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なんだか変な夢を見た。海が見える教室で、だいちゃんと一緒に話す夢。海の青さが彼と恐ろしい程に合っていて、このまま彼が消えてしまわないか心配になる。まあその儚さは、彼の話し方により消えてしまうのだが。「柔太朗〜、なぁにぼーっとしとるん? もうちょいで授業始まるで」
そう言って彼は、俺の頬を指でつつく。
「うわ、まじ? 教えてくれてありがとう。……だいちゃんのこと考えるのに夢中で全然気づかなかった」
どんなことを言ったって、所詮は夢の中だ。だからこそ、現実では言えないようなことを言ってみた。そうしたら、彼は驚いたような顔をして、珍しくクスッと、まるで愛しいものを見るような、そんな目でこちらを見てくる。
「ふふっ、そんな返ししてくると思っとらんかったわ。大人になったなぁ、柔太朗」
現実の彼だったら言わないであろう台詞。だが、俺が望んでいる訳でもないセリフ。夢ならばせめて思いどおりになってくれ、そう文句を言ってやろうと思ったが、夢へのクレームは何処に電話したらいいのか分からないからやめた。そもそも、そんなことしても何も意味がない。誰かを責めるのも、好きではないし。
「もう、だいちゃんが知らないうちに大きくなったんだよ。だいちゃんのこと、食べられそうなくらい」
だいちゃんの顎をクイッとあげる。そうすると、彼はどうしたらいいか分からない、とでもいいたげな顔をした。そうだよな、だいちゃんは優しい。だから俺を責めたりはしないだろう。かと言って、笑ったりして誤魔化すのも躊躇するだろう。
「……そうかぁ。もうそんなに大きくなったんか」
夢の中の彼が選んだのは、感動したような顔を見せることだった。彼は、そんなことを言われたら勘違いしてしまうことには気づかなかったようだ。
「そうだよ、だから……振り向いてよ」
俺はいつの間にか泣いていて、だいちゃんは
「まだ子供やなぁ、柔太朗は」
そう言って額に優しくキスをした後、背中を摩ってくれた。流石妹を溺愛しているだけあり、背中を摩る手にはとてつもない安心感があった。俺はそのまま、泣き止むまでずっとだいちゃんに背中を摩ってもらった。
「……俺の気持ちにも気付けんしなぁ、柔太朗は」
泣き止んだあと、唐突にだいちゃんがそんなことを言った。
「……え?」
それは一体どういう意味だ? 必死に頭を回そうとするも、出てこない。
「……ぁー、もう。俺も柔太朗のこと好きなんやって! 言わせんといて!」
小鳥の声が聞こえてくる。仄暗い教室とは違い、眩しい寝室が俺を現実にもどした。随分と都合のいいシーンで目が覚めたな、なんて自己嫌悪に近い感情を抱きながら、服に着替えようとした。
「……柔?」
唐突に聞こえてきたその声の持ち主は、何故か俺のベッドの上にいて、俺に優しく微笑みかけていた。そのせいで夢と現実の境目を曖昧にさせた。そんな奇妙な朝の出来事だった。
コメント
4件
あぁぁやぁばい好きすぎる、🫶🫶🫶🫶 最高ぅですぅ…😇😇
👍