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<凌太>
松本ふみ子と話をして瞳に関する投稿を削除させたが疑問は残る。
瞳と再会する少し前からBarには行っていなかったし、マスターも“彼女”が来ていたことを言っていなかった。
俺が行くと現れる。
そして、瞳と学生時代に付き合っていたことは他の同窓生から聞けばわかるかもしれないが、再会してから食事に行っていることを知っていることが気になる。
松本ふみ子と寝たのは2回だ。
身分証明証やスマホは鍵つきのバッグに入れていたが、その鍵番号が知られていた可能性もある。
Barでは途中からは時々しか隣に座らなかったが俺が行く時には必ず“来た”から。
時折、先にいることがあったが基本的には俺が来たことを知ったから”来た”ように思える。
誰かに教えてもらっていた?
マスターが教えるだろうか?いや、それはないだろう。
俺の行動を逐一知る方法
スマホの画面をスライドさせていく。
一ページは元から入っていた機能のアイコン、二ページ目は普段よく使うもの、三ページ目はあまり使わないがあると便利なものや、登録等で使ったものをフォルダにまとめて入れてある。
一度使えば基本的に二度と使うことのないアイコンばかりをまとめている為、その後も何かあれば入れるが見ない。
そのフォルダをタップする。
フォルダの中には銀行などの登録時に使用したアイコンが並んでいる。このフォルダの下部に3つの点があることから3面に渡ってアイコンが収納されているのがわかる。フォルダ画面をスライドさせると何かの申請に使ったアイコンの中に見知らぬアイコンがあった。
タップをしようとして思いとどまる。
勝手に起動して何かがあるといけないと思い、スクショを撮ってから探偵をしている知人に画像を送信した。
暫くするとその知人から着信がありすぐに電話に出た。
『なにかわいい事してんの?』
「何がだ?」
『あのアイコン、カップルで居場所を確認できるアプリだけど』
「平たく言うとGPSってことか?」
探偵は楽しそうな声で『そう、隠れて入れられてた?』と言って笑っている。
「そのようだ。明日時間があれば相談したい」
『明日の午前中ならいいぜ』
「助かる、じゃあ」
『おみやげはブッカーズで』
「了解」
通話を終えてからリビングのテレビの前に無造作に置いてある長方形の紙袋を見る。
千里眼でもあるんだろうか、長方形の紙袋には先日知り合いにもらった木箱に入ったブッカーズが入っている。
雑居ビルの3階、窓には飯島探偵事務所の文字が見える。
1番上のシャツのボタンを外し袖を折った手で俺のスマホをみている男は高校の後輩だ。
ブッカーズが入っている袋を嬉しそうに受け取った後、例のアイコンが相互で居場所がわかるという、主にカップルが使っているアプリの説明をしながら操作をしている。
「製品版だと複数の登録が出来るが、これは無料版だからこれを入れた人間と甲斐さんの二人だけです」
そう言いながらアプリを起動すると友だちリストにはFUMIKOとだけ表示されていた。
そして地図が表示されるとFUMIKOが今いる場所が表示された。
「FUMIKOは親しい女?」
「それほどでも」
「スマホのロック解除は盗み見れるとしてIDまでわかるとか」
俺のセキュリティの緩さだ。
「色々なサイトのパスワードを覚えるのが面倒でメモアプリに入れてある。それを見たのかもしれない」
「初歩的なやつだ」と飯島がつぶやいた後
「初歩的なやつだ」と俺も返した。
「FUMIKOはストーカーかもしれないな。接触は?」との問いに、正直に今までの経緯を話すと「高校の時も凄かったですもんね」と朗らかに黒歴史を持ち出された。
「このアプリ、すぐに削除するのはやめて様子をみたらどうです?もし、向こうがまだ諦めていない可能性を考えるとFUMIKOの動向をこちらでも把握できるし。FUMIKOの名前を聞いても大丈夫ですか?」
「松本ふみ子」と返事をすると飯島はパソコンで何かを調べ始める。
カチカチとマウスの音がした後
「大学が同じで同窓の松本ふみ子さん見つけました」
「そんな簡単に?」
「ストーカーって案外承認欲求が強めだったりするから、こういう実名のSNSに登録していたりするんですよね。って、この松本ふみ子って人、高校も同じですよ」
「そうなのか?」
「ちょっと待っていて下さいね」と言うとまたパソコンの操作をすると電子化された卒業アルバムを表示し、ある女子生徒の写真をポインタで指し示したが、今の面影はあるのだろうが全く記憶に無かった。
そして、なぜ飯島が卒業アルバムを持っているのか気になった。
「俺とお前とは学年が違うよな?」
「商売道具です。有名どころの学校のアルバムは何気に使えたりするんですよ」
「なるほど」
「留学から帰ってから“偶然”会ったんでしたっけ?大学が一緒だったと言っていたんですよね?でも、本当は高校から一緒だったんですね。なんか引っかかります」
そう言われれば、大学が同じだとしか言われていない、高校のことは気づいてなかった?そんなわけはない。
地図上のマンションの位置からずっと動いていないマークをじっと見つめた。
松本ふみ子とは話をしたが信用はできない、ただ瞳に危害が及ぶ事だけは避けないといけない。
相手の動向がわかるのはある意味良かったのかもしれない。
飯島に礼を言って帰った。