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不透明な日常

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不透明な日常

4 - 第4話 分からない…

♥

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2026年03月02日

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夕方。キッチンから、ことことと音がしていた。

陽葵はエプロン姿で、鍋をかき混ぜている。

「今日の夜ご飯俺が作るね」

振り返って、少し得意げに笑う。

「シチュー。俺の得意料理だし!」

「……うん」

テーブルに並んだ皿から、湯気が立っている。

白くて、見た目はとてもおいしそうだった。

スプーンを持ち、ひと口。

……。

(……あれ?)

何も感じない。

温かさはあるのに、味が、ない。

「どう?おいしい?」

期待が混じった声。

紗奈は一瞬だけ間を置いて、微笑んだ。

「……うん。おいしいよ」

嘘だった。

でも、陽葵の顔がぱっと明るくなるのを見て、それ以上何も言えなかった。

(今日だけ、だよね)

味がしないなんて、初めてだった。

その後も、会話はいつも通りに流れていった。

陽葵は安心したように片づけをして、夜には帰っていった。

玄関のドアが閉まる音がして、部屋に静けさが戻る。

(……気のせい、だ)

そう言い聞かせて、紗奈は布団に入った。



次の日

朝、いつものように陽葵が迎えに来た。

「調子はどう?」

「昨日よりは、楽だよ…」

休んだからか、体は少し軽い気がした。

並んで歩く道も、どこか静かで穏やかだった。



学校

昼休み

紗奈は弁当を開け、箸を動かす。

……やっぱり、味がしない。

噛んでいる感覚はあるのに、

何を食べても味がしない。


その様子を、向かい側から陽葵が見ていた。

(……?)

紗奈の表情が、あまり動かない。

いつもなら、好きなものの時に少しだけ目が柔らぐのに。

箸の動きも、どこか機械的だった。

(……なんか、変だ)

声には出さず、ただ様子を観察する。


放課後

「なあ、帰りさ」

陽葵が声をかける。

「今流行ってるカフェ、行かね?」

「…うん。……いいよ」

店内は明るくて、甘い匂いが漂っていた。

陽葵が頼んだドリンクを受け取って、ストローを差す。

「一口あげるよ!」

「……え、大丈夫…」

「いいから!いいから!」

半ば強引に押しつけられて、仕方なくひと口。

……。

(分からない…)

色が黄色っぽい。レモンなのかな?

「……レモン?」

その瞬間、陽葵の表情が曇った。

「……え?」

グラスを見て、紗奈を見る。

「これ、めちゃくちゃ甘いミルクティーだけど……」

空気が、止まった。

「あ……」

言葉が、続かない。

陽葵は何も言わなかった。

ただ、紗奈の顔をじっと見つめる。

(やっぱり……)

その視線に、紗奈は目を逸らした。

味がしない。

それが、ただの体調不良じゃない気がして。

胸の奥に、静かな不安が広がっていった。


カップを置いたまま、陽葵は僕の顔をじっと見ていた。

さっきから、会話の合間に何度も。

「……ねえ、紗奈」

「今日さ、このあと うちに泊まりに来ない?」

唐突だけど、声はいつもより柔らかかった。

断る理由を探そうとしたけど、言葉が出てこない。

「……迷惑じゃ、ない?」

「全然。むしろ来てよ」


そして陽葵の家に向かった。

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