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気がつくとそこは見知らぬ部屋だった。
少し暗くて…
「起きた..?」
隣には綾香が居た..が、椅子と一緒に縄で縛り付けられていた。俺も同様に。
「どうやら捕まったみたい。」
「え..つか..まった?」
何故捕まえられたのかが謎だ。俺は扉を開けてそれから…
何故出ようとした俺を捕まえたんだろうか。
「私の家には物を盗む人がよく来るの。今日は私たちを監禁して高価な物の在処を吐かせるのかもね。」
「この家、強盗結構来るの..?」
「こんな豪邸だからかな。」
やっぱりこんな所に来るべきでは無かったと思った。そもそも何故綾香はこんな平然として居られるのか、これが毎日と言っていい程に起こっているから…?
「誰か来るよ。」
目の前にある上の階層に続く階段から足音が響いてきた。
ゴクリと唾を飲み勇気を持って待ち構えた。
降りてきた人の容姿は全身黒の服装でパーカー。
肌、顔、全てを隠せるような容姿で、完全に犯人の服装だと確信した。
「おい..!俺らをこんな所に閉じ込めて何するつもりだ!」
綾香が横からこっそりナイフを渡してきた。
「これで縄を切って。私はもう切ってある。」
彼女の慣れなのだろうか、護身用的なナイフをいつも持ってると思うとゾッとする。
焦りながら、バレずに縄をじわじわと切った。
強盗者は単刀直入に
「この家で1番高価な物を渡せ、さもなくば命は無いぞ。」
と言ってきた。
なんだかこの強盗者も慣れているんじゃないかと思わんばかりだ。
「教えるから、この縄を解いて。」
え..?縄はもう解いているのになんで…?
逆にバレてしまう…
このまま過ごして逃げればいいのに…
「いいだろう、ただおかしな事をすれば銃で撃つ。」
そういって強盗者は綾香の縄をナイフで切り落とそうとした途端…
綾香が拳銃を手で弾き飛ばし、そのままの勢いで手を掴んで背負い投げからの締め付けで強盗者の行動を防いだ。
つい俺はスゴすぎて拍手してしまった。
「おお〜」
すると綾香は突然とんでもない事を言い出した。
「この人、拳銃で撃って。」
なんの躊躇いもなく俺に言ってきた。
「え..え?この人..え?」
「何してるの。早く。」
いくら犯罪に手を染めた者だとしても殺す気まではなれない。
「殺すまではしなくても…」
「早く…抑えつけれなくなる…」
強盗者が必死に抗い、起き上がろうとしていた。
肉体の差があるのでそれは当然だった。
「早く..!!」
「…」
手が震える
拳銃を構えても
彼女諸共撃つ可能性がある。
でも怖いのはそれじゃない。
人を殺めることになることだ。
息が荒くなってきた
「撃て!!」
彼女の初めて聞く大声に驚いて引き金を引いてしまった。
血がドバドバと流れ出る…
「あ…ぁ…」
腰が抜けてその場で尻をついた。
「遅いよ。危うく私達死んでしまう所だった。」
これが…普通生活…??
これが..通常??
人を殺すのが…??
「もしかして…ここに来た強盗とかって、全員処分してるの..?」
「そうだけど。」
これが普通、という軽い言葉が飛んできた。
ありえない。信じられない。
もうこんな人と接したくない。競い合いなんて関係ない。もう負けでいい。俺には出来ないことを何だってやれるのが彼女なんだ。
「あ…この事は誰にも言わないでね。君も同罪だから、人を殺したし。」
そうだった。俺も人を殺してしまった。
でも正当防衛とかそんな感じで罪にならないとか…
「無罪になると思わない方がいいよ。私と一緒に隠蔽してた方が身のためだと思う。」
「これから毎日帰りに私の家に来て。拒否権もないよ。私と君は同じなんだから。」
あ。やばい。これは。
俺の人生が180°変わる。
このヤバい人のせいで、俺は犯罪者になってしまった。
「この事は誰にも話さないで。」
「じゃ、また明日」
すんなりと言われて別れを告げられた。
とぼとぼと帰りながら、
(今日から俺はあの女の下で働く犯罪者になってしまったのだろうか。)
と、過ちの過去を振り返るようになってしまった。