父さんは、夕食を一緒に食べて帰ることになった。夕食中は会話も無く、ただ一定の作業のようにも黙々と食べ続けた。そして食器を洗った。何故か僕はこのとき、『父親』という存在を強く感じた。
僕はこれからどう生活するのか、その相談を父さんとしようと思った。そして父さんと話し合った末、一緒には暮らさないが学費などの費用は出してくれるんだとか。僕も一応バイトはしている。だから少しは僕も出すと言ったのだが、頑なに断られた。こういうところが凄く父さんらしい。頑固で、結局は僕のことを愛してくれてるんだ。
父さんが帰るときに僕は少しだけ、寂しいと思った。ちょっとだけ寂しい…そう思った。だから…
「父さん、僕は父さんの愛をしっかり感じてたよ。だから…」
父さんが肩を震わせた。
「僕も父さんを愛してるよ…」
父さんは下を向いて嗚咽し始めた。父さんの心は…
(こんな俺でも愛してくれてるのか?俺の愛は伝わってたのか?あんな酷いことをしたのに…)
父さんは涙で濡れた顔を上げてニカッと笑うと、僕の頭をグシャグシャと撫で回した。そして、
「俺も心から愛しているぞ!」
と言って、振り返らずに歩いていった。
これが最後の別れになるような気がした…父さんが死んだのは…1年後のことだった。