テラーノベル
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パソコンの画面に向かう山本のこめかみが、ずきずきと内側から肉厚な金槌で容赦なく叩かれているかのように、激しく脈打っていた
机の上の資料を見つめようとしても、文字の輪郭がひどく滲んで、まるで水の中に沈んでいるかのようにぐにゃぐにゃと揺れて見える
視線を動かすだけで、脳を直接かき回されるような鋭い痛みが走り、山本は小さく呻き声を漏らして瞼を閉じた
さらに最悪なのは、喉の奥から胸元にかけて、ねっとりと張り付いて離れない異様な圧迫感だった
生温かく不快な吐き気が波のように何度も、それも徐々に大きな塊となって押し寄せては、山本の理性をじわじわと削ぎ落としていった
山本「……ッ、げほッ……う゛、ぁ……ゃばい、な……」
かすれた声をこぼして、山本はたまらずデスクに両肘をつき、頭を抱え込むようにして突っ伏した
朝から感じていたゾクゾクとする悪寒は、昼過ぎになっていよいよ凶悪な熱を帯び、今や頭が真っ二つに割れるような激痛に変わっていた
風邪だ、と頭の片隅で理解してはいても、高熱のせいで脳に靄がかかったようになり、思考をまともにまとめる余裕すら残されていない
胃のあたりが雑巾のようにぐにゃりとねじれるような感覚が強まるたびに、冷や汗がだらだらと項から背中を伝い、全身の毛穴がひっくり返るような嫌な汗が吹き出す
呼吸をするだけでも、浅い呼吸に合わせて胃の内容物がせり上がってくる感覚に襲われ、山本は強く目を閉じ、奥歯をガチガチと鳴らしながら耐えるしかなかった
しかし、人間の肉体の限界はすぐに訪れた
これ以上ここに座っているのは不可能だ、万が一にもここでぶちまけるわけにはいかない
そう判断し、山本はデスクの端を掴んでフラフラする足取りで立ち上がった
その瞬間、視界が急激に暗転し、周囲の景色が遊園地のアトラクションのようにぐにゃりと歪む
激しい立ちくらみに襲われ、壁に何度も肩をぶつけ、手すりや棚にすがりつきながら、呼吸を荒げて何とかオフィスの奥にあるトイレへと向かった
個室のドアに滑り込み、鍵をかける余裕もなく便器の前に膝をついた瞬間、堰を切ったようにこみ上げてくる衝動を抑えきれなくなる
山本「……はッ、ぁ、げほッ……! ゲホッ、う゛……ッ、ゴホッ……!」
激しい胃の痙攣とともに、酸っぱい胃液と混ざり合ったものが容赦なく喉元を駆け上がり、喉の粘膜を灼きながら吐き出された
すえた匂いが狭い個室の空間に一気に充満する
鼻の奥がツンと痛み、涙とよだれがボロボロと溢れて、山本の視界は完全に涙で塞がれた
一度始まってしまった肉体の拒絶反応は簡単には止まってくれない
胃の中にあるものをすべて出し尽くし、もう胃液しか出ない状態になってもなお、内臓を素手で雑に絞られるような激しいえづきが山本を襲い続ける
山本「……ひゅッ、うッ、ぅあ゛、げほッ……ごほッ……! はぁ、はぁ゛ッ……」
呼吸のタイミングが完全に狂い、酸素を求めてヒリヒリする喉で無理やり空気を吸い込むが、その刺激がまた新たな吐き気を誘発するという、地獄のような悪循環だった
指先は痙攣するように震え、便器の縁を掴む爪が白く染まっている
ようやく一連の嵐が収まったときには、山本の体力は文字通り完全に底をついていた
便器にしがみついていた腕からすっかり力が抜け、冷たいタイルの床の上に、生きる力を失った人形のように横倒しに崩れ落ちる
荒い息をハァハァ、ハァハァと繰り返しながら、熱を持った額をかろうじて冷たい床のタイルに押し当てた
そうでもしていないと、頭の中の灼熱で狂ってしまいそうだった
指先ひとつ動かすことすらできず、ただ全身を襲う強烈な悪寒と、天井が高速で回り続けるような酷いめまいに、成す術もなくガタガタと震えていた
どのくらいそうして痛みに耐え、床の冷たさにすがっていただろうか
遠くの廊下から、静まり返ったオフィスに焦ったような激しい足音が響き、やがてトイレの扉を激しく叩いた
伊沢「おい、山本!? 山本、いるのか!?」
伊沢の声だった
いつも動画で見せる快活なトーンではなく、明らかに動揺し、切羽詰まった声
返事をしようと口を開いたが、喉からはヒューヒューと枯れた呼気が漏れるだけで、まともな言葉になってくれない
山本「ぃ、ざ…さ…ッ」
ガチャリ、と勢いよくドアが開き、伊沢拓司の姿が狭い個室の空間に飛び込んできた
青白い顔で床にうずくまり、冷や汗と涙、よだれで顔をめちゃくちゃに濡らしている山本を見つけた伊沢の表情から、一瞬で血の気が引くのが分かった
山本「山本……っ! おい、しっかりしろ、俺が分かるか!?」
伊沢はためらうことなく、自身のジャケットを床に脱ぎ捨てるようにして、その場に膝をついた
汚れた床など気にする様子すらなく、小刻みに震える山本の体を、折れてしまいそうなほど優しく、しかし確実に自分の胸元へと抱き起こす
伊沢の大きな手が山本の汗ばんだ背中に添えられ、ゆっくりと、一定のテンポで上下にさすり始めた
氷のように冷え切ってしまった山本の右手に、伊沢の温かい手がしっかりと重ねられる
その体温が、今の山本には救いだった
山本「す、ぃませッ……いざゎ、さ……ッ、戻、し、ちゃッ……」
伊沢「喋るな、もう何も言わなくていい。苦しかったな、よく耐えた。偉いよ」
伊沢の低く落ち着いた声が、山本の朦朧とした意識に優しく染み込んでいく
伊沢は山本のぐったりとした体を自分の肩にしっかりと預けさせ、片腕を腰に回して、ゆっくりと慎重に立ち上がらせた
自分の足ではまともに体重を支えられず、膝がカクカクと折れそうになる山本を、伊沢は自分の体に完全に密着させるようにして支え、オフィスの一角にある仮眠用のソファーへと運んでいく
ソファにそっと横たわらせた後、伊沢はすぐに執務室へ走り、冷えたペットボトルのスポーツドリンクと、水で固く絞った清潔なタオル、そしてゴミ箱にビニール袋をセットしたものを手早く持って戻ってきた
伊沢「ちょっと冷たいぞ、我慢しろよ」
伊沢が山本の額にそっとタオルを乗せると、じりじりと焼けるようだった頭の熱が、じわっと引いていくような感覚がした
伊沢「熱、かなり上がってそうだな……。顔真っ赤だ。もっと早く気づけなくてごめんな」
伊沢はサイドテーブルに飲み物を置き、心配そうに山本の顔を覗き込んだ
その真っ直ぐで誠実な瞳と、額のタオルを丁寧に整えてくれる手の温もりに、山本がこれまで張り詰めていた緊張の糸が、ぷつりと切れた
山本「……ありがと、ございます……」
安堵からか、山本の目尻から再び一筋の涙がこぼれ落ちる
伊沢はそれを親指の腹で優しく拭うと、山本が深い眠りに落ちていくまで、その背中をずっと優しくさすり、傍らを離れずに見守り続けた
コメント
9件
あぁ、もう全然大好きです安心してください、大好きです、マジで あのね、綺麗に語彙力消失したよね、まじで 最高、大好き、ありがとうしか言えないやばい、ありがとう好きだ 私ちょっと前に風邪引いて吐きそうだったのに吐けなかった羨ましいと少し思ってしまった 気持ち悪い感覚はもう覚えてないっ😆 マジで最高、ありがとう、本当に大好き

リクエストありがとうございます!!! ほんと、あの、リクエストが神すぎる...なにこれ尊い... 山本サマの体調不良の描写、自分で書いてて気持ち悪くなってますw それくらいリアルに書けたんじゃないかな...? というか書けててくれ...? てかほんと師弟コンビって最高だと思うんですよね仲間ください() あの関係性...尊い...泣 めっちゃ書くの楽しかったですありがとうございます! 私の癖を詰め込みすぎて、ご希望に添えたかどうか不安ですが、 まぁ添えてなかったら書き直すんで...タブン(((殴 ちなみに山本サマが寝た後、その頭を撫でながら「...無理しすぎだろ、もっと頼れよ」って言ってる伊沢サマの姿があったとかなかったとか
山本さんの体調不良の描写が本当にリアルで、読んでいるだけで息苦しくなるほどでした。特にトイレで倒れてからの伊沢さんの登場、背中をさすりながら「苦しかったな、よく耐えた」と言う優しさに胸が熱くなりました。あの一言が山本さんにとってどれだけ救いだったか…最後の涙にもらい泣きしそうです。お二人の関係性が一層深まった大切な回でした。
暇人
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けい
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