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次の日、私は相変わらずエドルの街に居た。が…
何をやっても上の空で上手く行かない。
やることは分かっている。
畑を耕し直して、用水路を引き寄せ、水を入れ、水田にする。
そんな単純な事なのに、ミス連発…
水を入れるタイミングを間違えるし、堰き止めた仕切りを間違って外すし…
何故だろう?
心が重い…
なんとか、水田まで完成させて、その日は早々と後宮に戻った。
すると、皇帝陛下の御渡りがあった。
き、き、気まずい…
あの、口付け事件以来である。
それに、正妃の噂も気にかかる。
「せ、せ、正妃様をお迎えするようでございますね…!?」
私はそんなことを口走ったと思う。
「何故それを…?」
皇帝陛下は困ったようにそう言った。
「ま、マリアから聞きましたわ!」
「そうか…
して、そなたはどう思う?」
「国の一大事に、私の意見など…」
「無い…か…」
皇帝陛下は寂しそうに笑った。
嘘だ…
嫌だ…
正妃など迎えないで欲しい…
そうはっきりと思っていたなら、きっと泣いてすがったのに…
でも、その時の私はそこまでの感情に気がついても居なかった。
国事であれば、仕方ないこと。
そんな風に自分を納得させるしか無かったのだ。
しかし、皇帝陛下から意外な言葉が出た。
「断ろうと思っておる。」
「えぇぇぇぇ!?
何故ですか!?」
目ん玉飛び出るかと思った。
「信用ならぬからだ。
スーベルシアの王は末娘を大層可愛がっていると言っていたが、簡単に切り捨て、平和協定を破って我が国に攻め込むやもしれぬ。
その時おそらく末の王女はスパイのような働きをするであろう。
それにな…
俺は大国と呼ばれるスーベルシアと戦ってみたいのよ…
馬鹿らしいと言えば馬鹿らしいが…
しかし、そうせぬと真の平和は訪れない。
そんな気もするのだ。
いや、それは確信に近いと思う。」
「な、な、なるほど!
確かにそうかもしれません!」
私の心は何故かスッと軽くなった。
「ま、もう一つの理由については…」
「もう一つの理由…?」
「悔しいから今は言わぬよ。」
そう言って笑う皇帝陛下はまるでいたずらっ子な少年のようだった。
願わくば…
その笑顔をずっと隣で見ていたい…
そう思ったのは、悔しいから言わないでおこう…
そして、その日私たちは初めてベッドで添い寝して眠った。
皇帝陛下の腕の中は温かくて広かった。
私はそんな幸せがずっと続くと、その時は信じて疑わなかった。
こうして、スーベルシアを敵に回したエドババーバは、また戦の渦に巻き込まれる事になっていったのだった。