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父に支払われた二億円のうち一億五千万円は宮田家、五千万円が宮田工務店からの持ち出し。宮田工務店はともかく、家長の一郎の決断により支払いが決まったが、宮田家にとっては小さからぬ打撃となった。一億五千万円のうち、一郎が一億、大夢が五千万円を負担。一郎が負担した一億円のうち五千万円は貸付の形をとった。つまり大夢は十年以内に一郎に五千万円を返済しなければならない。大夢は次に何か不祥事を起こせば、その五千万円の一括返済と宮田工務店から懲戒免職相当の処分をすると言い渡されている。懲戒免職なら退職金も出ない。夏海との不倫関係継続と大石家への私的援助は事実上不可能になった。
次に不祥事があれば、借金の一括返済と職場からの懲戒免職。その不祥事には当然〈夏海とのあらゆる方法での接触〉という項目も含まれていたが、大夢は夏海とのLINEでのやり取りを相変わらず続けていた。大夢がそんなことになっているとは知らない夏海も、毎日マジックで〈大夢専用〉と書かれた下腹部を自撮りしては朝晩大夢に送信し続けていた。
《生きてるか?》
〈死にそうだよ。先月の給料日、職場から給料が振り込まれた直後に元旦那に差し押さえられてさ。元旦那に抗議したら、まだ養育費の滞納額の半分も回収できてないって逆に文句言われたよ。月五万の養育費の減額をお願いしたら、五万は歩夢の分だけだからこっちに戻ってきた架と夢叶の分も増額して下さい、だって。私に死ねって言うの? って聞いたら、これからあなたの恋人が楽しいことになりますから、死ぬにしてもそれを見届けてから死んで下さいって言われた。私の恋人って大夢君のことだよね。元旦那たち、大夢君に何かするみたいだよ。気をつけて!〉
《おれに何かする? 上等だ! 返り討ちにしてやる! おやじが夏海の元旦那に同情的でさ、慰謝料やらもろもろを向こうの言い値で払わされた。いい加減、おれだって頭に来てるんだ》
〈元旦那に言い値でいくら払ったの?〉
《二億》
〈二億!? そんな大金手に入れたのに、まだ私の口座から数万円を引き出そうとするの?〉
《血も涙もない男だな》
〈結婚中は優しい人だったのに、今は悪魔よ!〉
《悪魔か……。托卵を知られたとき、雫と有希にそう罵倒された。娘たちには今も気持ち悪いものを見るような目で見られるんだ。子どもたちに話すことはないだろうって樹理に詰め寄ったら、私が話したって決めつけないでって逆ギレされた。ほかに誰がいる? この家にいても針のむしろだ。夏海なら絶対おれを傷つけないのに。夏海に会いたくて会いたくて気が狂いそうになるぜ!》
〈私だって大夢君に会いたい! でもまだ会いに来てくれないんだよね?〉
《まだ無理だ。でも待っててくれ! おれは必ずおまえに会いに行くし、おまえの両親にも援助してやるから》
〈首を長くして待ってるよ〉
《夏海、今は会えないからおまえの動画見て自分で慰めるわ。不倫がバレてからさらにヒスがひどくなった樹理なんてまったく抱く気になれないしな。夏海、三十分以内に抜ける動画送ってくれ》
〈待ってて〉
三十分後に夏海が大夢に送信した動画を再生した。夏海は全裸。下腹部の〈大夢専用〉の文字を見せつけるように、畳の上に膝を立てて座っている。膝を開いて性器に玩具を挿入して、もだえ始めた。
「気持ちいいけど、やっぱり大夢君とのセックスが最高なの! それでも元旦那のポークビッツよりはずっといい!」
と絶叫しながら、夏海は絶頂に達した。離婚しても貧乏になっても夏海は夏海だった。兄弟三人ともどうしようもなく嫌な気分になったが、その日はXデイ三日前。僕らは夏海のことなど忘れ、遠足前日の小学生のようにわくわくしながら眠りについた。
大夢と樹理の三人の子どもたちは父が浮気相手の家で窃盗の容疑で逮捕されたらしいということは聞いていたが、それ以上の情報は持っていなかった。父の浮気相手が誰なのかも知らなかったが、浮気すること自体が許されないという認識で、三人は母の樹理の味方となり、大夢とは口も利こうとしなかった。三人はこの時点ではまだ大夢が托卵までやっていて、托卵で生まれた子どもが自分たちと同じ学校の同じ学年にいるという事実を知らなかった。
五月下旬、家に忍び込んだ変質者が監視カメラでばっちり撮影されているという触れ込みのショートムービーが長女の雫の高校の生徒のあいだで拡散されていた。雫の友達にも動画が送られてきて、それを見た友達が、
「変態、キモ。死ねばいいのに」
などと心から気味悪がってるのに興味を持って、雫もそれを見せてもらった。見るからに女の子らしい部屋に場違いな中年男。男はタンスを漁り、下着を手に取ると、鼻にこすりつけ匂いをかいでいるような仕草。その顔を見て、雫は言葉を失った。明らかに自分の父親の顔だったからだ。
雫はそのまま逃げるように学校を早退した。帰宅してしばらくして冷静になった雫は真相を知りたいと思った。大丈夫? と心配するメッセージを送ってくれた友達に、あの動画の出どころを探ってほしいと依頼した。友達は自分でもそれを知りたいと思って、雫の依頼を快諾した。女子に聞いても誰も知らないという。それならと男子にも調査の範囲を広げてみたら、一人目でもう答えにたどり着いた。灯台もと暗しとはこのことで、クラスメートの佐野架が動画の出どころだという。
生徒会役員を務めるほどで誰とでも明るく接することのできる次女の有希と違って、長女の雫は広く浅くの交際が苦手だった。近眼でメガネが手放せず、容姿にも自信がなかったことが人間関係にも影響したのかもしれない。クラスメートといっても今まで雫の交友関係は一部の女子だけに限られていたから、架ともほとんど言葉を交わしたことはなかった。でも、そんなこと言ってる場合じゃないと翌日、雫は架に声をかけ、放課後に話をしたいと持ちかけた。
授業なんて何も耳に入らなかった。ただ放課後が待ち遠しかった。放課後、雫は学校近くの公園に架を連れて行った。公園のベンチに並んで座った。
「逆ナン? 宮田って真面目そうに見えて意外と大胆だな」
真面目な雫は架の軽口に一切耳を傾けなかった。
「校内に拡散してる動画の出どころって君なの?」
「動画? これのこと?」
架が自分のスマホの画面を雫に見せる。
「そうそう。これ……」
と言いかけて、架が再生した動画が昨日見た動画と別物であることに気づいた。男と女がダイニングのテーブルの上で裸で対面座位の姿勢で抱き合っている。ただ抱き合ってるのではなく、二人の激しい動きやあえぎ声から行為中であることは明白だった。
どさくさ紛れにいかがわしい動画を私に見せて、どういうつもり? 絶対に先生か佐野架の親に言いつけてやる! と思った瞬間、動画の男がこれも父の大夢であることに気づいた。ただし、父の名を叫びながら父と激しく性交する女は母の樹理ではなかった。
「この女の人は誰?」
「おれの母親の佐野夏海。不倫がバレて父さんに離婚されて、今は実家に帰ってる」
そのとき、雫は父の浮気相手が架の母親であり、先日父が逮捕された場所が架の自宅だったことも理解した。
「おれたちはこのテーブルでずっと食事してきたんだぜ。おれたちがいないとき、こいつらがこんなことやらかしてるなんて夢にも思わずな」
「佐野君が私の父を恨んでることは分かった。でもそれを言うなら、私だって父と不倫した君のお母さんが憎い。お願いだから、これ以上の動画の拡散はやめてほしい。動画の男が私の父だと知れたら、私はもう学校に行けない」
架がまた別の動画を再生する。また雫の父と架の母が性交していた。今度は犬が交尾するときのような体勢で。見たくもない父の勃起した性器が目に入り、雫は顔をしかめた。ただし父の顔が若い。相当古い映像であるようだ。父の浮気相手が雫の母の名を口にしたのを聞いて、彼女は思わず見入ってしまった。
〈樹理さんとの妊活は順調?〉
〈そろそろ第一子がほしいって言うからあいつとも頑張ってる。おれ、樹理と夏海を同時に妊娠させたいんだ〉
〈なんで?〉
〈おれんちとおまえんちは同じ学区だろ。将来、子どもの授業参観に行って自分の子どもが教室に二人いるのを見たら気分いいだろうなって思ってさ〉
雫は呆然となった。不倫といってもほんの数回軽い気持ちで会ったくらいの浅い関係だと思っていた。父と架の母の不倫関係は今年十七歳になる私が生まれる前から続いてきたということ? しかも、動画の中で父の言っていたことが実現されたなら――
青ざめた雫に架は死刑宣告のように一枚の文書を手渡した。
「これは?」
「DNA鑑定結果の報告書。一緒に住んでる父親はおれと妹との親子関係を否定された」
「ひどい!」
思わず叫んでしまった。
「でもでも、あなたのお父さんでも私のお父さんでもない、また別の男が君たちの本当の父親だという可能性もあるよね?」
「見なかったのか?」
架はさっきの動画の途中のある時点を静止した状態で雫に見せた。ちょうど大夢が夏海に今度は仰向けになるように命じたところ。架の母の下腹部に黒マジックで〈大夢専用〉と書かれてるのが大写しにされた場面。
「なんなの、これ!?」
「おまえの父親にこうするように結婚前から強制されてたんだ。これを見て、おまえの父親以外にこの女を抱ける男がいると思うか?」
「だってこの人と結婚した君のお父さんは……?」
「うちの両親のセックスは、あんなものセックスでさえない。夏海が長いスカートを履いたまま下着だけ外して、仰向けに寝た裸の父さんの上に跨がるだけだからな。うちの両親が結婚して今年で十八年になるが、夏海はおまえの父親に操を立てて、一度も自分の夫に自分の体を見せなかったし、体を触らせたこともなかった。嘘だと言うなら、うちの両親の行為の動画もあるから見せてやろうか?」
「もう分かったから見せないで!」
「いや、見ろ。おまえは自分の父親がうちの家族に何をしたか見る義務がある」
そう言われると見ないわけにはいかない気になって見てしまい、そして見たことを後悔した。佐野架の言った通りの行為がそこにはあった。雫の父との行為で見せた表情豊かな情熱的な姿は見る影もなかった。妻の夏海は着ぶくれするほど服を着込み、裸の夫の上に跨がると、無表情でただ機械的に体を上下させていた。雫はその頃まだ処女だったが、愛のかけらもないこんな行為を強制されるくらいなら一生未経験のままでいいと本気で思った。そんな行為でも男の体は反応するらしく、夏海の夫は数分で射精していた。ようやく夏海が口を開いた。
〈清二さん、今のできっと妊娠できた気がします〉
〈本当ですか?〉
〈女の勘は当たるんですよ〉
佐野架が忌々しそうに、ふんっと笑う。
「夏海は妊娠しやすい期間はおまえの父親だけと行為して、絶対に妊娠しないときだけ夫と行為した。要は、夫との行為は妊娠したときに夫の子どもだと言い張るためのアリバイ作りに過ぎなかった」
動画はまだ続いていた。夏海がけだるそうに身を起こして夫の体から離れると、彼女の夫の下腹部が露わになった。雫は慌てて目をそらそうとしたが、彼女の夫の下腹部に〈夏海専用〉とマジックで書かれてるのをはっきりと見てしまった。
「佐野君、ごめん! お願いだから今日は帰して! 今日私が見聞きしたことを全部、帰ってから頭の中で整理するよ。そのあとで明日もう一度会ってほしい」
「いいぜ。じゃあ、明日この場所で待ってるわ」
「ありがとう」
雫はそれから早口でまくし立てた。
「最後に一つだけ教えて! 父は佐野君たちに謝罪したの?」
「いや、窃盗の件で宮田大夢の弁護士が示談しろってうるさく言ってくるが、一度も本人が謝罪しに来たことはないな。夏海との不倫がバレるまで、週に何度もうちに来てたくせにさ」
雫は何か言いたそうに見えたが、不意に架に背を向けるとそのまま走って公園から出ていった。
その夜、雫はぐずぐずと帰宅するのを遅らせた。とにかく父の顔を見たくなかった。母の樹理を始め私たち家族を裏切ったという怒りはある。だが、架の言うとおり佐野家の子ども二人の遺伝上の父親が大夢だったとすれば、私たちの怒りなんて彼らの怒りに到底及ぶものではないだろう。
架と会って分かった。彼の憎しみの対象は大夢一人に限定されない。彼は明らかに私も憎んでいた。動画の拡散は単なる愉快犯的行動だったわけではなく、私への嫌がらせという目的も少なからずあったはずだ。彼が大夢による托卵という悪意によって誕生させられたのに対して、私は両親のもとから正しく誕生してきたからだろう。大夢によって蹂躙されたものは彼らの母親の貞操だけではない。自宅という彼らの居場所、いや彼らの人生そのものが蹂躙されたといえるかもしれない。
大夢による托卵の発覚で私たちの兄妹が二人増えた。逆に言えば架の父親の子どもが二人減ったということ。大事件だ。私たちは私たちの知らないところで勝手に事件の当事者にされ、憎悪の主体と対象に振り分けられた。私は後者。架の怒りはもっともだ。彼の復讐は成就されなければならない。
大夢は雫たちには厳しい人だった。人に迷惑かけるな。欲望に負けるやつは猿と同じだ。父のそんな言葉を聞きながら雫たち三人はここまで育てられた。笑ってしまう! 不倫なんてのは一番欲望に負けたやつがすることじゃないのか? 不倫するだけにとどまらず托卵までして不倫相手の家庭を崩壊させておきながら、人に迷惑かけるな? 猿以下の生き物に育てられた私たちも猿以下の生き物にしかなれないのだろうか?
普通じゃないのは大夢だけではない。今思えば母の樹理は父の不倫をずっと前から知っていたとしか思えない。もとから夫婦仲がよくなかったとはいえ、夫が不倫中に警察に逮捕された日の前とあとでほとんど態度が変わらないから。知ってるならなぜ父を止めなかったのか? 止めて聞かなかったなら離婚すればいいだけではないか? そうなれば私たちは当然母の方についていく。それなのに、大人の事情かなんなのか、母は父の不倫を黙認というか、見て見ぬふりをした。
夜の十時、闇雲に街じゅうを歩き回った。高校の制服を着たまま同じ道を何度も行ったり来たりするのを見られて、いいカモがいると思われたらしく、見るからにチャラそうな男たちに声をかけられた。
「家出中? おれんちに泊めたげようか。もちろん何もしないからさ」
絶対に嘘だ。下心が服着てるみたいなタバコ臭い男に腕をつかまれた。男たちはほかに三人。
「どうしてもうちに帰りたくないから泊めて下さい」
私がそう言うと男たちが歓声を上げた。私は無抵抗に男に腕を引かれていった。目の前にワンボックスが駐まっている。あの車に乗せられてどこかへ連れて行かれるのだろう。
父は結婚相手以外に体を許すなと言っていた。自分はどうなのか? 不倫相手の佐野夏海さんと結婚するのか? 私たちには婚外恋愛を禁じながら、自分は何十年も不倫し放題。私は父に復讐したくなったのだ。私がよく知らない男たちに体を差し出して一晩中性のはけ口にされていたと聞いて、あの男はどんな顔をするだろう? 佐野架の感じた絶望の数分の一でも味わうだろうか? これからされることを思うと怖くて仕方ないのに、一方で楽しみで楽しみで仕方なかった。
また、私がひどい目に遭わされたと聞いたら、父の托卵の被害者である佐野架の怒りも少しは和らぐかもしれない。私は自分が誰かによって罰せられなければならない存在だと信じた。それなら佐野架自身に罰せられるのが一番よかったという気もするが、こうなってはもう何を言っても仕方がない。
車に乗せられる直前、異変が起きた。運転席に乗り込もうとした男が悲鳴を上げて地面にうずくまり、続けて助手席に座った男が車外に引きずり出されて、うっとうなって崩れ落ちる。気がついたら残り二人も私のそばに倒れていた。
ナンパ男たちを倒した側も一人ではなかった。屈強そうな三人の男たちの仕業。彼らは全員黒いスーツ姿。もちろん私の知らない人たちで、私服警官というわけでもなさそうだ。彼らは別の誰かに感謝の言葉をかけられ、目の前に停まった車に乗り込み悠然と立ち去った。
三人に感謝の言葉をかけていた男が近づいてきた。足音だけで不機嫌な気持ちが伝わってくる。
「あんな連中にナンパされてそのままついていこうとするなんて、おまえ何を考えてるの?」
男は夕方に別れたはずの佐野架だった。
「私を助けてくれたの?」
「馬鹿言うな。宮田大夢だけじゃない。大夢がかわいがってるおまえだって復讐の対象に入ってるんだ。復讐する前に自殺なんてされたら困ると思ってあとをつけていたが、おれがおまえに地獄を見せる前におれたちと無関係な連中に地獄を見せられるなんて、自殺されるよりもっと許されない!」
ちょうどいいと雫は思った。私が復讐されることで托卵という大罪を犯した父が少しでも苦しみ、大夢のせいで托卵児として誕生させられた架の絶望が少しでも癒やされるなら、それだけでも十分に意味あることに違いない。
「いいよ」
自暴自棄になっていたわけではない。そのときの雫の心は湧き出る泉の水のように、今までになく透明で汚れないものであったという自覚があった。
「私は復讐を受け入れる。それで君が救われるなら」
架は自宅に連れて行くと雫に言い渡した。
「大夢が夏海を蹂躙した同じ場所で同じ方法で、おまえはおれに蹂躙されなければならない」
なるほどと雫は思った。ナンパ男たちでなく架本人に自分が罰せられることになって本当によかった。
架はタクシーを拾い、雫と帰宅した。もう遅い時間だったから誰の出迎えもなかった。雫を自分の部屋に連れ込み、大きな声を出すなよと言うと、雫は黙ってうなずいた。複数の監視カメラで撮影されていると教えられても、それも父がしていたことだと知っていたから、それも復讐の一環なんだろうなと思っただけだった。
その夜、雫は架の部屋で処女を失った。夏海が今日は安全日だと言えば大夢は避妊などしなかった。同じように生理直後だった雫に対して架も避妊しなかった。雫は異母兄妹で性交したことの後ろ暗さを特に感じなかった。かえって托卵と違って誰にも迷惑かけてないという強い自信が雫の心にはあった。
その後、架は雫を四つんばいにして再度犯し、口と肛門も犯し、自慰行為をさせ、飲尿させ、最後に雫の下腹部を剃毛し、黒マジックで刻み込むように〈架専用〉と書いた。
雫はこれから毎朝それを自分で書き、毎日朝晩それを撮影して架に送信することを約束した。架は電話して僕を部屋に呼びつけ、夏海と同じ姿にされた雫の下腹部を見せた。僕が雫を協力者とした復讐計画のプランAを構想したのは、架が雫を完全に支配下に置いたことを知ったからだ。
「歩夢、おまえもこの女を好きにしていいんだぞ」
「兄さんの彼女なんじゃないの?」
「馬鹿言うな。これは宮田大夢に対する復讐のほんの一部にすぎない」
雫は全裸で架のベッドに寝かされたまま、兄弟の会話をぼんやりと聞いた。呼ばれたらいつでもすぐに駆けつけると約束して、雫は早朝僕らの家を出た。
自宅に帰宅した時間は午前五時。雫は大夢に思いきり顔を殴られた。何度殴っても笑顔を絶やさない雫を見て、大夢は薄気味悪く感じただけだった。
それから雫は週二回か三回、架の部屋に呼びつけられた。大夢に浣腸された夏海がダイニングのテーブルの上で脱糞する動画を見せられたとき、これはしなくていいの? と雫が聞いた。これはおまえの家で、と架は答えた。