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あの日から、数日が経った。
湊と気持ちを伝え合った私たち。
でも、私たちの関係は何も変わっていなかった。
朝になれば、湊が私を起こしにくる。
「美希〜。起きろ。遅刻するぞ」
「……んん、あと5分」
「昨日もそれ言ってただろ(笑)」
「うるさいなぁ!」
いつもと同じ朝。
だけど、一つだけ違うことがある。
それは――。
湊も、私を好きだということ。
そう思うだけで、胸がいっぱいになった。
*****
その日の夜。
私は湊と一緒に、両親の前に座っていた。
「……お父さん、お母さん。話があるの」
私がそう言うと、2人は顔を見合わせた。
「……美希、どうしたの?」
母が優しく尋ねる。
私は隣に座る湊を見た。
湊も、小さく頷いてくれた。
「……私、湊が好きなの」
もう、隠さない。
「妹としてじゃなくて、一人の男の人として好きなの」
声は震えていた。
それでも、私は続けた。
「……湊も、私のことが好きだって言ってくれた」
母は驚いたように目を見開いた。
父はしばらく黙っていたけれど、やがて静かに口を開いた。
「……そうか」
「……怒らないの?」
思わず聞いてしまった。
父は少し困ったように笑った。
「驚いてはいるよ。でも、お前たちの気持ちを頭ごなしに否定するつもりはない」
「……お父さん」
「ただ、家族として一緒に育ってきたことも忘れないでほしい。これからどうするのか、2人でしっかり考えていきなさい」
母も優しく微笑んだ。
「私たちは、あなたたちが幸せになれる道を考えてほしいと思っているわ」
その言葉を聞いて、胸が熱くなった。
ずっと怖かった。
この気持ちを知られたら、家族が壊れてしまうんじゃないかって。
でも、そうじゃなかった。
私たちの気持ちを、ちゃんと聞いてくれた。
「……ありがとう」
私は小さく頭を下げた。
*****
数日後。
私は湊と、近所の公園を歩いていた。
夕焼けが空をオレンジ色に染めている。
「……なあ、美希」
「ん?」
「覚えてる? 小さい頃、ここでよく遊んでたこと」
「もちろん!」
昔は、湊の後ろを追いかけてばかりだった。
転んで泣いたときも、友達と喧嘩したときも、いつも湊がそばにいてくれた。
ずっと、私の憧れだった人。
そして、いつの間にか――。
一番大切な人になっていた。
「……俺さ」
湊が足を止めた。
「ずっと、お前のことを妹としてしか見ちゃいけないって思ってた」
「……うん」
「でも、本当はずっと好きだったんだ」
湊は少し照れくさそうに笑った。
「……だから、これからはちゃんと伝えることにする」
「……え?」
「美希が好きだ。これからも、ずっと一緒にいたい」
涙が溢れそうになった。
ずっと聞きたかった言葉。
ずっと、夢に見ていた瞬間。
「……私も、湊が大好き!」
私は笑顔で答えた。
湊も、嬉しそうに笑った。
「……じゃあ、これからもよろしくな」
「……うん!」
私たちは、ゆっくりと歩き始めた。
まだ、これからどうなるかはわからない。
周りの人にどう思われるか、不安になる日もあるかもしれない。
それでも、2人で考えて、2人で答えを見つけていきたい。
だって、もう一人じゃないから。
*****
それから、数年後。
私は高校を卒業し、大学生になった。
湊も大学を卒業し、社会人として働き始めていた。
あの頃から、私たちは少しずつ変わった。
お互いの気持ちを大切にしながら、家族としても、恋人としても、向き合ってきた。
そして、ある日のこと。
「……美希」
湊が、私の前に立った。
「……なに?」
「これからも、ずっと一緒にいてほしい」
湊は小さな箱を差し出した。
中には、きらきらと輝く指輪が入っていた。
「……っ!」
「俺と、結婚してください」
涙が溢れた。
あの日、叶わないと思っていた恋。
好きになってはいけないと思っていた人。
ずっと、遠くから見つめることしかできなかった人。
その人が今、私の目の前にいる。
そして、私に未来を約束してくれている。
「……はい!」
私は笑顔で答えた。
湊はほっとしたように笑い、私の手を優しく握った。
*****
私たちは、血の繋がった兄妹ではなかった。
でも、家族として一緒に過ごしてきた時間は、本物だった。
だからこそ、簡単には答えを出せなかった。
悩んで、迷って、それでもお互いの気持ちと向き合った。
そして今、私たちは新しい未来へ進もうとしている。
叶わないはずだった、兄への恋。
でも――。
それは、叶わない恋なんかじゃなかった。
これは、私と湊の恋の物語。