嗚呼…暇だ…
「ねえポオくん、お菓子の家の推理小説とかない?」
「お菓子の家であるか!面白そうである!乱歩くんならお菓子に惑わされてさぞ解けないである…!」
「え、乱歩さん閉じ込めるの?私も一緒じゃだめ?」
えー、式部羅紫、只今組合の一員、ポオくんのお屋敷にて軟禁されております(?)
「閉じ込める以前に乱歩くんには会わせないのである!羅紫は我輩がもらうのである…♡今外に出さないのはフランシスくんの命令だけでは無いのである。」
ん…?なんで私こんなに嫌われてんの…数日前に行き倒れてた所を救ったのは私だよね…?
組合として日本には来たものの、交通とかが違いすぎて終電を逃して河川敷で泣きそうになっていた所を私が慰めて家の買い方とか電車の乗り方とかを教えたんだけど??恩を仇で返すのか?ん?
「まじかや…ねーえー、閉じ込める割には礼儀がないよ?」
「閉じ込めるのに礼儀がいるのであるか?!」
嘘。
「うん。ほら、閉じ込めるのってする側とされる側が必要じゃん?」
「ふむふむ…」
「だから、お互いがお互いに礼儀を持って接しないと閉じ込めてあげている身としても閉じ込めさせてもらっている身としても良くないじゃん。」
「成程…」
「だから私は逃げずに閉じ込められてるからポオくんもおもてなしをして閉じ込めないといけないんだよ。これは日本の文化なんだけど…ポオくんならできるよね?」
大嘘。
「分かったのである!羅紫をもてなせば良いのであるね!」
「うんそうだよ。」
なんか一周回って申し訳なくなってきたかも知れない。
数日後、おもてなしとして大量のお菓子と書物、そして周りにはぬいぐるみを用意してもらい、出掛けて行ったポオくんを待っていた。
しかし、こっそり持ち込んでいた通信機によれば組合との戦いにマフィアも介入し、状況は余り芳しくない様子。
「……このままじゃダメだなあ……」
私の異能力は平家物語。
弓と矢を異能で顕現させることができ、当たれと命令すれば当たるし、殺せと命令すれば殺す。
命令次第によっては便利な能力だし、大きさも調整できるから人も運べる。治は無理だけど。
例えば、道さえわかれば当たれと矢に命令し、その上に乗って超高速かつ最短距離で目的の場所へ行くこともできる。この能力があったからこそマフィアでも生き残れたし、探偵社に貢献することも出来たのに…
「使えない銃はただの鉄…」
よし、決めた。逃げよう。正直言うとこの生活から脱却するのは非常に心惜しいが仕方がない。私はもう1人でいるのは厭だ。
「羅紫ちゃん大脱走計画…だ!!」
待ってろよ!みんな?
と言うことで脱走する計画を立てようにもポオくんがいつも張り付いているから考える暇がないっ!
「羅紫ー!ご飯、一緒にたべるである!」
「羅紫、我輩このゲェムがしてみたいのである✨」
「羅紫、カールに新しいご飯を買ってきたのである!あげてみないであるか?」
「羅紫、一緒に寝たいのである…!」
四六時中ずーーーーっと一緒にいるもんだから考える暇がトイレとお風呂しかない…
だからこの前長風呂して考えてたら
「のぼせてないであるか!?大丈夫であるか?!」
って入ってきたからね…。濁っている入浴剤に浸かってて良かったよ…いやそもそも入ってくんなって話なんだが。
そう言う訳で計画が固まらなかったんだけど一寸思ったのよ。
推理小説が書きたいって言ったらそっとしててくれるのでは??
思い立ったらすぐ実行!
「ねえ〜ポオくーん。」
「どうしたであるか?」
「私、推理小説を書いてみたぁい。」
「!それは本当であるか?!す、直ぐに書けるよう部屋と紙とペンを用意するである!」
「本当?ありがとう!」
まずは成功。自分1人の空間な上、紙とペンもある。
さて、作戦だが、マフィア時代の作戦コード、『向日葵の咲かない夏』が一番適役かだな。いやでも脱出という点においては『黒薔薇の欺き』の方が良いのか…?
…昔のマフィアで治と中也の三人で任務をしていた頃を思い出し、妙に寂しい気持ちになってしまう。
駄目だ。思い出すとキリがない。そう思い黙々と計画を立てていくことにした。
作戦書をある程度書き、ひと段落ついたところで辺りを見回すと時刻は深夜の2時を指していた。何時もは部屋に1人でも平気なのに急に寂しくなる。
早く寝ないと明日の作戦計画に支障が出ると分かっていても、1人だということを一度意識すると眠れない。
「仕方ない……確かポオくんの部屋は…」
同じ部屋でも私がソファで寝れば問題ないよね?
判断力の鈍った頭でポオくんの部屋のソファで眠りについた。
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