べてやると心に決めていたそうだが、まさか実現するとは神でも思っていなかったようで、大変嬉しそうだ。

「お口にあったようで、なによりです」

「この舌は貴方達をモデルにしたものだから、当然ね」

「モデル?」

どういう意味だ?俺と同じ形の舌ってことか?

別に俺の舌は特殊ではないからみんなとそう変わらないぞ?

「味覚だけではないわ。この人形ひとがたの姿も、貴方達の想像する神をモチーフにして造られているのよ」

「つまり、ルナ様には私たちの様な、目に映る本体はないという話でしょうか?」

「そうね。少し違うけど、そう受け取ってもらって問題ないわ」

実体が無いのはわかるが……

その姿さえもまやかしだったとは……

「でも、肉体があるというのは良いことでも悪いことでもあるわね」

「?悪いことが思い浮かばないのだが?」

「動くのが面倒ってことよ。後、遅いし」

怠惰だな……

駄女神じゃなくて惰女神じゃねーか。

「ルナ様!面倒であれば、いつでも仰って下さい!不肖このミランが、抱えさせて頂きますので!」

「……ありがと。でも、結構よ。面倒だけど、それも面白いの」

「そうですか……」

おいっ!俺のミランを悲しませるなよっ!!

そこは嘘でも運んでもらえっ!!






アホな会話はあっという間に時を経たせ、午後からの航海が始まった。

「ところで。どれくらいでその歪みに辿り着けるんだ?」

ルナ様達は、昼からはゲームをやめて船外へとやって来ていた。

何をするでもなく俺の操縦を眺めていたルナ様に、気になっていたことを聞いた。

「この速度だと、後二日ってところかしらね。どうせ昼間しか航行しないのよね?」

「そうだな。知っての通り、人は寝ないと生きられないからな。

そういえば、ルナ様は平気なのか?今は月なんて見えないけど」

「問題ないわ。この肉体を構成している力が消えたら消滅するけど、そこそこの力を注いで造ったから、一年くらいは月がなくとも活動できるわ」

消滅って……

「それは肉体だけだろ?」

「当たり前でしょ?私の本体は貴方達にわかりやすく説明すると、別次元の様なところに存在しているの。この身体が消滅したところで何の問題もないわ。問題があるとすれば、貴方達が歪みを通れなくなることね」

「それはそれで拙いな」

まぁ一年以上も別大陸にいる予定ではないから、問題なさそうだが。

「まっ。今の神力の溜まり具合なら、消滅してもすぐに次を造れるけどね」

「…便利だな。流石神様」

そりゃ俺達とは出来ることの桁が違うよな。

癌になったら身体を捨てて新しい身体に出来るみたいなもんだもんな。

アンペンメェン新しい身体よっ!ってバ◯コさんが投げてくれるわけか。

「以前にも伝えたけど、そんなに便利でもないわ。信仰心を神力に変換しているのだけど、その信仰している人達はいずれいなくなる。

忘れ去られてしまう期間の方が長いのよ。だからそれまでに貯めておくか、パァーッと使うのか悩みどころなのよね」

「宝くじの高額当選みたいな悩みだな……」

「ルナ様!なるべく長い期間、ルナ教を存続できるように頑張ります。ですので…」

「いいのよ、聖奈。信仰心はあくまでもオマケみたいなものなの。私達の存在意義はこの世界を終焉まで見守ること。

だから布教活動は気楽になさい。

でも、ちゃんと感謝しているわ」

感謝しているからこそ、俺達に過干渉してくれているんだもんな。

半ば無理矢理転移させられて、初めは変な話だと思ったが、今はめちゃくちゃ感謝している。

お互いの感謝の気持ちがぶつかってしまったが、この神様となら上手くやっていけそうな気がするな。

「私もルナ様に感謝しています。この世界に連れてきていただき、心より感謝申し上げます」

「わ、私もです!セイさん達と出会わせていただき、感謝の言葉もありません!!私は幸せです!!」

「ふふっ。これだと感謝合戦になっちゃうわ。さっ、こんな話はおしまいにして、楽しい話をしましょう」

ルナ様が大人だ……

いや、年齢的にはクソババァもいいとこなんだろうが……

俺には子供っぽいのに、何で聖奈達には見栄を張るんだ?

これが前に言っていた、適合度合いの違い…なのかな?




その日も無事に夜を迎え、ルナ様の転移で帰還することになった。




「少し疲れたわ…」

俺たちは船旅を中断して、夕方のロサンゼルスへやって来ていた。

暫く観光していたが、ルナ様は人混みに酔ってしまったみたいだ。

「貴方達、よく平気ね?」

「慣れだと思います」「はい。私も慣れたのだと」

今までも神様の力で眺めることはしていたのだろうが、受肉して下界に降りるのとは訳が違ったのだろう。

「人の耳は音を拾い過ぎよ…そのくせキャパは小さいし…」

遂に、自分で造った身体に文句を言い出したぞ。

「自分の名前が呼ばれない限り、周りの雑音は聞き流すようにしているんだ。もちろん一緒にいる人の声はちゃんと拾うけどな」

「そうなのね。全部の音が私に向けられているのかと思ったわ」

「精神の病気にならない限り、その思考は異端だと思われるぞ」

俺の同級生にそんな感じの病気になってしまった人がいた。

神様でもなるのかな?

いや、これはぼっち症候群の症状か。

引き篭もりが家を出れなくなるみたいな。

「聖くん。仕方ないよ。ルナ様は初めての下界なんだから」

「あら?それは違うわ。大昔、人がまだ太陽と月を神格化していた時代にも、顕現したことはあるわよ。ただ…あの時代には、こんなに人はいなかったのよね…」

なるほど。神様なのに考えが甘かったんだな。

まぁ、俺たちの為に顕現してくれたんだ。

出来る限り、フォローしないとな。



「さっ。休んだし、何か美味しいものでも食べましょ?聖のお金でね!」

「はいっ!」「美味しいお店はリサーチ済みです」

……本当に俺たちの為に顕現したのか?


俺は使徒だけど、信者じゃないから無条件には信じないぞっ!

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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