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テラーノベル(Teller Novel)

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あるところに王族の次に有力で高貴な貴族がおりました。

その貴族は人里離れた山に小さなお城を建てて過ごしておりました。

そんなある日、その山から1人の少年が愛馬を走らせて街の近くにある森におりてきました。










オレはアメリカ、とある貴族の長男だ。

今オレは愛馬に乗って家出をしているのだが……


愛馬はスピードの上げる指示ばかりし続けてしまったせいか、スピードを落とすように指示してもなかなか落としてくれずに走り続け、街を走り抜ける訳にはいかないのでなんとか森に入ったのだが……


愛馬のスターは何度止まるように指示しても止まらず、暴走し続けて激しく揺さぶられ続けたオレはただでさえ家での出来事で泣きかけなのに、恐怖で余計に涙腺が刺激され、とうとうオレは泣きながらスターにしがみつくことしかできなくなった。


何度も何度もどうどうと声をかけたが、スターは何も聞こえていないかの様に走り続けた。

もうこのままオレは隣国まで行ってしまうのか、そのまま1人と1匹で生きていくことになるのか……その不安に包まれて嗚咽する程泣き続けて、自分も知らない場所へどんどん迷い込んで行った……



その時、近くの木陰に居た着物に身を包んだ一人の子供が遠くから迫り来る暴れ馬の姿を見つけ、進む道に出て両腕を広げた。

視界にその姿を捉えた馬はギリギリの所で即座に急停止した。



しかし、スターはまだおとなしくはならずその場で暴れた。

すると道に立ち塞がった子が馬が暴れているにも関わらず傍に寄ってくると「失礼するぞ」と言って、颯爽とオレとスターの首の間に入って来た。

その子は片手でオレの腰にてをまわして落ちないようにすると、もう片方の手で手綱を握ったまま大きな声でどうどうと言って、スターの首を優しく撫でるように叩いた。

オレはその子の腰に両腕をまわし返して半ば強くしがみつくようにした。

それを確認したであろうその子は空いた手で手綱を握って、撫でていた手は手綱を離して引き続きスターをなだめ続けた。


だんだんスターの激しさは落ち着いていき、やがてスターは息を切らせながらもやっとその場にとどまり、暴れるのをやめた。


??「よしよし、良いコだなしばらく休め」


アメリカ「……………」


そして一段落すると、その子は少し息切れしながらこちらに振り向いた。


??「えっと……大丈夫か?」


アメリカ「……………」こくっ


そして彼は静かにスターから降りた。

そしてまたこちらに向き直り、


??「降りられるか?」


と言って手を差し出してくれた。


オレはその手を握って慎重にスターから降りた。

静かな地面にやっと降りれて安堵すると、腰が抜けたようでオレはその場に座り込んでしまった。


??「だっ、大丈夫か!? 」


アメリカ「……こ、怖かった………」カタカタ……


言えることはそれしか見当たらず、オレはまた泣き続けてしまった。

まだ恐怖で体が震えること、自分より年下であろう子に助けられたこと、知らない所へ来たこと、全てが入り混ざって涙は止まってくれなかった。


すると彼はスターにぶら下がっている手綱を握ると、オレの隣にしゃがんでオレが落ち着くまで背中を撫でてくれた。






10分程経つと、彼はオレの手を握った。

??「……立てるか?」


オレはまた無言で頷き、ゆっくりと立ち上がった。

まだオレが泣きじゃくって目を擦っているのを見て、彼は握っている手をそのまま引っ張ってくれた。

彼のもう片方の手はスターの手綱を握っていた。


しばらく人気の無い森の中を、オレはずっと泣きじゃくりながらも彼に手を引かれながら歩き続けていた。

画像


??「………あまり目元を擦るなよ?目を痛めるぞ」


アメリカ「………うん……」


??「すぐ近くに池があるんだ、そこで休もう」


アメリカ「……………」


そして彼が言った通り、少し歩き続けて彼が着いたと言ってオレが顔を上げるとそこには透明で綺麗な池があった。

彼はスターを池の傍に寄らせると、スターはゴクゴクと水を沢山飲み始め、彼も一旦スターの手綱から手を離した。


??「お前も喉が渇いているんじゃないか?ここの水は飲んでも大丈夫な位綺麗だし美味しいぞ?」


アメリカ「……………」


自然の水をこのまま飲むのは初めてだから、正直不安はあったが今は彼の言う通り喉が渇いているのでオレも池の傍に寄った。

彼もオレから手を離すと両手で水を掬って口を付けた。


その時オレはようやく彼の姿をハッキリ見ることができた。

彼の頭には獣の様なミミが生えていたのだ。

そのミミは彼が水を飲む度にヒコヒコと動いていた。

その姿を不思議に思うと同時にオレは彼の顔にも見入っていた。

女性のようなどこか可憐な横顔が美しかったのだ。


そんな彼の姿を眺めた後、オレはすぐに我に返りオレも両手で水を掬って思う存分水を飲んだ。

意外と水は美味しかった。

その頃にはオレの涙は止まっていた。


アメリカ「………あの、ありがとう……」


??「あぁ、いいんだこれくらい何度もしたことがあるから」


アメリカ「………その……名前を聞いてもいいか?」


??「そうだな、俺は日帝だ。」


アメリカ「………オレは……………アメリカ」


日帝「……そうか(アメリカ?どこかで聞いたことがあるような……まぁいいか)」


アメリカ「……?(……オレの名前を聞いても何も言わないんだ……この国のヤツなら大体皆知ってると思うんだけど………)」


日帝「アメリカ、お前はどこから来たんだ?」


アメリカ「……言いたくない(……って言っても無理矢理言わされちゃうかな……)」


日帝「そうか……不躾に聞いてすまない」


アメリカ「えっ(あやまった?)」


日帝「沢山走っただろう?このコも大分疲れている様に見えるんだ。大変だっただろ? 」


アメリカ「……うん………」


優しく接してくれる彼は眼差しまで優しくて、なんだか心が落ち着いた。


そして1時間程時間が経つと、オレは彼にさっきから気になっていることを質問してみた。


アメリカ「あの……日帝、頭のそれって……」


と聞いた瞬間、日帝はハッとすると顔を赤くしながらミミを両手で隠す様に押さえた。


日帝「これは……その……………誰にも言わないでくれ……」


アメリカ「あ……うん、わかった

……ところで日帝、君っていくつなの?」


日帝「?俺は十二歳だぞ?」


アメリカ「!?!?」


12歳……それは今のオレと同じ歳だった……


アメリカ「……今年で12?それとも去年になったの?」


日帝「いや、今年で12になった」


アメリカ「……オレと同い年だ…」


日帝「あっそうなのか!?」


なんだ……身長的にそこまであるとは思わなかった……


アメリカ「……オレてっきり、日帝はオレより年下の子だと思ってた………」


日帝「……俺だってお前は俺よりいくつか年上なんだと思ってた………」


アメリカ「………ンフフッ」(*⌒―⌒*)


日帝「な、なんだよ//(笑った……)


………いいなお前は……俺より背が高くて……」


アメリカ「日帝だって……オレよりも乗馬が上手くて羨ましいよ。

………ねぇ、日帝は馬小屋とかで働いてるの?」


日帝「いや、俺は働いてはいないんだ」


アメリカ「じゃあどうしてあんなに馬をなだめるのが上手かったの?」


日帝「それは……」


といいかけたところで日帝と、寝ていたスターのミミが来た道から反対方向の道の先を向いてピンと立った。

スターはそれと同時に頭を上げた。

オレもそちらの方を見ると遠くに人影が見えた。

どうやら2人にはあんなに遠くにいるヤツらの音が聴こえているらしい。


オレはその人影達が自分を探しに来た追手だと察知した。

無理矢理連れ返されると思うと怖くなり、思わず日帝の着ている着物の袖を掴んでしまった。

それを察した日帝はオレの手を握ると立ち、寝転がっていたスターを立たせた。


日帝「すまない、また少し走ってもらうぞ」


そう言って日帝はスターの鞍に股がり、オレも引っ張り上げると後ろに乗せた。

そしてスターを軽く撫でるとまた手綱を握り、慣れた手つきでスターを走らせた。







そして来た道をしばらく走り続けていると、すっかり夕方になっていた。

人気は無くなり、また静かな森にオレ達だけになった。


日帝「………」


アメリカ「……日帝、オレもう大丈夫だ……オレ家出して来てたんだ、だからもう家に帰るよ……」


日帝「……そうか、さっきのあの奴らは大丈夫か?」


アメリカ「うん、それに早く帰らないと母ちゃんも心配してるだろうから」


日帝「……そうだな、帰ったらこのコはよく休ませてやってくれ。こんなに走り続けたんだ、もしかしたら病気になるかもしれないから獣医さんにも看てもらってくれ」


アメリカ「うん、わかった」


日帝「一人で帰れるか?」


アメリカ「うん………日帝、ありがとうな。

楽しかった、いつかまた会えたらお礼させてくれ」


日帝「わかった、待ってる」


アメリカ「……じゃあ、またな!」


日帝「あぁ!」


そうしてアメリカは城へ、日帝はまた来た道を戻り港へ帰って行った。








それから、約8年後………

俺は日帝、この国の広い海にある島々の中で、 最も大陸から遠い島々を統べる貴族の内の子息の一人だ。


今年、俺は二十歳になった。

それはこの国での、性別の関係なく結婚が許される歳であった。


そして、俺はある貴族に嫁ぐことになった。


なんとその貴族はこの国で最も有名で有力な貴族、[イギリス家]であった。


そして俺の番になる相手というのが、八年程前に会ったあのアメリカと言うのだ。

半ば強引な話だったらしい。


あれからも社会の勉強をしており、アメリカがどういう人物なのかを知ったのだが、そんな彼が何年も前に一度だけ会ったことのある俺を選ぶとはどういうことなのか……


そもそも俺達[日本家]はイギリス家とは、俺が産まれる数年前に父上(江戸)が会議でイギリスさんに遠路遙々こちらまで来てもらった事以外、他に目立った交流は今までなかった。

……となるとアメリカが俺を選んだのは恐らく八年前のあの時の事であろう、俺がアメリカがそんなに凄い人物とも知らず不躾に接触し、更に許可も無しに愛馬に股がった等の不敬で強引な結婚とは名ばかりの縁談がされたのだろう。


この縁談については俺も初めて聞いたのはつい数ヶ月前だった。

俺が二十歳になって一週間後の事だった。


父上からその話を聞かされた時、その場には日本家全員が居た。

つまり俺だけでなく俺の兄の空兄さんや弟の海、そして新しく産まれた十歳の日本とにゃぽんも居た。

その時空兄さんは家族達の前にもかかわらず珍しく怒り、断るように言ってくれた。

弟は替わりに自分が嫁ぐと言い出してくれたりしたが……


空兄さんは俺と海の三兄弟の中で長男にあたる。次期に日本家の当主を任される。

海はまだ結婚ができる歳になるまで一年半ある。

縁談で嫁がせるように言われたのは俺自身、そして今年が終わる前に嫁いで来るように言われたらしい。

それにこの縁談を受け入れれば、この大陸から遠くはなれた島の防衛や交易をとても良くしてくれると言うことらしい。

俺達日本家はこの島の安全と豊かさを何よりも大切にし 尽くすのが務め、だからいけるのは俺だけだということを二人にも言って、俺もこの家を出るのは寂しいが婚活の苦労が割けたと笑って言った。

それでも皆は終始悲しそうな顔をしていた。

にゃぽんに至っては、泣き初めて俺に抱きついて来た。

日本もつられたのか涙を流しながら俺の腕を掴んで顔を伏せた。

にゃぽんは泣き疲れて俺の腕の中で眠るまで泣き続けていた。

その事を今もよく覚えている。





そして明日、イギリス家より使いの船が俺を迎えに来る。


夕食等を終え、明日は朝早くから忙しいので早く寝るようにした。









その日の夜、物置部屋で一人泣いていた日帝を空と海が見つけ、しばらく寄り添ったのちに

物寂しくなった日帝の部屋で、日本とにゃぽんも集めて五人で暖かい夜を過ごしたそうな。


貴族の世界線のカントリーヒューマンズ

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