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1つ、夢を見る。
薄暗い場所で誰かが話している。
ぼんやりとしていてよく分からないが何となく、懐かしい感じがする。
1つ、瞬きをする。
場面が変わる。
眩しい太陽が光り輝く丘、その中心に大きな御神木がある。
__ああ、また此処か。
起きた時には何一つ覚えていないこの場所。
鮮やかな花は枯れることを知らない。
御神木を背に座っている人が数人。
その前に立ち、願う様に呟く少女。
いつも片手の何かを大事そうに持っている君とは、
少ししか離れていないのに声も姿も認識出来ない。
また同じ夢。
毎日見る夢。
変わらない夢。
終わらない夢。
「…あいことば」
「__え?」
はっとして顔を上げる。
誰かの声。
冷静な脳は直ぐにその声が少し離れた少女の声だと告げるが、それが本当に其処の少女の声かどうか疑ってしまう。
「…そっかぁ、此処も駄目なんだなぁ。」
振り返った少女の瞳には、哀しさと諦めが混じったような翡翠色だった。
「…君は_」
「“あいことば”は覚えてる?」
「“あいことば”…?」
“あいことば”…すぐに記憶を辿ってみるが確実に覚えているとはいえなかった。
何となく記憶にはあるが本当にそれが“あいことば”だと確信を持てるわけでは無かった。
「じゃあ、一応言っておくね。一回しか言わないからよく聞いててね。」
でも君は忘れちゃうよね、と微笑した。
絶対に覚えておかないといけない言葉。
それだけはわかった。それなのに、そろそろ目覚めらしく視界がぼんやりとし音が聞こえなくなっていく。
「いい?あいことばは__」
そう言った少女はまた元の御神木の方に歩き出した。
咄嗟に待ってと叫ぶが声は出ない。
もう、終わりのようだ。
夢の最期にはっきりと見えたのは、
少女の持つ、1枚の写真と何個かを繋げたようなキーホルダーだった。