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題名 幼馴染は恋愛対象外。
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ヒロイン
花咲 玲奈「ハナサキ レナ」
3年2組 好き 飴玉
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ヒーロー
木葉 秋紀「コノハ アキノリ」
3年3組 好き 竜田揚げ
Start
木葉 side
「おー、玲奈。またそんなとこでボーッとして」
校門の前、いつものように俺を待っている花咲 玲奈の頭を、わざと雑に撫でる。
サラサラした髪の感触が手に残って、本当はそのまま引き寄せて抱きしめたい衝動に駆られるけれど、俺はそれを「幼馴染の兄貴分」という仮面で隠し続けてきた。
玲奈は、俺のことを「何でもできる器用な幼馴染」だと思っている。
けれど現実は、全然違う。
玲奈が他の男と楽しそうに話しているのを見るたび、胸の奥がどろりと焼けるような不快感に襲われるし、玲奈が俺に向ける「信頼しきった無防備な笑顔」に、何度理性が飛びそうになったか分からない。
俺は、お前のヒーローでも、お兄ちゃんでもない。
一人の、余裕のない男なんだよ。
「……あのさ。私、もう秋紀と一緒に帰るの、やめようかなって」
玲奈の口から飛び出したその言葉に、思考が一瞬、白く染まった。
夕闇のなか、玲奈が「さよなら」と告げて俺の横を通り過ぎようとする。
——あぁ、もう無理だ。
「……離さねーよ。何が『ただの幼馴染』だよ」
自分でも驚くほど低い声が出た。
玲奈の細い腕を掴んで引き戻し、そのまま強引に、逃げられないように抱き込む。
「俺が、どれだけ我慢してたと思ってんだよ。……お前が『幼馴染』なんて壁を作って笑うから、手出すの必死に抑えてたのに」
腕の中にいる玲奈が、小さく震えているのが伝わる。
恐怖か、それとも期待か。……どちらでもいい。もう、逃がす気なんてさらさらない。
「恋愛対象外? 冗談じゃねぇよ。……俺にとっては、最初からお前以外、女として見てねーんだわ」
ずっと隠してきた独占欲が、言葉となって溢れ出す。
器用に生きるのが俺のモットーだったけど、お前のことに関しては、いつだって世界で一番不器用で、余裕がない。
「……いらねえよ、幼馴染なんて。明日からは、俺の女として隣にいろ」
そう言い捨てて、俺は玲奈の唇を塞いだ。
ずっと夢にまで見た、甘くて柔らかい熱。
「幼馴染」という壁は俺が壊してやる。
— 玲奈 side
頭が、真っ白だった。
唇に触れているのは、ずっと「お兄ちゃん」だと思っていた秋紀の、熱くて少し荒い呼吸。
何度も一緒に帰って、何度も冗談を言い合ったはずなのに。
今、私を抱きしめる彼の腕は、痛いくらいに強くて、紛れもなく「男の人」の硬さだった。
「……っ、ん……」
ようやく唇が離れたとき、私は腰が抜けて、彼のジャージを掴んだままへたり込みそうになった。それを秋紀が、さらに強く引き寄せて支える。
「……今の、どういう意味か分かった?」
見上げると、そこには私の知らない秋紀がいた。
いつもみたいにヘラヘラ笑ってなくて、獲物を狙うみたいな、鋭くて熱い目。
その瞳に映っているのは、顔を真っ赤にして、涙目で震えている情けない私。
「わ、わかんない……。だって、私たち幼馴染で……秋紀は、私のことなんて妹みたいにしか……」
「まだ言うか。妹にこんなことするわけねーだろ」
秋紀は呆れたようにため息をつくと、私の額に自分の額をこつん、とぶつけた。
至近距離で重なる視線。逃げたくても、彼の大きな手に顔を挟まれて動けない。
「いい? 玲奈。俺、お前が他の男に告られたって聞くたびに、夜も眠れないくらいイラついてたんだわ。……お前が勝手に俺を『恋愛対象外』にしてただけで、俺はずっと、お前を落とすタイミング狙ってたの」
「え……、うそ……」
「嘘じゃねーよ。……余裕ねーのは、俺の方なんだわ」
秋紀が少しだけ困ったように笑って、私の耳元に顔を寄せた。
「幼馴染は、もう終わり。……明日から、他の男と喋るときは俺の許可取れよ? 嫉妬で何するかわかんねーから」
耳に触れる熱い吐息に、全身がゾクッとする。
好きだったはずなのに。
遠い存在だと思って諦めようとしたのに。
私を縛り付ける秋紀の独占欲が、今は怖いくらいに心地よくて。
私は、彼の胸に顔を埋めることしかできなかった。
「……秋紀の、バカ」
「あー、はいはい。バカで結構。……その代わり、一生離さねーから覚悟しろよ」
夕闇の中、二人の影は、もう「幼馴染」の距離には戻れないほど、深く重なっていた。
幼馴染は恋愛対象外? 答えは No。
fin
あとがき