「んあ………もう朝か………」
目を開けると、眩しい光が差し込む。
寝た感覚はしないが、この外の明るさから察するにすでに7時は越えているのだろう。
俺はベットから起き上がり、カーテンの側に行く。
俺が覚えている記憶では、昨日の夜カーテンは開けなかったはずだが……
不思議に思いながら、ふとスマホを見ると、
「……げっ……」
デジタル時計の時刻は11時を差していた。
そりゃ、こんなに外は明るいし、橙もカーテン開けるわな………
昨日の行為の疲れを感じながら、俺はゆっくりと起き上がった。
ーダイニングー
スタスタスタ…
橙「…あ…桃ちゃん…」
桃「…よぉ、橙。はよ。」
なんとなく気まずい雰囲気が流れる。
俺と橙がカップルならば、ここで橙が朝ご飯を作っていて、俺に出してくれるーなんてことがあるだろうが、
橙「…コーヒー、飲みたいんやったら自分で淹れてな。」
桃「…ああ、わかった。」
俺たちに、愛情は無いから。
お互いの欲を満たす為のーいわば道具。
俺は、コンビニで適当に買った菓子パンを頬張りながら目の前に座っている橙をチラリと見た。
橙「〜♪」
桃(何か、妙に嬉しそうだな……)
いつもならば、相手が何を考えていようが、気にしていなかったが、
ー今日はー
桃「…なんか良いことでも合ったのか?」
その嬉しそうな顔に、少しモヤモヤしたのだ。
橙「え?…あ、いや、その、」
橙がスマホをこちらに向ける。
橙「…これ、俺の好きなアニメ、劇場版出るらしいからさ。」
橙「今度観に行こうと思て。」
桃(っ!…これ…)
橙が嬉しそうに見せて来たスマホの画面見覚えがあった。
それは、俺が大ファンのアニメ作品だった。
桃(まさか、橙も好きなんて……)
桃「…お前も、これ好きだったんだな。」
橙「え?てことは……」
橙「桃ちゃんも好きなん!?うわぁ〜めっちゃ嬉しい…」
…橙がこんなに楽しそうなの、始めて見たかも…
桃「ああ、俺も今度劇場版見に行くんだよ。」
橙「え、ホンマ!?じゃあ一緒に行かん?」
…は?いやいや、一緒に行く、え、は?
ありえないだろ…
だって俺とコイツは所詮身体だけで…
橙「同士と語りたいねん!お願い!」
…同士、か。
桃「…じゃあ、一緒に行くか。」
橙「やったぁ〜!嬉しい……」
嬉しそうに笑う橙を見たこの時から、
俺のコイツへの気持ちは変化していくのであった。