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電源をつける。
ロック画面の通知は、もう止まっていた。
『今日の提出物やった?』
『生きてるー?笑』
『またあとで電話していい』
古い通知ばかりだった。
返信は、途中から無くなっていた。
私はそのスマホを家に持ち帰った。
持ち主は、もういない。
そう聞いたのは、数日後。学校帰り、コンビニの前で同級生たちが噂しているのを聞いた。
「高一の子らしいよ」
「急だったって」
「スマホだけ見つかってないらしい」
その瞬間、鞄の中が急に重くなった。
夜、布団の中でそのスマホを開く。
写真フォルダには、空の写真が多かった。
夕方の駅。
飲みかけのレッドブル。
ぐしゃぐしゃのプリント。
友達の後ろ姿。
自分で作ったらしいパンケーキ。
ピントの合ってないネイル。
どうでもいい写真ばっかりだった。
でも、どうでもいい写真って、その人が「生きてた時間」そのものだった。
動画もあった。
文化祭準備中、教室の隅で誰かが笑っている動画。
「ちょ、撮んなって!」
そう言いながら、撮ってる本人が一番笑ってる。
声だけが残っていた。
私は知らない人の人生を、少しずつ覗いていった。