至って普通の金曜日だった
雨降らないかな、とか言ってたら本当に降ってきた
参考書だとか濡れてはいけないものもないしあとは帰るだけだ
楽しすぎてはしゃいでいたのかこんな大男がずぶぬれだったのが不気味なのか
だいぶ民衆の好奇の目に晒された
え?皆雨好きじゃねえの?
泥が固有魔法だからか雨は好きだ
いや、雨の日の折檻は外に立たされるだけで済んだからか?
誰も居ない静かな林を見つめながら一人で考え事をする、その時間が楽だった
寒いけれど身体が濡れていく感覚が楽しかった
悩みまで流れていくような気がして雨だけが味方な気がした
月が昇ろうと日が沈もうと価値を追及しなければならない日々だった
朝も夜も関係ない救いなんてない
だからか、雨は好きだった
だって彼は幼い自分の逃げ場だったから
雨の後、地下室に入れられる時間が一番嫌いだった
寒くて、冷たくて、静かで、怖くて、寂しくて
疲れて寝てしまったら火のついた煙草を押し付けられる
血か涙か雨か分からないほどぐちゃぐちゃだった
大好きなあの人は助けにきてくれなかった
家に帰りたくない
大好きなあの人が待っている家に
もううんざりしてるんだ
雨の日の濁った水面のような、愛と欲の滲んだ螺旋の瞳を見るのも
自分に手酷く抱かれ、あとから後悔し、風呂場で泣いている事に気付くのも
睡眠剤で夜と朝の境目をぼかして
自分の悲鳴に耳を塞いで
最愛の人へ加虐欲を向けて
曖昧な幸福が俺を見つめて
あいつの言うことは絶対で
優しくしようとすればするほど
あいつは何かに怯えていて
「………正気か………?」
いつからあいつさえ俺の名前を呼ばなくなった?
呪いか?無価値は見てもらう事すらだめなのか?
「何故濡れているんですか」
「!」
俺の最愛の人
憧れの人
………俺の、兄さん
「………先、風呂入る」
「今日は一緒に外食でも………」
「話しかけんな」
「ぁ」
恋人じゃなくなりたい
兄弟に戻りたい
いや、兄弟だった事など無いが
だから、
「距離を、置きたくて、」
その言葉を聞けてホッとした
それなのに、それなのに何故
「い、良い店を見つけたんです、
お前の好きなフルーツポンチもあって」
「距離置くんじゃなかったのかよ」
「………今日はそういう気分なんです
付き合いなさい」
「………」
兄の言う事は全て従わないと、
でも行きたくない
嫌われたい
捨てて欲しい
それなのに愛している
「一人で行ってくれ」
今は顔も見たくない、声も聞きたくない
「体調でも悪いのですか」
「性欲発散用の実質セフレと飯食って楽しいかよ」
「………は?」
言い放った
それが一番相手を傷付けるとは知らず
「先帰るから、飯いらねえよな?」
「誰が性欲発散用の実質セフレだ?」
「もう酔ってんの?俺だけど」
「ふざけるな、っ私は、」
「家の前でそういうの止してくんない?」
雨の中で揺れる瞳は怒りではなく恐怖に支配されている
そういう風に見えた
初投稿です!下手くそなの許してね………。
コメント
2件
初コメ失礼します(ねすごした様から度々通知が来るもので見に来ちゃいました笑)文才ですね…最高です.ᐟ.ᐟ.ᐟ.ᐟ.ᐟ.ᐟ