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第2話 雲に隠れた月
夜の巡回。
長い廊下を進む足音が、静まり返った棟にこだまする。
鉄扉のひとつを確認し、鍵束を鳴らしながら、omrは次の独房へと足を運んだ。
そこに、いつもの男がいた。
背を壁に預け、腕を組み、目を細めている囚人――wki。
「……月、出てるか?」
唐突にそう尋ねられ、omrは足を止めた。
「どうしてそんなことを聞く?」
「ここからじゃ空なんか見えねぇ。だからだよ。」
wkiは吐き捨てるように言いながらも、声にはどこか寂しさがにじんでいた。
窓の方へ視線を向け、omrは短く答える。
「……雲に隠れてる。今夜は、光は弱い。」
一拍の沈黙。
そして、wkiはふっと口元をゆるめた。
「そうか。なら俺と同じだな。」
意味深な言葉に、omrは眉を寄せた。
「……同じ?」
「隠れてんだよ。本当の顔も、本当の気持ちもな。」
wkiは鉄格子を軽く叩き、挑発するような笑みを浮かべた。
だが、月明かりの差さない闇の中で、その笑みはどこか儚く見えた。
omrは口を開きかけて、しかし言葉を飲み込む。
看守が囚人に踏み込んではならない――その掟を、自分は誰よりも知っている。
鍵束を鳴らして歩き出す。
背後から聞こえた囁きは、気のせいかと思うほど小さかった。
「……お前、変わってるな。」
廊下に響く足音だけが、二人を繋ぐ唯一の答えだった。
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