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動力炉 畠山 里香
時折、ここのガラス製のドアに警戒の目を向け。資料室のディスプレイを観ていた。
「あ、そうだったの!」
様々なディスプレイからの映像を観てわかってきた。ここlevel 4は、戦時中に日本軍が身を潜め。それから、この町の一部の人間たちが人が住める核シェルターのようにした。その後、中途で終わったが、アミューズメント施設になって、そして……。そう、西村 研次郎が改悪したのだ。
今の殺人兵器や殺人機械は、全て昔の名残りから西村 研次郎の意志で変わったようなものだった。だからか、西村 研次郎の日記のような映像も写っていた。
「岩見さん……」
あのゴミ屋敷に引っ越してきた岩見さんは、西村 研次郎と同じ事故が起きた市営住宅に移り住もうとしていたのだ。
「ひょっとして……。うーんと……あ、それだ!」
岩見さんは何らかの事情で、市営住宅に移り住んだけれど被害を受けなかったんだ。それが西村 研次郎の岩見さんに対する殺意の原因。恐らく、岩見さんと西村親子だけが市営住宅で犠牲になる運命だった。けれど、岩見さんだけが助かったのだ。
私はそう考えた。
岩見さんは、何をした?
あるいは、どうした?
西村親子と何があった?
単に西村親子からの八つ当たりなのだろうか?
次の白黒テレビの映像で、答えがあっけなくわかる感が告げた。
白黒の映像の中の引きつった顔をした岩見さんの前にいるのは……。
「やっぱり……でも、これって、男の人よね……? あれ? あ、やっぱり……」
映像の中で、その人物。
このlevel 4には西村 研次郎の意志を継ぐものが今もいるんだわ。
そうだ。
画面の岩見さんの前には恐らく……冴子がいるんだわ……。
岩見さんと冴子は知り合いだった。
それも、よく知った仲だ。
ここで、想像力を膨らませてみると、岩見さんが西村親子を市営住宅に紹介したか、一緒に住もうとでもしたのだろう。
恋仲だったのか婚約者なのだろうか?
ううん……。
違う!
話が強引過ぎるわ!
カフェテリアで話をした西村 研次郎の仕事仲間も冴子に好意を持っていたんだし……。
恐らく……岩見さんと冴子。いや、西村親子は……う、私の中で、記憶が蘇ってきた。
岩見さんは、岩見さんの職業は……。確か……。なんだったかしら?いえ、違うわ。職業じゃない。
そうだわ!
きっと、あらかじめ事故が起きることを岩見さんは知っていたんだ!
「お、お姉さん! あれ! あれ! 戦車に乗った人がドアを開けようとしてる!」
「え!!」
子供の声に、私は驚いてドアの方へ振り向いた。ドッーンっと、ドアが派手に壊れる音がした。
「わ!!」
私は驚いて、子供の手を引くと、ここ資料室から一目散に逃げだした。どうして?! あの、カフェテリアで出会った男の人だ!
何故?!
そうか!
わかったわ!
三角関係だ!
「ぼく! あそこのエレベーターへ行くわ! もう、あの機械を止められない! 急いで地上へ逃げましょう!」
「ぼくの名前は徹!」
「あ、徹くん! 私は里香よ! できるだけ急いで!」
「あああああ! 里香お姉さん! おじさんはーーー!」
ドガシャン。
と、資料室全体が車輪だけの戦車によって破壊される。
壁や天井から砂ぼこりが大量に宙に舞った。
「思い直してーーーー!! こんなことをしても冴子さんと冴子さんの父親は悲しむだけなのよーーー!!」
私は病室で息を絞って、冴子を助けてくれと最後に懇願した西村 研次郎の言葉を聞いている。
それは紛れもない親の愛だった。
「あなたを冴子さんは……!」
車輪だけの戦車が私たちを追い。
エレベーター前の行き止まりへと迫る。
扉は……開いている!
「さあ、早く! 中に入ってくれ!」
エレベーターの中から、男の声が聞こえた。
「近道おじさーーん!」
徹くんは泣いて、全速力で走った。私も急いで、走る。
「上に行くボタンを押してくれ! 俺はもう動けない!」
「わかったわ!」
「近道おじさん! 良かったーーー!!」
私はエレベーターの二階のボタンを押した。
エレベーターの扉が閉まる寸前。男の乗った車輪だけの戦車の脇にいつの間にか冴子がいた。ニコリと笑った顔がこちらから見えた気がした。
もしかしたら……ねえ?
冴子は思い直したのかも知れない。
男の乗った車輪だけの戦車は、その巨体の重さに耐えきれなくなった床から下へと落下していく。急に大口を開けた床の下には……この世のものとは思えない設備が見える。
断末魔と共に男は設備のある空間へと落ちていった。
さあ、地上へ戻ろう。
この町から私たちの家へ帰ろう。