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第3話 血の匂い
昼下がりの独房棟。
鉄格子の向こうから、怒号が響いた。
「てめぇ、また俺の分に手ぇ出しやがったな!」
次の瞬間、椅子が倒れる音と肉のぶつかる音。
囚人同士の喧嘩だ。
警報が鳴り、看守たちが一斉に駆け込む。
先頭に立ったのは、若き看守――omr。
「やめろ! 下がれ!」
しかし、拳を振り上げた囚人が、止めに入ったomrへと向き直った。
「邪魔すんなガキが!」
その腕が振り下ろされる。
ほんの刹那。
鉄格子の向こうにいたはずの wki(若井滉斗) が飛び出し、体ごと割って入った。
鈍い音。
肩口に拳を受けたwkiが呻き、床に倒れる。
「……っ、てめぇ……」
倒れた体を押さえ、血が滲む。
omrは呆然と、その姿を見つめた。
「なんで……お前が……」
wkiは苦笑し、口元から赤い液を拭った。
「バカな看守が、殴られて倒れるの見たら……後味悪いだろ。」
周囲の看守たちが囚人を押さえ込み、騒ぎは収束する。
だが、床に転がる血の匂いだけが、omrの胸を刺し続けていた。
彼は初めて気づいた。
――若井滉斗は、ただの“囚人”ではない