テラーノベル
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γの反応が出たのは、前回の任務から一週間後だった。
《警報:レベル3》
《アビス反応:γ×1、β×1》
「……またγ」
ライナが息を吸う。
「でも、前ほどじゃない」
ミオはそう言ったけど、
声は少し硬かった。
私は――
不思議と、落ち着いていた。
(大丈夫)
そう思えた。
理由は、分からない。
――変身。
魔力が身体を包み、
桜色の光が舞う。
「サクラ・モモ、行くよ!」
胸の奥が、
すっと静かになる。
前よりも、
戦う感覚が“整理されている”。
現場は、
夜の立体駐車場。
βが先に動いた。
「来る!」
桜霞フラッシュ
桜の粒子が弾け、
視界が白く染まる。
「今!」
ミオが水を叩きつける。
アクア・スプラッシュカッター
ライナの雷が続く。
スパーク・チェイン
βはすぐに沈んだ。
――問題は、γ。
影が、
“そこにいるはずなのに”
輪郭を結ばない。
「……近い」
ミオが言った瞬間。
床が、
歪んだ。
γが、 下から“湧いた”。
「っ!」
私は反射で前に出る。
(止める)
右足に力を込めた。
――あれ?
踏み込んだ瞬間、
足の感覚が、 少しだけ遠い。
でも、
痛くはない。
「モモ、無理しないで!」
ライナの声。
私は振り向かずに叫んだ。
「平気!」
桜暁ブレードラッシュ
刃が、
γの“肉体”を裂く。
怯む。
(効いてる)
もっと行ける。
γが腕を振る。
直撃。
本来なら、
吹き飛ばされる距離。
でも私は、
転ばなかった。
「……え?」
衝撃はあった。
確かに。
なのに――
痛みが、薄い。
「モモ!」
ミオが氷を展開する。
フロスト・カーテン
冷気が包む。
その瞬間、
胸が ぞわっとした。
(……楽)
戦えてる。
前より、
ずっと。
怖くない。
「モモ、下がって!」
ミオの声が 少し遠い。
私は踏み込む。
桜閃ピンクブレイク
γの影が 大きく揺れる。
「今だ、ライナ!」
雷が落ちる。
スパーク・ブレイカー
γが崩れ落ちた。
沈黙。
勝った。
怪我、なし。
息も、 そこまで乱れていない。
「……モモ」
ミオが近づいてきて、
私の顔を覗き込む。
「大丈夫?」
「うん!」
即答だった。
「どこも痛くない」
それは 本当だった。
でも。
ミオは、
ほんの一瞬だけ 眉をひそめた。
「……そっか」
星守院への帰路。
私は、
自分の手を見る。
震えていない。
心臓も 早くない。
(……強くなったんだよね)
そう思うのに、
胸の奥が 少し、空っぽだ。
星守院の廊下で、
露花が待っていた。
「お疲れさま、ルピナス」
にこやかに。
「今回も、負傷なしね」
私は胸を張った。
「はい!」
露花は、
一瞬だけ 私の足を見る。
そして、 優しく笑った。
「……順調よ」
その言葉が、
なぜか 少しだけ、冷たく聞こえた。
――この時はまだ。
私は知らなかった。
痛みがないのは、 “治っている”からじゃない。
感じなくなり始めているだけ
だということを。
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