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特訓は、最後の最後まで続いた。
「ここまでだ」
リヒトの一声で、ようやく全員が息をつく。
額に滲んだ汗を拭いながら、私は小さく呼吸を整えた。
胸の奥では、光と闇が静かに、けれど確かに共鳴している。
「安定したな」
短く告げられたその言葉に、全員が黙って頷いた。
「……もう、やれるだけのことはやった」
「あぁ……」
それ以上、誰も言葉を続けなかった。
***
そして――大会前夜。
私は自室のベッドに腰掛け、窓の外を見つめていた。
王都の灯りが、夜空に散らばる星のように瞬いている。
(明日……魔術大会)
一般の部。
年齢制限はなく、優勝すれば来年四月から王立魔法学院へ入学できる。
――みんなのいる場所へ。
ノックの音が重なり、扉の向こうから次々と顔が覗いた。
ユリウス。
レオンハルト。
エリオス、セレス、カイ、ノア。
誰一人、「勝て」とは言わない。
ただ、口を揃えて言うのは――
「無事でいろ」
その一言だけだった。
それが、何よりも胸に沁みる。
最後に、リヒトが静かに告げる。
「恐れるな」
「君の力は、もう君のものだ」
その言葉を胸に刻み、私はゆっくりと目を閉じた。
***
――魔術大会当日。
朝の空気は、驚くほど澄みきっていた。
王都の中央。
巨大な円形闘技場には、すでに多くの人々が詰めかけている。
「すご……人、多い」
思わず、素直な声が漏れた。
「観客席、ほぼ満席だね」
「一般の部は特に人気だからな」
ユリウスとエリオスが周囲に視線を走らせ、警戒を怠らない。
王族席には、王と王妃の姿もあった。
私に気づいた王妃が、そっと微笑みかけてくる。
(……大丈夫)
そう、自分に言い聞かせる。
控え選手用の通路へ向かう途中、ざわめきが一段と大きくなった。
「……あの子、誰?」
「かわいい……」
「一般の部? 冗談だろ?」
好奇と疑念の視線が、容赦なく集まる。
けれど、不思議と怖さはなかった。
レオンハルトが、そっと私の手を取る。
「ボクたちは、ここにいる」
ユリウスも静かに頷く。
「逃げたくなったら、すぐ言え」
私は一度、深く息を吸った。
胸の奥で、光と闇が静かに応える。
そのとき――
「――これより、王国主催・魔術大会を開会する!」
闘技場全体に響き渡る宣言。
割れんばかりの歓声が、空を揺らした。
一般の部。
無名の挑戦者たち。
そして――最年少の参加者、ルクシア。
運命の舞台は、もう目の前だ。
私は、一歩前へ踏み出した。
――ここからが、本当の始まり。