「は…?」
同時に元貴の困惑した声が耳に届く。思わぬ言葉に、振り上げていた腕が宙で止まってしまう。
「……娘に、藤澤涼架の心臓を移植した。」
言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を反復した男の声が酷く鮮明に聞こえた。
今目の前にある心臓は俺らが1番愛していた人で、動いている。手に汗をかく感覚が分かる。
「でも、でも…!!涼ちゃんはもう生きてないだろ……!!!!!」
震える手に握られたナイフに力を込め直す。もう無理だ、ここまで来て後戻りなんて出来ない、やるしかない。振り上げていたナイフを勢いよく振り下ろす。娘の心臓にナイフが突き刺さる、はずだった。
「…っ、ぅ…お前は、涼ちゃんを奪ったのに、っ!!あぁぁぁあぁぁ!!!!!!」
地面に突き刺したナイフが軽い音を立てて手から離れていく。例え身体が無くとも、そこに動いてる心臓があるのに刺せるわけがないじゃないか。行き場のない感情が溢れ出して、泣きながら地面に拳をぶつける。強い衝撃で血が溢れ出す手の痛みなんて気にならないくらいだった。
滲む視界の端に落ちていたナイフを誰かが拾う。涙で塗れた顔を上げれば、片手にナイフを握りしめた元貴がいた。
「どっち殺るかなんて、今更だよね。」
薄く微笑んだ元貴の笑顔が酷く不気味だった。ぎゅっ、と強くナイフを握りしめた元貴が男へと近づいて行く。完全に怯えている様子の男は、腰の抜けた身体を必死に動かして後ずさりしている。だが、そんな抵抗も虚しく、元貴が馬乗りになって男の頬をナイフの柄で殴打する。
「代わりにお前の心臓、止めてやるよ。」
そう言い放った元貴がナイフを振り上げる。その瞬間、誰かの足音と共に懐かしい声が響く。
「元貴!!!!」
声の主に振り向けば、肩で荒く呼吸をする涼ちゃんが居た。いまいち状況が掴めないのは元貴も一緒のようで、姿を視界に入れた後、ナイフを振り上げた体勢のまま硬直している。
「………お化け?」
「お化け…?生きてるよ!!」
現実味のない出来事に思わず呟くと、駆け寄ってきた涼ちゃんが、座り込んでいた俺の頬に触れる。確かに温もりのある手のひらにますます意味が分からなくなった。
「まま!!!!」
隣で怯えていた娘が涼ちゃんの元へと駆け寄っていく。
「え、今ままって言った?」
娘が発した馴染みのない単語に、首を傾げる。そんな俺の様子に、涼ちゃんが困ったように眉を下げて呟いた。
「…複雑なんだよね。」
コメント
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え、あ?ええ!?!?!?涼ちゃん生きてた!?!?ひとまず良かった…ってママ!?びっくりすること多すぎてこっちの心臓止まりかけました……。
ななな?! 待ってよ💛ちゃんいきてるよおおお😭😭😭😭 じゃあ💛ちゃんの心臓はいったい誰のなんだろう、、、 展開が予想できなくって今ハラハラしてます、、、
んんっ!?心臓は藤澤さんのもので、本人は生きてる?こういうこっちゃ?まさかの展開すぎるわ。