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「よっしゃ!今日も俺の虚言が炸裂したで!視聴者も大喜びや!」
ひまじんは、配信終了後も興奮冷めやらぬ様子で、ボイスチャットでまくし立てた。今日の企画で、彼は巧妙な嘘をつき、メンバーを混乱させ、視聴者を大いに笑わせた。
しかし、その声は、隣に座っていたとーますには少し「無理をしている」ように聞こえた。
ひまじんの「困り事」は、彼の「自分らしさ」でもある「虚言」だった。彼の嘘は、時に人を傷つけ、彼自身を孤独にする。現実世界で人間関係に失敗したトラウマから、彼は「虚言」という「鎧」を身につけていた。この鎧は、彼を愛されない真実の自分から守るためのものだったが、同時に、本心で人と繋がるための壁にもなっていた。
「ひまじん、今日の虚言は面白かったけどさ」と、とーますは切り出した。「あの嘘、どこまでが本当で、どこからが嘘なの?」
ひまじんは一瞬、言葉に詰まった。
「は?全部嘘に決まってるやろ!嘘やから面白いんやんけ!」
いつもの早口で強がるが、とーますは気にしなかった。「ううん。俺はね、ひまじんの嘘を聞いて、すごい物語だって思ったよ。ひまじんの頭の中には、誰も思いつかないクリエイティブな世界があるんだね。」
それは、ひまじんが長年恐れていた「嘘つき」というレッテルではなく、「アーティスト」という新しい「見方」だった。
「俺は、お前の嘘を『物語』として受け入れるよ。だから、安心して、どんどん面白い『物語』を作って。俺は、ひまじんの作った世界が好きだよ」
とーますは、そう言ってプリンを差し出した。彼の無条件の肯定と、プリンという純粋な「味方」は、ひまじんの心の壁を少しずつ溶かしていく。
(俺の虚言は、誰かを騙すための『欠点』じゃなくて、誰かを楽しませる『才能』…?)
ひまじんは、いつも否定していた自分の繊細さが、実は物語を作る力だと気づいた。「虚言」という「自分らしさ」は、「嘘」と捉えれば「困り事」だが、「創造」と捉えれば「すてきな個性」になる。
彼はとーますを見て、ニヤリと笑った。「フン。まぁ、俺は天才やからな。お前らがワイの才能に気づいたのは、不幸中の幸いやな」
それは、いつもの強がりだったが、その声には、以前よりも軽やかな響きが混じっていた。ひまじんは、ニート部という場所が、彼の嘘すらも「個性」として受け入れてくれる最強の「味方」であることを知った。
彼の心の壁は、完全に消えたわけではない。だが、その壁には、とーますという「味方」が作った、小さな窓ができた。