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陣柴 ( 陣内×柴原 ) 短編集です !!
メイド服の日.という事なのでシバと才木にロングスカートのメイド服を着てもらった
腕を組んで満足げに二人の姿を上から下まで舐め回すように見た.
陣「よくサイズがあったな」
ニ「La ropa hace al hombre ( 馬子にも衣装 )」
才&柴「ニコさん?」
綿「(意外と可愛い…)」
陣「お前ら次の潜入捜査それで行けば?(ニヤッ)」
柴「嫌っす!」
才「嫌です!」
特捜課のオフィスに束の間の平和が漂っていた.棚の上にはニコがどこからか調達してきた花瓶が飾られ場違いなほど華やかな空間になっている.その中心でメイド姿の二人が揃って抗議の声を上げたが誰一人として聞く耳を持っていなかった
陣「ねえこれ下どうなってんの?」
シバのスカートの裾をぴらっとめくった
柴「ギャ~ッ!!!!!」
陣内は手を引っ込めもせずむしろ覗き込むように首を傾げた.
陣「いやちゃんと中にパンツ履いてんのか確認しとかないと」
綿貫が無言で陣内の後頭部をファイルで叩いた , 乾いた音が課内に響く.
綿「セクハラです」
陣「いてっ , いや仕事だよ仕事.任務中に下着が見えたら困るでしょ」
綿「その言い訳がもう無理があります」
才木は自分のスカートを両手で押さえながら顔を真っ赤にして後ずさった.
才「陣内さんマジでやめてください…!」
ニ「Muy bonito ( とってもキュート )」
柴「ニコさんも笑ってないで助けて!」
棗「記録しておきますね.パワハラ案件として」
棗はモニターから目を離さず淡々と呟いた
陣「おい棗お前どっちの味方だよ」
柴「う゛~…陣内さんのえっち…」
シバはスカートの裾を必死に引っ張る , そんなシバを見ながら陣内は大げさに胸に手刀を当ててよろめいた.
陣「えっちって…傷つくわぁ~俺はただの安全点検だっての」
葛城はコーヒーを啜りながら穏やかに微笑んでいたがその目は笑っていない.
葛「陣内次やったら始末書な」
陣「葛城さんまで!?」
綿「大丈夫?変なとこ見られてない?」
シバはスカートの中を必死にガードしながら小さく頷き , 才木はシバを庇うように前に出て陣内に人差し指を突きつけ
才「陣内さん!柴原さんには婚約者いるんですからね!?」
陣「あ~そうだったそうだった.悪い悪い」
才「絶対思ってませんよね!」
ニコラスはぽんとシバの肩を軽く叩いてにっこり笑った
ニ「シバ , どんまい , 乙 .」
柴「ニコさん??」
シバがニコをじとっと見上げたがニコは既に何食わぬ顔で棗のデスク横に移動し差し入れのチョコレートを物色していた.裏切りは一瞬だった
陣「しかしまあ似合ってんじゃない?二人とも」
2人は褒められたのか貶されたのか判断がつかず微妙な顔のまま立ち尽くした
綿「まあ可愛いと思うよ?」
柴「綿貫さんまで!」
陣「うんうん可愛い可愛い」
柴「その「うんうん」が完全に馬鹿にしてるんすけど」
陣「してないしてない , 純粋な感想.」
陣内はひらひらと手を振りながら視線を才木の方に移した.口元がにんまりと笑う
陣「ねえ才木お前その格好で「おかえりなさいませご主人様」って言ってみ?」
才「言うわけないでしょ!!」
陣「え~じゃあシバ」
柴「嫌です」
陣「まだ何も言ってないんだけど」
柴「嫌な予感がしたので」
陣「え~いいじゃん.犬耳と尻尾つけてよ」
柴「いやっす!!」
陣内が がたっと立ち上がってどこからともなく犬耳のカチューシャとふさふさの尻尾を取り出した
陣「持ってんだよね実は」
柴「なんで持ってるんですか!?」
綿「うわ ~ … 」
棗「それ経費で落ちないですよ」
陣「私物だわ」
才「それ以前になんで特捜課に犬のコスプレグッズがあるんですか…」
ニ「最高.シバに付けようぜそれ」
柴「ちょ , 拒否権は?」
陣内は犬耳を片手にぶら下げてもう片方の手のひらを上に向けた.まるで「どうぞ」とでも言いたげなジェスチャー
陣「あるわけねえだろ」
柴「あるでしょ!!」
葛「まあ…似合いそうではあるな」
柴「課長!?」
綿貫は口元を手で隠しているが肩が小刻みに震えて笑いを堪えきれていない.才木は一歩後ろに下がり完全に傍観者のポジションを確保した.目が「頑張ってください」と語っていた
陣「ほらみんな期待してんぞ.民主主義ってやつだ」
柴「民主主義の使い方おかしいでしょそれ!!」
ニ「シバ諦めろ.多数決で勝てるわけない」
柴「(俺にも人権があるのに…)」
シバの脳裏に人権という言葉が浮かんだが特捜課においてその概念が機能した試しは一度もなかった.民主主義という名の数の暴力が、今まさにシバに襲いかかろうとしていた.陣内はじりじりと距離を詰めながら犬耳をゆらゆら揺らした
陣「三秒やる.さん , にー」
柴「ちょカウント早っ」
陣「いち , ゼロ.はい没収」
シバが抵抗するより一瞬早く陣内の指がメイドキャップの隙間からシバの髪に犬耳を滑り込ませた。手慣れている , 明らかに手慣れた動きだった.尻尾のクリップもスカートのウエスト部分にぱちんと留める
ニ「Brava ( ブラボー )」
綿「お , 可愛いじゃん」
柴「もうお嫁にいけない…」
陣内はスマホを構えてシャッターを切った , 躊躇いのかけらもない.
陣「はい一枚.待ち受けにしよ」
綿「後で送ってくださいそれ」
陣「いいよ」
柴「やめてください!!」
才木はおそるおそるシバを見て思わず吹き出した
才「あいや…すみません , でもなんかしっくりきて…」
柴「才木くんまで!?」
ニ「ハチ公みたいだな」
葛「陣内あんまりいじめるなよ」
陣「いじめてないっすよ.愛です愛」
陣内はそう言いながらもう三枚撮った , それに気付いてシバはスマホを取り上げた.
陣「あ~ッ!俺のスマホ!」
慌てて手を伸ばすが身長差9センチがここで効いた.シバがスマホを頭上に掲げると陣内はつま先立ちになっても届かない
陣「返せ!それ俺の私物!」
柴「今撮った写真消すまで返しません!!」
陣「お前それ俺に喧嘩売ってんの?特捜課最強のこの俺に?」
柴「今は関係ないでしょ!!」
綿「子供か」
ニ「陣ちゃんが170 , シバが179.9センチ差 , 物理的に無理だな」
陣「うるせえニコ!身長の話すんな!」
ぴょんと跳ねてシバの腕に掴みかかるがメイド服同士がもつれて二人ともよろけた.
才「あの二人とも転びますよ!」
柴「へ?」
才木の警告は一歩遅かったシバと陣内が絡まったままバランスを崩し陣内がシバの襟元を掴んだせいで二人揃って床に倒れ込んだ.どすん , という鈍い音
柴「いったぁ…!」
背中を打った痛みに顔をしかめたがそれ以上に問題だったのは自分の上に陣内が覆いかぶさるような体勢になっていたことだった.メイド服が乱れ犬耳がずれて片耳だけになっている
陣「お~いい眺め」
柴「馬鹿言ってないで早くどいてください!!」
陣内は退くどころか片肘をついてシバの顔を覗き込んだ
陣「え~もうちょいこのままでよくない?」
綿「はい離れる」
すたすたと歩み寄り陣内の首根っこを猫の子でも持ち上げるように掴んで引き剥がした
陣「ぐえっ」
才「だ , 大丈夫ですか柴原さん…」
真っ赤な顔で目を逸らしながら手を差し出した.才木の手に掴まって起き上がりながら乱れたメイド服を慌てて直した.顔が熱い , 打った背中の痛みよりさっきの体勢のほうがよっぽど堪えた
ニ「はは!ラブコメかよ!」
棗「写真消しましたか?」
柴「え?あッ」
はっとして手の中のスマホを見下ろした.指先がロック解除のパスコード入力画面で止まった.陣内鉄平 , 東大法学部卒のキャリア組.スマホのセキュリティも抜かりない , ロックがかかっていた
柴「パスワードわかんない」
ニ「4桁.ヒント , シバの誕生日」
柴「え」
棗「いえ先月のパチンコの出玉です.7777かと」
陣「おいお前らなんで知ってんだよ」
綿「自分で言ってたでしょ先週」
柴「7777…」
7777と入力した.開いた , ギャンブル中毒のセキュリティ意識に感謝すべきか呆れるべきか
柴「……あった , この写真」
親指が写真フォルダの削除ボタンの上で一瞬止まりそのまま押した.三枚の犬メイド写真がゴミ箱に消えていく.完璧な仕事だった
柴「よし」
陣「あ~っ!!お前マジか!!クラウドにもバックアップあんだからな!!」
柴「クラウドごと消します」
棗「シバさん , Googleフォトのアカウント名とパスワード , 先月の飲み会で~…」
柴「棗さん!?」
陣「お前なんで人のアカウント把握してんの怖いんだけど」
棗「後方支援の基本です」
綿「絶対違う」
才「あの…クラウドってことはスマホ本体消しても意味ないんじゃ…」
シバはピシッと固まり陣内は床に座り込んだままにんまりと笑った.勝者の顔だった
柴「…じゃあ陣内さんのパソコン壊すしか」
陣「やめて??」
一瞬で陣内の笑顔が消えた.素のトーン
ニ「あっはは形勢逆転」
陣「いや待て待て , 落ち着けシバ?話し合おう.大人ってのは話し合いで解決するもんだ」
柴「さっき俺に馬乗りになってた人が何言ってるんですか」
陣「あれは事故だろ!!」
葛「まあまあ。写真くらいいいだろシバ」
柴「課長まで!?」
綿「いい写りだったよほんとに」
ぽんとシバの頭を犬耳ごと軽く撫でた.無意識だったかもしれない
柴「綿貫さんそれフォローになってないです…」
陣「ねえシバ今日1日その格好で居てよ」
柴「は???さ , 才木は??」
陣「ん?あ~…」
陣内の視線が才木に流れた , 才木はまだメイド服姿のまま居心地悪そうにスカートの端を握りしめている
陣「才木はもうちょいしたら着替えていいよ.お前は十分楽しんだから」
才「楽しまないでください!!」
陣「で , シバ.お前は残れ.命令」
柴「それ業務命令ですか!?」
葛「まあ…今日午後の案件 , シバは待機だし.別にいいんじゃないか」
柴「課長!?!?」
棗「合理的ですね.現場に出ないなら服装は問われません」
陣「ほら多数決.民主主義」
柴「さっきと同じ手口!!」
結局シバはメイド服のまま皆が帰ってくるのを待機した.午後三時.窓から差し込む西日がメイド服の白いフリルを橙色に染めていた , 特捜課の面々はそれぞれの持ち場に散り残されたのはシバと葛城 , そして
陣「ただいま~」
陣内がドアを開けた.現場から戻ったらしくジャケットの肩にうっすら埃がついている.その後ろから才木も続く , スーツに着替え済みだった.つまりシバだけがまだメイドだった
才木「あ…」
才木がシバを見た瞬間気まずそうに目を泳がせた.同情と笑いが半々の複雑な表情
陣「シバ , おかえりなさいませご主人様は?」
柴「は?」
陣「だから , 俺が帰ってきたんだからさ.言うことあんだろ」
柴「ないです」
陣「え~」
ジャケットを脱ぎながらシバの横を通り過ぎ , わざとらしく顔を近づけた
陣「お・か・え・り・は?」
葛城は自席で書類に目を通しながら何も聞こえていないふりをしていたが口角が上がって才木はそそくさと自分のデスクに着席しパソコンを開いた.画面を見つめる目は完全に泳いでいる
柴「言いませんからね。絶対に」
陣「ふうん?じゃあ俺今日一日ずっとこれ言うけど.帰るたびに」
シバの正面に回り込んでしゃがみ込んだ.下から見上げる形になる
柴「脅迫じゃないですか」
陣「交渉って言って」
葛「シバ言ってやれば?一回で終わるんだから」
柴「課長どっち側なんですか!!」
陣内はにこにことまるで駄菓子屋の前の子供のような顔で待っている.三十六歳 , 東大法学部卒 , 特捜課最強戦力.その男が今メイドに「おかえり」をねだっている
柴「…チッ」
舌打ちがひとつ.シバは天を仰いだ.蛍光灯が無機質に光っている , 覚悟を決めるしかないらしい
柴「…おかえりなさいませ」
陣「ご主人様が抜けてる」
柴「っ!!」
拳を握りしめた.顔に血が上っているのが自分でもわかる
柴「…おかえりなさいませご主人様」
陣「うん.ただいま」
ぱあっと陣内顔が輝いた , 満面の笑み.才木はキーボードを打つ指が完全に止まっていた.肩がぷるぷる震えて , 葛城は新聞を広げていた , いつの間にその向こうで確実に笑っていた
柴「もういいですか」
陣「うん満足.今日一日それで頑張れ」
立ち上がりながらぽんとシバの頭に犬耳のてっぺんに手を置いた
柴「頑張るって何を!?」
陣「俺のモチベーション」
柴「知りませんよそんなの!!」
棗「あ , まだ着てたんですね」
いつの間にか戻ってきていた.手にはコンビニ袋
柴「棗さん見てたなら止めてくださいよ…」
棗「楽しかったので」
柴「この部署まともな人いないんですか」
ニ「いないよ」
柴「断言しないで!!」
陣「シバ~ちょっとこっちきて」
警戒心むき出しの目で陣内を見た.今日一日で学習したのだ , この男に呼ばれて碌な目に遭った試しがない
柴「…なんすか」
陣「いいからいいから」
ひらひらと手招きする.デスクの陰になっていて他のメンバーからは見えにくい位置だった.シバは一歩近づいた.まだ距離は保っている.陣内はぐいっとシバの腕を引いてそのまま自分の胸元に引き寄せてぽすん , とシバの顔が陣内の肩口に埋まった
陣「はいご褒美」
柴「っ!?」
心臓が跳ねた.香水とかすかに煙草の匂い.体温が近い
柴「な , なにして」
陣「今日ずっと皆のおもちゃにされてたでしょ.頑張ったな」
シバは体が強張ったまま動けない , 振りほどこうと思えばできる , できるのに.そんなことを気にもせず陣内はぽんぽんとシバの背を二回叩いた.犬をあやすみたいに
柴「ちょ , もう離して…」
陣「ん~もうちょい」
離さない.むしろ少しだけ腕に力がこもった.シバの耳が首筋まで赤くなっていく.犬の耳飾りのせいではない , 本物の方.綿貫は廊下から戻ってきた足が止まった , 二人の姿が視界に入る.一瞬目を見開いて何も言わずに踵を返して.才木は顔を上げた拍子にその光景が目に入りばっとモニターに視点を固定して見なかったことにした.棗は買ってきたプリンを冷蔵庫にしまう手が一瞬止まってまた動いた
柴「じ , 陣内さんってば…!」
陣「はいはい」
ふっと息を吐くように笑ってようやく腕を緩めた.だが完全には離さなかった.シバの肩にぽんと手だけ残して顔を横から覗き込む至近距離
陣「お前耳真っ赤」
柴「っ , 誰のせいですか!!」
シバはばっと一歩飛び退いた.スカートがふわりと揺れる.陣内は退かれた手をひらっと振って何事もなかったように椅子に座った.足を組む
陣「俺のせい?知らな~い」
葛「仲良しだなぁ」
柴「課長!!見てたなら止めてください!!」
葛「止めたら怒るだろう、ああいうのは」
シバは何も言い返せなかった , 図星だったからだ.顔を両手で覆ってその場にしゃがみこんだ , メイド姿で.179センチの大の男が
ニ「あれシバ死んだ?」
棗「シバさん水飲みます?」
柴「…いただきます」
陣内は頬杖をついてしゃがんだシバを眺めていた.その目が妙にいつもより少しだけ柔い.特捜課に夕暮れの光が差していた , 誰かの鼻歌が聞こえる , 平和だった.こんな日があってもいい.明日からまたDOPEに狂った人間たちの地獄が待っているのだから
はい.結構頑張りました….え~ , もし面白い , もっかい読みたい , と思ってくれたらいいねとコメントとフォローをよろしくお願いします.
密かに絵でも投稿しようかな…
あ , ではでは♩