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闘技場の中央に設えられた魔法陣が、淡く光を放つ。
「一般の部・第一試合!」
司会の声が響き渡り、観客席がざわめいた。
「続いて入場するのは――最年少参加者、ルクシア!」
その瞬間、空気が一気に揺れた。
「え、子ども?」
「本当に出るのか?」
「一般の部だぞ……?」
無数の視線が、私に集まる。
小さな体。
年齢にそぐわない白磁のような肌と、光を宿した瞳。
私は、ゆっくりと闘技場へ足を踏み入れた。
(……大丈夫)
胸の奥で、光と闇が静かに応える。
反対側のゲートが開き、対戦相手が姿を現す。
「一般の部常連、炎術師・ガルド!」
鍛え上げられた体躯。
年季の入った魔力の波動。
「……は?」
ガルドは、私を見た瞬間、露骨に顔をしかめた。
「おいおい、冗談だろ」
「子守りでもさせる気か?」
観客席から、くすくすと笑い声が漏れる。
――そのとき。
「相手が誰であれ、油断は禁物ですよ」
王族席から、王妃の静かな声が響いた。
王は、腕を組んだまま闘技場を見下ろしている。
「……始まるな」
過保護組の一角。
「……近づくなよ」
「いや、最初から全力で来るだろ、あいつ」
「ルクシア……」
ユリウスの拳が、ぎゅっと握り締められていた。
――ゴングが鳴る。
「試合開始!」
瞬間、ガルドが踏み込む。
「悪く思うな、さっさと終わらせてやる!」
炎が爆ぜる。
熱風が、闘技場を包み込んだ。
(速い……!)
だが――
私は、一歩も動かなかった。
「……なに?」
次の瞬間。
炎が、私の手前で“ほどける”。
「――なっ!?」
光の膜。
薄く、けれど確実な防御結界。
ざわ、と観客席が揺れた。
「今の……」
「結界?」
「詠唱、してないぞ?」
ガルドが歯噛みする。
「チッ……なら、これでどうだ!」
炎が重なり、巨大な火球となって迫る。
私は、静かに手を伸ばした。
(抑える……流す……)
胸の奥。
光と闇が、ゆっくりと回転する。
――光。
闇。
その境界で、生まれた力。
「……っ!」
火球は、歪み、消えた。
完全な――無効化。
「……は?」
会場が、静まり返る。
次の瞬間。
「な、何が起きた!?」
「消えた……炎が……!」
ガルドの顔から、余裕が消える。
「……お前、何者だ」
私は、はっきりと答えた。
「ルクシアです」
それだけで、十分だった。
「――来い!」
ガルドが渾身の魔力を解き放つ。
私は、初めて一歩、前へ出た。
光が走る。
闇が絡む。
二つの力が、完璧な調和をもって解き放たれ――
「――っ!!」
衝撃が、闘技場を揺るがした。
砂煙が舞い、視界が覆われる。
沈黙。
そして――
「……勝者、ルクシア!」
司会の声が、遅れて響いた。
一瞬の静寂のあと。
――どっ、と歓声が爆発する。
「嘘だろ……」
「勝った……!?」
「今の、何……!」
王族席。
王妃が、静かに息を吐いた。
「……この子は」
王は、低く呟く。
「――本物だ」
過保護組。
「……無事だ」
「倒れてない……」
「よかった……」
レオンハルトは、ぎゅっと拳を握りしめた。
「……すごい」
私は、胸に手を当てる。
心臓が、速く打っていた。
でも――苦しくはない。
(……いける)
この場所で。
この力で。
私は、確かに戦えている。
闘技場の中央で、歓声を浴びながら。
――最年少の挑戦者は、確かに一歩、歴史を刻んだ。