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とある街の中華屋さん

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とある街の中華屋さん

14 - 第14話・一般市民なんですけど?

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2024年08月28日

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前日の不安になるような夜とは異なり、今日は朝から快晴で、何事もなく日常が始まった。

───かのように思えた。やはりこの街は何かと騒がしいらしい。


ミンドリーが日課のリサセンに出かけ、ぺいんは「今日こそは連れて行って」とせがむさぶ郎を連れ、自動販売機の商品補充に出かけた。

そこまではいつも通りだった。


市街地の自動販売機の商品補充が終わり、東高速から砂漠の街に入ると、ぺいんは違和感を感じた。

その後は制限速度を守って道を走りながらもスピードを落としたり、左右に曲がることを繰り返し始めた。一見すると道に迷っているようだが、ナビゲーションを使っているので、そこまで間違えるはずもない。

少し不安になったさぶ郎がぺいんに声をかけた。


「もしかして、道迷ってます?」

「いや、そうじゃないんだけど。さぶ郎は聞こえない?」

「何がですか?」

「ヘリの音」


ヘリ?そう疑問に思い耳を澄ませば、かすかにヘリの音がする。


「つけられてる?」

「まだその可能性ね。速度守ってヘリ撒くのは無理だし、撒いたところで変な疑いかけられるのも嫌だから、ここからは予定通りにする」

「あーい」

「さっきまでと同じで良いよ。さぶ郎が商品補充して?僕、お金の回収するから」


そのまま広い砂漠の街を巡った後、再び東高速から北の街を目指した。

山間を抜け北の街に着いてもヘリはずっとついて来たようだ。 北の街も過ぎ、西高速を進んでもそれは変わらなかった。

西高速沿いの店舗では、かなり高度を下げてきたので、ヘリに気づいたさぶ郎が手を振ってみた。応えはなく、逆にヘリは高度をあげてしまった。


(なるほどね)

ヘリの種類や装飾を確認したぺいんは、思ったことを口に出すでもなく、さぶ郎とそのまま速度を守って市街地に戻った。

ヘリはそのまま店に戻るまで付いてきたらしい。店裏のガレージから見上げると上空にヘリがいた。

いつもと同じように店に入るとようやくヘリが飛び去る音がした。




ぺいんとさぶ郎は開店準備をしながら先ほどのことを話していた。


「さぶ郎、気づいた?」

「警察ヘリだったね。さぶ郎たち、何もしてないのにね」

「まぁ、手を振ったのにはびっくりしたけど」

「お話ししようと思ったのよ」

「度胸あるなぁ」


そんな話をしていると、ちょうどミンドリーが帰宅した。


「ただいまぁ。なんかあった?」

「お帰り。まぁ、問題にはなってないけども」

「さぶ郎たち、警察ヘリにつけられた」

「つけられた?」

訝しむミンドリーにぺいんとさぶ郎が説明をした。

「マーベリックだった。LSPD(ロスサントス市警)のロゴも僕が目視した」

「警察がヘリで上空から監視?白市民を?」

「さぶ郎、手を振って挨拶したけど、返事はなかったよ」

「ヘリに気付いたのは砂漠でだけど、店に戻るまでいたなぁ」

「自販機をまわっていただけで?」

「そう。スピード違反もしていないよ」


3人で話してみるが、こちらは違法な事を含め思い当たる節もなく、かと言って相手からの接触もないのでその目的が分からない。


「まぁ。向こうから接触してこない以上、意図も分からないから、いつも通りにしていれば良いよ。別にやましい事しているわけじゃないから」

そうミンドリーは二人に伝え、ぺいんもさぶ郎も了承した。




午後になり、3人はビーチにやってきた。カフェで教えてもらった海のアクティビティを楽しむためだ。いつもの中華服やカンフー着ではなく、ミンドリーとぺいんはタンクトップやアロハシャツにハーフパンツ、さぶ郎はチューブトップにショートジーンズの格好だ。

客船が停まっているビーチの方はパトカーのサイレンが聞こえたので、そこから遊園地を挟んだ南東側に陣取った。

ボートにミンドリーとぺいんが乗り、さぶ郎がパラセーリングを始めようと沖側に向かった時だった。

銃声が聞こえ、直後、ミンドリーたちのボートが撃たれた。幸い大きな怪我はなかったが、銃声の聞こえた方を見ると警察のボートと思しき船影があり、そのボートはそのまま遊園地の先にある客船に向かってしまった。


「え、え、え、え。撃たれた、マ!?」

「お母さんたち大丈夫〜?」

「かすり傷だけど、一旦浜に戻ろう」


浜に戻る途中。会場レストランの奥、おそらく客船が停泊している辺りから銃声やガシャンというヘリ同士がぶつかり合う音がした。どうやらあちら側の浜で大規模な犯罪が行われているらしい。

3人は浜に付き、ミンドリーはボートの損傷を調べ、さぶ郎はぺいんたちの怪我に包帯を巻き、他に怪我が無いかを確認していた。

その時、上空のヘリから声がけがあった。


「もしかしてミンミンボウの方ですか?」

声をかけてきたのはここ数日で縁がある警官、小柳であった。

「そうですが、何かありました?」

「この先で事件が起きているので、この場から離れてください」

「それは分かりました。もしかしてさっき私たちが撃たれたのと関係ありますか?」

「撃たれたんですか?ギャングに?とにかく犯罪現場に近いので離れてください」


それだけ言うと、小柳はヘリで客船がある方に飛び去っていった。


それを見て、ミンドリーがため息と共に呟く。

「………俺たち、どう見ても警察でも犯罪してますって格好でもないんだけどね」

「ミンドリー?大丈夫?いろいろ漏れちゃってるよ?」

「そう? まぁ、警察署に用事もあるし、そのついでに一言言ってもいいか」


(こぉれ、お父さん怒ってます)

(圧、感じます)


さぶ郎とぺいんは「普段は優しいが怒らせると怖い」と思っているミンドリーの様子を見て、ほんの少しだけ警察官を気の毒に思った。初日からの事もあるので、同情はしないけれど。




遠くではまだヘリとサイレンの音や銃声がしている。

出鼻をくじかれた3人は、今日はもう引き上げようと、後片付けをして店に帰った。

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