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本来なら交わることの無いはずの二つの種族が、こうして同じ場所にいるなんてさ。
僕達が初めて会った時みたいじゃないか。……君達は、どう思うかな? あの時は、本当に驚いたよ。
まさか僕の作った薬のせいで、こんなことになるとは思わなかったからね。えっ?どうしてこんなことをするかって? ははは!決まっているじゃないか!!僕はただ、自分が一番幸せになれる世界を創りたいだけだよ。
だからまず最初に、人間達が暮らす『現世』とは別のもう一つの世界を創り上げた。そしてそこに『天国』と名付けたんだ。
これで準備は整った。あとは『地獄』にいる罪人達を呼び寄せれば、新たな世界が完成する。
ああそうだ、忘れていたよ。君達に一つ教えておくことがある。
いいかい?よく聞くんだよ。
「現実」というのは、「幻想」によって成り立っているんだ。
つまり、「現実」というものは誰かがつくっているものではなく、『自分自身がつくっているもの』だということなんだ。
だから皆んなにも、是非ともそのことを理解しておいてもらいたい。
もし仮に君達が「おめーらなんかに誰が負けるか!」とか、「お前らがいくら束になったって俺達にゃ敵わねェんだよ」などとほざいても、僕はそれに対して全く反論しないし、むしろ全面的に肯定しようではないか。
だってそうだよね? 僕達は所詮人間なんだもん。それにひきかえ彼等は海の世界の頂点に立つ種族だよ? 僕らなんかとは比べ物にならないくらい強いし賢いし……」
「そんなことありませんよ! 確かに私は人間の世界ではまだまだひよこ同然ですけど、それでも私達人間は貴方方と同じ言語を話しています!」
「それは君達がたまたま魔族とのハーフだからさ。もし君達の先祖の中に純粋な人間が混じっていたらどうなっていたと思う?」
「えっ!? そ、それは……」
「ほーらね? 言葉なんて通じなくても意思疎通できるんだよ。現に君はこうして僕の話を理解してくれてるじゃないか。それに僕は今まで一度も嘘をついたことはないよ」
『……』
「ん~そうだねぇ。じゃあ、今度は君の言葉を教えてもらおうかな?」
『えっ?』
少年は無邪気に笑いながら言う。
「大丈夫だよ。僕ならきっと君の言葉を理解できるはずだし。だって僕らは同じ人間なんだからさ!」
そして、彼は私に向かって手を差し伸べてきたのだ。
私はどうしたらいいかわからずにただ呆然とその場に突っ立っていた。すると―――。
「おい! お前達そこで何をしてる!?」
遠くから男の人が走ってくる姿が見えた。それは私のお父さんだった。
お父さんは必死の形相で私たちの元へ駆けつけると、すぐさま私を抱きかかえた。