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「……ボビー?」気づくとそこは、ボビーの家の庭ではなくなっていた。
なんだか暗くて…でも明るいような……?不思議な場所だ。
耳を澄ませてみると、ボビーの泣き声が聞こえてくる。
俺の名前を呼んで、泣いている声がする。
「ボビー?ボビー!!」
俺がどれだけ名前を呼んでも、返事は来なかった。
ただボビーは俺の名を呼びながら泣き叫んでいるだけ。
「ボビー!!俺、俺大丈夫だから!!全然なんともねぇし!ほら、こんな元気!!」
ぴょんぴょんと跳ねて見せたり、走り回ってみても、ボビーには当然見えていなくて。
「どうしよ……」
姿が見えない、声も届かない、どこにいるのかも分からない友人を、どう助けてやればいいのか分からなかった。
「ぼびぃ……………」
終いにはボビーの泣き叫ぶ声と、何も出来ない無力感で自分まで涙を零してしまった。
「だれか…ボビーんとこ、行ったげて……だれでもいいから……」
弱音を吐いて、目を泣き腫らして。
普段なら絶対に言わないことを、沢山口走った。
「俺、なんもやってやれなかったぁ……大丈夫って言いながら、結局ダメだったし…」
「ボビーに、嘘ついちゃったぁ…………」
しばらく泣いたあと、体操座りで蹲る。
今だボビーのすすり泣く声は続いている。
頭に軽い衝撃が走る。
誰かの手で叩かれたみたいな、そんな感覚。
「っ誰……………」
真っ赤な目と鼻から色々垂れ流しているという、酷い顔を上げた。
「”誰か”じゃない、お前が行くんだ。」
「お前が”ボビー”を助けるんだ。」
そこに居たのは、俺に説教を垂れていたのは、俺と同い年くらいの青年だった。
白髪で、頭に輪っかがついてて、背中には白い羽根が生えていた。
顔は、俺の顔を鏡写しにしたみたいだった。
「………かみさま?」
頭の中で自然とそう結論着いた。
「かみさま…神…いいねそれ、そう、僕は神様。」
「お前の中に存在してる、神様だよ。」
ニヤリと笑うと、俺のおでこにデコピンをしてきた。
「…あのさ、神様は俺がボビーのとこに行く方法、知ってんの?」
「あぁ。」
半信半疑で尋ねると、存外軽く返事をした。
「じゃあ…!」
「…1つ、条件がある。」
「何?」
「たまに、人間のものを、ここに持ってきて欲しい……」
照れくさそうに、目を逸らしてそう言うものだから、拍子抜けした。
神様だから、もっと臓物とか生贄とか言ってくるかと思ったのに。
「なんだよそんなことか!もちろん!」
「…!じゃあ、手を出せ。」
「ん!」
手を差し伸べると、神様が嬉しそうにそっと手に触れたあと、当たりが煌めき出した。
…光に包まれて少し目を瞑っていただけなのに、何となく寝ぼけているような感覚だ。
周りを見渡すと、隣でボビーが眠っていた。
俺と同じく、目を真っ赤に腫らして。
かなり時間が経ったようで、空は夕焼けに染まっていた。
「…ボビー?起きて、」
軽く肩を揺さぶってやると、ボビーはゆっくりと目を開けた。
「…にき?」
「うん、おはよ、ボビー。」
ボビーはめをまんまるにして俺の顔を見つめた。
「なんで、おま、死んで…」
ふるふると震える人差し指を、俺に向ける。
「死なないって言ったじゃん。」
笑ってそう言ってやった。
なのに…
「夢?ゆめか、こんな都合いい話あるわけ――」
こいつはまだ寝ぼけているようだ。
「ボビー!!」
俺は思いっきり、やっと触れられるようになったボビーの頬を両手で叩いた。
「まだ寝ぼけてんの!?生きてる!俺!!ニキ!!!!」
「ぁえ、ほんま、ほんまに?」
ボビーのもう既に酷く腫れている目から、じわじわと涙が溢れてくる。
「にき、ニキ、にき…ニキ………」
何度も、確かめるように俺の名を呼ぶボビーが、狂おしいほど愛おしくて
「ボビー、ぼびー…」
俺もボビーの存在を確かめるように、名前を呼び返した。
お互いの手を、お互いの頬に添えて。
おでこも、身体も全部くっつけて。
お互いがここに存在していると、生きていると確かめるように、ずっとずっと名前を呼びあった。