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りゅうせいと視線を合わせて、じっと覗き込む。彼の瞳が、みるみるうちに潤んでいくのが分かった。
「……もしかして、ゆうたくんと二人でいたこと、怒ってるの?」
一生懸命「気にしていないフリ」をして、自分の気を紛らわせていたけれど。……やっぱり、どこかに苛立ちと寂しさが残っていたんだろう。
「……無理だったぁ」
「え?」
「いつの間にか、いつきくんとゆうたが一緒にいなくなってて……それに気づいてから、二人が帰ってくるまで、ずっと、無理だったぁ……っ」
うわぁ、と急に堰を切ったように泣き出した。
ずっと、ずっと、我慢してたんた。
「大丈夫だよ。二人の時、りゅうせいの話しかしてないから。ゆうたくんも、りゅうせいとお友達になれて嬉しいって言ってた。俺もゆうたくんも、りゅうせいのことが大好きだって話しかしてない」
「……本当に?」
「うん、本当。……俺がりゅうせいに嘘つくわけないじゃん」
まだグズグズと言い続けているりゅうせいを慰める。
本当に、まだまだ子供なんだから。……だから、いつまでも心配で目が離せないんだよ。
「……いつきくん、ごめんね。俺がゆうたとお泊まりするって知った時、いつきくんもこんな気持ちだったんだよね。……二人が、ほんの数十分いないだけで、胸がはち切れそうだった。信用してないわけじゃないのに、……すごく、辛かった」
そっか。
りゅうせいは怒っていたんじゃない。「ごめんね」を言うタイミングが、分からなかっただけなんだ。
……なんだかなぁ。愛おしいとか、そんな言葉ひとつでは片付けられない感情が、胸いっぱいに広がった。
「……愛してる」
「ふぇぇ?!」
情けない声が返ってきた。
さっきまでグズグズと鼻を鳴らして泣いていたくせに。
驚きすぎたのか、涙も鼻水も一瞬で引っ込んで、りゅうせいの顔は真っ白になっている。
「なんで……っ?!」
「なんでって、そう思っちゃったんだから仕方ないだろ」
こんなセリフ、一生口にすることなんてないと思ってた。
いざ言ってみると、心臓がうるさくて、小恥ずかしくて死にそうだ。
「……俺も。俺も愛してるよ、いつきくんのこと」
俯いた俺を覗き込むようにしてりゅうせいが俺と目を合わせる。
なんなんだよ、その顔。
嬉しすぎて、顔じゅうくしゃくしゃにして笑いやがって。
「……だいきもさ、こんな気持ちだったのかな?」
「んん? なんで今だいきくんの話ぃ?!」
少し唇を尖らせるりゅうせいを連れて、二人でベッドへと歩いていく。
背後から彼を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
面と向かって言うには、この先はあまりに照れくさすぎるから。
「……俺と、結婚しませんか?」
「うわぁ、……心臓爆発しそう」
背中でクスクスと笑う気配。
りゅうせいはくるりと俺の方を向くと、真っ直ぐに視線を合わせてきた。
こういう時、いつも男気があるのは年下のりゅうせいの方なんだよな。
「俺、一度失敗してるし。先の保証なんてできないけど……。でも、これからもずっとりゅうせいと居るんだろうなって、一緒にいたいなって、本気で思ったんだ。二度目の俺が、軽々しく口にしていい言葉じゃないのは分かってる。りゅうせいのこれからだってあるし……」
「いつきくん? しー、して」
ちゅっと、優しいキスが言葉を遮る。
いつも大事なところで、俺はこの「部下」に救われている気がする。
これじゃ、どっちが年上で上司なんだか分かりゃしない。
「……今は、俺たちが一番幸せな形を選ぼうよ。だから、結婚。悪くないと思うよ?」
「……りゅうせいは、幸せ?」
「うん。いつきくんと一緒にいる時が、世界で一番幸せ」
「……お揃いだねぇ」
「ふふっ、お揃いだねぇ」
真っ赤になったりゅうせいに、そのままの勢いでベッドに押し倒された。
見た目によらず、相変わらず凄まじい「ゴリラパワー」だ。
「今日は、俺が全部してあげるって決めてるから。いつきくんはじっとしてて」
「……はい」
逃げ場を塞ぐように、熱い吐息が首筋に降ってくる。
どうやら今夜は、指先ひとつ触らせてもらえそうにない。
全てを奪い尽くそうとする年下の恋人に、俺はただ、甘い降伏の溜息を漏らした。
萩原なちち
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