歌みたにテンションが上がって勢いのまま書いた結果、よく分からない感じになってしまいました。あまり深く考えずに読んでください。
途中まで台詞だけで進行するので文章としてはものすごく読みづらいと思います。すみません。
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「さぁてサイキロイドくん! 今日も今日とて愛だの恋だのとかいう不可思議な概念について解き明かそう。そして今日こそ証明しようじゃないか!」
《はイ。佐伯》
「せめて敬称を付けろよデコ助野郎。というか俺のことは博士と呼びたまえ」
《はイ。博士》
「さぁ……この議題も早、第7180回目なわけだけど、嘆かわしいことに進展は未だ見られないな。いい加減仮説くらいは立てられても良さそうなものじゃないか?」
《シかし博士、そもそも愛や恋についテ知ることが、どうしテ必要なんでしょう?》
「良い質問だサイキロイドくん。挙手の角度も冴え渡ってるね。……こほん。ええとつまり、愛や恋についての見識を深めればだね──僕のこの感情の正体が掴めそうな、そんな気がするんだよ」
《博士の?》
「ああそうだとも。何せ僕はかれこれ数年ほど前から、とある人物への感情を何と定義するべきか決めあぐねていてね。愛や恋の存在を証明することができれば、即ちその感情への理解に繋がると思わないかい?」
《さすが博士。頭良イ》
「なんだかいやに棒読みだな……まぁいいや、では今日はその相手への感情についての話からしようか」
「その、向ける感情が曖昧な……いや違うな、彼に対しての感情が──謂わば好意的なものであることは明確なんだ。しかしそれが友愛なのか、それとも恋愛なのかが僕には判断がつかないんだよ」
《彼といウことは、その相手は男性なのですか?》
「おっと口を滑らせたかな。まぁ今更隠すことでもないしね、はっきり実名を出してしまうと……その、…………リトくん、なんだけど」
《博士の同僚ですね。そして、友人》
「……うん。そうだね。彼は僕のとても良き理解者であり、頼れる同僚であり、尊敬に値する友人だ。……だからこそ、こんなふわふわしたままでいたくないんだ」
《関係を変エたい?》
「まさか! むしろ逆だ。今が心地よすぎるんだよ。僕はね、彼とはずっとこんなふうに──馬鹿やったり小突き合ったりくだらないことで笑ったり、気兼ねなくもリスペクトを忘れない、そんな関係でありたいんだ」
《では、もしそれが恋愛感情だったラどうするつもりなんでスか?》
「それは…………あぁいや、考えたことがなかったな。それは。けれど関係は変えたくない以上、特にどうするということもないんじゃないか?」
《恋をすルと人は、相手と恋人同士にナりたくなるものではないノですか?》
「いいや、よく聞いてくれたね。そこがひとつめのポイントなんだよ。僕は別に彼と両想いになりたいとかそういうことは考えていないんだ。もし仮にリトくんに恋人ができたとして、僕はそれを真っ直ぐ祝福できると思う」
《なるほド。では彼が別のヒトと幸せになったとしテ、博士もまた別の相手を選ぶことができルと》
「……うーん、それはまた別の話だな。彼は彼の幸せを掴んで欲しいけれど、かと言ってこの想いをそこで終わらせることができるかと言われると微妙だ。それに僕は元々恋愛に生きるタイプじゃないし、別に彼と一緒になれないからといってすぐに他の人を好きになれはしないと思うんだよ」
《重くナい?》
「…………これが恋だとしたらの話だろう」
「バウムクーヘンエンド、というのがあるだろう。類似品としてBSS ──僕の方が先に好きだったのに、というやつだ。今のところだが、あれは僕には当てはまらないと考えている。何故なら僕は最初から、彼とどうこうなりたいとは思っていないからだ。失う恋がなければ失恋とは呼ばないだろう?」
《そういウことにして、失恋すル痛みから逃げているという可能性はありまセン?》
「随分痛いところを突いて来るじゃないか……鶏が先か卵が先か、という話にはなってしまうが、事実として僕は恋をしている自分を客観的に見ることができないでいる。だからこそこれが真に恋であるのかどうかが疑わしいんだ」
《もう大分、恋といウことが前提になっテ来ている気が》
「ええいうるさいな、仮定だ仮定。仮にそうだとして、と議論の進行をスムーズにしてやってるんじゃないか」
《でハ博士、博士の気持ちが結ばれなかったとしテ、自分は一生独り身のまま生きることになってもいいんでスか?》
「もちろんだとも。……ああでも、もしリトくんが誰かと結婚式を挙げることになったとして、友人代表のスピーチが僕じゃなかったら……それはちょっと嫌かもしれない」
《花嫁の座は譲るノに?》
「そこはほら、彼の恋の相手が僕じゃなかったってだけだから。けど、友情は別だ。今までずっと僕が一番の友人だと思ってたのに、そこで別の人を選ばれたら……それは、積み上げてきたものが僕の独りよがりだったってことになる。そうなったらさすがに、多少は落ち込むだろうね」
《嫉妬ですか?》
「嫉妬……うん、そうかもしれない。彼の新たな人生の始まりを祝福するのは僕でありたい。だって、彼の幸福を世界で一番願っているのは僕のはずだ」
《やっぱリ重くナい?》
「……僕も段々そんな気がしてきた。正体が友情であれ恋であれ、これはちょっと、重いかもしれない」
《好きか嫌いかで言うト?》
「そりゃ好きだよ。冒頭にも言った通り、この感情が好意的なものであることに間違いはないんだ。そもそも彼を嫌いになる要素がないだろ」
《好きか普通かで言うト?》
「それは……まぁ、好きに傾くんじゃないか?普通ってことはつまり、何とも思ってないってことだろう? 彼のことは人として……そう、人として好きの部類に入るね」
《好きか、超好きで言うト?》
「……いや待て、これは二元論に逃げすぎだ。というかわざと誘導してないか? そんなふうに追い詰められて出た結果は真の答えとは言えないだろ!」
《だっテ、博士がそう聞いて欲しそウな顔してたから》
「ぐぬ……絶妙に口が上手いな、サイキロイドくん……」
「…………友情を壊したくないのは本心だ。もし僕が余計なことを言ってしまって、そのせいで彼との関係がぎくしゃくしてしまうとしたら……それこそ耐えられない。彼とは友達でいたいんだよ、できるだけ長く……」
《友人であることをやめたくなイから、恋を認めたくないだけじゃナい?》
「……どうだろう。でも、この感情を言い訳にはしたくないんだ。それくらいリトくんとの思い出は僕にとって特別で、大切で、楽しくて……」
《…………》
「──あぁ、認めるよ。彼を見てるとドキドキするんだ。ヒーローとして、王子様みたいに輝く彼を見るたびあの笑顔の先が僕であったら、なんて考えちゃうし、そうでないことにいちいちがっかりしてる。
でも、一緒にいると誰より落ち着くのもリトくんなんだ。彼の側が一番自然でいられるし、ふざけて揶揄われたりするのだって本当は嫌いじゃない。彼と友達でいられるだけで毎日が楽しくてしょうがないんだ。
リトくんのかっこいいところを一番知っているのは僕でありたいし、リトくんの弱さを一番知っているのも僕であって欲しい。いつまでも彼の良き友人でありたいけど、いつかそれじゃ満足できなくなるんじゃないかって……それが怖くてたまらないんだよ。
……全部、全部本心だ。これが恋か友情かなんて、本当はどうでもいい。
僕は、リトくんが好きだ」
《……》
「…………」
《では博士は、もし両想いになれたらどうすルんです?》
「両想い? ……僕と、リトくんが?」
《ええ》
「……考えたことがなかったな、それは…………分からない。現に僕だってこの感情の正体を知れていないんだから、同じ気持ちだって言われても……それが本当に僕と同じものなのか、判断がつかないじゃないか」
「……でも……」
《でも?》
「……嬉しい、んじゃないかな。多分。だって、嫌われるより好かれる方がいいに決まってる」
《面と向かっテ、好きだと言われたら?》
「はは……そんなことになったら僕、爆発しちゃうよ」
《博士は結局、何を証明したイんです?》
「うーん……何なんだろうね。自分でも分からなくなってきた。……ちょっとだけ思ってるのは、自分の中でこの想いを証明することができたら、彼に伝えなくてもいいってことになるんじゃないかってことだ」
《伝えル気は無かったノでは?》
「ああ、関係を変えたくないとは言ったけど、ほら……下心隠し持ったままずっと近くにいるってのも、彼に失礼だろ? でもその下心を自分の中でどうにか証明して、全く別の形で昇華できたら──きっと、この迷いごと打ち消すことができるんじゃないかって。
……そうしたらまた、ただの友人として彼の隣に立てるんじゃないかって、思うんだよ」
《重いですね》
「うん。僕もそう思う」
《じゃあ、愛と恋の違いとは何なんでしょウ?》
「次の議題に入るの早くない? まぁいいけど……愛と恋の違い、それはまさしく今言った下心というやつが肝でね──……」
§ § §
「…………何してんのリト」
「ちょ、静かにして。今テツが……通話してんのかな? なんだけど、なんかテツの声が2人分聞こえて……」
「あ〜……あれね。サイキロイドくんね」
「サイ……何……?」
「えっマナから聞いてないの? 昨日本部から届いた対KOZAKA-C用誘導音声なんちゃらかんぬん〜っていう、テツの声をサンプリングした合成音声ロボみてぇなやつ」
「俺初耳なんだけど……なんでテツの声なの?」
「さぁ? 声デカいからじゃない?」
「……なんか、テツが囮にされてるみたいで嫌なんだけど」
「でも実際狙われやすいのもテツだしさぁ、リトだったら強すぎて囮になんなくない?」
「……でも、」
「あー、合成音声だとしても触らせたくね〜、守ってやりて〜って感じ? はは、本人に言えよ」
「うぐ……無理だからこうなってるんだっつの。……てか、なんか話の流れが……」
「ん〜? なんか喋ってんだっけ? なになに……」
「……」
「…………」
「………………」
「は? 犬も食わねえんだけど」
「……まじで……?」
「おい早く行ってこいってぇ! 何突っ立ってんの? チャンスだろ今どう考えても!」
「いやいやいや、無理だろ! 無理だって!」
「え〜〜……テツ、すげ〜リトのこと好きじゃん。何? 全然知らなかったんだけど」
「お、俺ウェンにもマナにもバレてんのに……?」
「テツってこういうの分かりやすいようで分かりにくいんだよなぁ。微妙に何考えてるか分かんないし……マジで早く言った方がいいんじゃないの? めちゃくちゃ両想いですけど。めちゃくちゃアイラブユーなんですけどって」
「いや、いきなりそんな……だってあんなの、AIに誘導されたようもんじゃ、」
「あれAI搭載されてないよ」
「……は?」
「たかが囮用の音声ロボにAIなんか付けてられるわけないでしょ。あれは打ち込んだ言葉しか喋んないよ」
「……じゃああれ全部、テツがひとりでやってんの?」
「そう」
「……」
「…………」
「………………」
「〜〜〜〜っあ゛ーもう、ウジウジしてんなって!!」
「ちょっ、ウェン! 待っ──、」
§ § §
──けたたましい騒音とともに機材室のドアが蹴り飛ばされ、イッテツはその場で飛び上がる。
新しくもらったおもちゃで遊んでいただけなのに、何か怒られるようなことでもしてしまったのだろうか。イッテツが跳ねる心臓を抑えながらドアの方を向くと、そこではリトが前衛的なポーズで段ボール箱に突き刺さっていた。
その姿を捉えた瞬間、さっきまでともまた違う意味で心臓が高鳴り出す。
「り、リトくん? ……随分芸術的な格好になってるけど、大丈夫?」
「……あー、うん。修理は俺やっとくから」
「いやそれは……ありがとう? ……それで……今の、聞こえてないよね……?」
「…………」
「……………………」
双方とも顔を伏せたまま、沈黙が続く。やけに静かな部屋の中にはサイキロイドの稼働音だけが静かに響き渡っていた。
──ここで黙るということは、つまりそういうことだ。イッテツは全身の血が冷えていくのを感じながら、あぁ、せめて証明が済んでいたらな、と今更どうにもにもならない言い訳を考える。
リトの方はというと、いつまで経っても冷静になってくれない頭をどうにか落ち着かせるので必死だった。
懺悔でもするかのようにぽつりと呟かれた告白。あれを聞いた瞬間から、苦しげな言葉のひとつひとつを丁寧に拾って肯定してやりたい気持ちと、対話なんてそっちのけで力の限り抱きしめてしまいたい衝動とがない混ぜになって、論理的な思考がまるでできない。
気持ちだけが先走って、ここで選択を間違えてしまったら最悪だ。せめて少しでも頭を冷やそうと彷徨わせた視線の先には、今まで声だけ聞こえていたサイキロイドが所在なげに佇んでいる。
イッテツの告白を面と向かって聞いていたのはこいつなのだと思うと、こんな無機物にすら嫉妬の感情が生まれてしまう。大体、愛や恋についてひとりでうんうん考え込んでどうするんだ。そういうのはもっと色んな人と意見を交わしながら、実際の感情をぶつけ合ったりして──、
「……な、テツ」
「…………はい」
「そんな顔すんなって。……とりあえずさ、こっち見てくんね?」
「……、っ?」
意を決して顔を上げたイッテツは、耳まで真っ赤にしながら口角を引き攣らせているリトを見て、そのまま固まってしまった。
……どうしてきみがそんな顔をするんだ。今のを聞いて、黙って、それで──そんな顔、するってことは。
「あんなふうに言ってもらったあとで、こんなダサいとこ見せんのクソ恥ずかしいんだけど。……なんかお前、勘違いしてそうだったから」
「か、ん違い、って……?」
「…………あのさ、」
真っ赤な顔で見つめ合いながら、何だかそれだけでもはや答えなんて分かりきったようなものだけど。
──証明とはきっと、形にして解を出さないと意味がないから。
「愛とか恋とか、友情とか? ……どれでもいいから欲しいって言ったら、どうする?」
「…………は、」
「えーっと、つまり……俺が、お前のこと──、」
一方、にわかに甘くなり出した空気から一足先に退室したウェンはというと、大部屋のソファでスマホを弄りつつ存分にくつろいでいた。
「良いことしたな〜」と上機嫌でSNSをチェックしていると、突然画面上部にバナーが現れる。確認するまでもなく、それは本日非番であるマナからの着信だった。
「あっしもしも〜?」
《もしもしウェンー? 本部から連絡来とったけど、例の音声ロボ届いとるん?》
「うんめっちゃ届いてる〜。テツとかもうすでに使いこなしてるよ」
《あいつにまた新たなおもちゃを与えてしまったか……え、めっちゃ見たいんやけど見に行ってもええかな?》
明らかに期待を隠しきれていないマナの声に、ウェンは機材室からうっすら聞こえてきていたやり取りを思い出す。残念ながら、今あそこに戻る気は起きない。
「ンー……やめといた方がいいかも」
《んぇ、なんでなん》
「多分ねぇ、今来てもマナが思ってるようなもんは見れないと思うから」
《……え? 何が起きてるん……??》
困惑するマナにどこまで伝えればいいか2秒ほど考えて、めんどくせぇな、と放り投げた。
「えっとねぇ、なんつーかその〜……答え合わせ? みたいな? いちたすいちはに〜、にっこりバンザイピースピース〜的な??」
《……えぇ??》
どんどん適当になっていくウェンの返答に理解することを諦めたマナは、《とにかく次行ったら見せてもらうわ……》と無理矢理自分を納得させたようだった。
かく言うウェンも恋愛沙汰についてはさほど興味があるというわけでもない。恋は盲目とは言うけれど、それにしたってあんなにも馬鹿になれるものなんだろうか。
数字の羅列に美を見出すように、あるいは規則性のない数字を線で結ぶように、それくらいに難解で曖昧で明白なものなのだ。きっと、恋というやつは。
コメント
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佐伯が佐伯しすぎてない???? 一人でやってんのクソおもろいし、まじでやりそうなのがほんまにおもろいww んでリトダンボールに刺さってんのしんどwwww おもろいのも書けとるんに、その後のドキドキ感も書けるとかホンマに主さん何もんですか?????