テラーノベル
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「ということは、嫌いというわけじゃないのね。俊哉さんがもしあの子のことを嫌いじゃないなら、お願いしたいことがあります」
「な、何ですか?」
「琴音のことを鳳条グループの御曹司から奪ってほしいの」
その言葉にギョッとした。
あまりに唐突で有り得ないことだったから。
「何を言ってるんですか?! 奪う? 僕が?」
「そうですよ。あの子、見かけに寄らず男性が好きなんです。だからきっと、あなたのことも好きだと思うわ」
この人の真っ赤な唇が動くたび、なぜか怖いと感じてしまう。
「か、彼女は結婚してるんですよ。しかも、相手は鳳条グループの御曹司。僕など足元にも及びません」
自分がどうあがいても、彼には敵わない。
ネットで見た顔があまりにも美し過ぎて、同じ男性として愕然としたことは今でも覚えている。
あの容姿を越えられる人物などどこにもいない。
「あなただって御曹司なんでしょ? 「AYAI」と言えば知らない人はいないわ。アプローチをすれば琴音は迷う。そしたら、さらにもうひと押しして。琴音はきっと俊哉さんに乗り換えるわ。大丈夫、結婚なんてただの儀式ですからね」
「儀式って……あなたは自分が何を言ってるのかわかってますか? 大切な妹さんを、旦那さんから奪わせる。つまりは僕と不倫させようと?」
「不倫? 甘いわ。それじゃあダメ。あの2人を離婚させてちょうだい」
「り、離婚?」
「そうよ、離婚よ。「AYAI」の財力があれば何でもできるでしょ? お願い、これは琴音のためでもあるんですよ」
「琴音ちゃんのため? どういう意味ですか? 」
これ以上聞きたくないような、聞きたいような……複雑な気持ちになる。
「あの2人は本当に愛し合ってるわけじゃないの。偽物の夫婦を演じてるだけ。潰れかけたうちの工場に融資するために、仕方なく形だけの夫婦になったのよ」
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