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「……なあ、じゃぱぱ。それ、いつまで撮ってんの」
深夜2時。シェアハウスの編集室には、PCの駆動音とエアコンの微かな音だけが響いている。
たっつんが呆れたように声をかけたが、レンズを向けている本人はニヤニヤと笑うばかりだ。
「いいじゃん。たっつんが真剣に編集してる顔、レアだし。視聴者も喜ぶよ?」
「嘘つけ。どうせボツにする気やろ」
たっつんはキーボードを叩く手を止め、椅子を回転させてじゃぱぱに向き直った。
いつもの動画なら、ここで「なんやねん!」と賑やかにツッコミが入るところだ。
けれど、今はカメラの赤いランプも点いていなければ、他のメンバーも寝静まっている。
じゃぱぱの手元にあるカメラは、ただの「逃げ道」だった。
「……たっつん」
「なんや」
「今日さ、撮影中ずっと俺のこと見てたでしょ」
じゃぱぱがカメラを机に置き、一歩踏み込む。 たっつんの心臓が、跳ねるように脈打った。
見透かされている。リーダーとして皆を引っ張る背中を、誰よりも近くで、誰よりも特別な視線で追ってしまっていたことを。
「……自意識過剰や。俺は全体の流れを見てただけやし」
「ふーん。じゃあ、今……俺がこんなに近くにいても、なんともない?」
じゃぱぱがたっつんの椅子の肘掛けに手を突き、顔を近づける。
逃げ場を塞がれたたっつんの鼻先に、じゃぱぱの体温と、微かに香る柔軟剤の匂いが届いた。
「じゃぱぱ、お前……」
「俺は、なんともなくないよ。たっつんが他の誰かと笑ってるだけで、実はめちゃくちゃ焼いてるんだけど」
冗談めかした口調の奥に、隠しきれない独占欲が滲む。
じゃぱぱの瞳は、いつもの悪戯っぽさを失い、ひどく真剣にたっつんを射抜いていた。
たっつんは、赤くなる顔を隠すように視線を逸らそうとしたが、強引に顎を掬い上げられた。
「リーダーの命令、聞ける?」
「……ずるいやろ、それ」
反論する声は、自分でも驚くほど震えていた。 じゃぱぱがゆっくりと顔を寄せる。
触れるか触れないかの距離で止まった唇から、「相棒」の枠を壊すような熱い吐息が漏れた。
「嫌なら、今すぐツッコミ入れてよ。……たっつん」
名前を呼ばれた瞬間、たっつんの手がじゃぱぱのシャツの裾をぎゅっと掴んだ。
拒絶の言葉は、もうどこにも見当たらなかった。