近頃、「赤い月」というモノがみられています。
その月は、今から一万年前、厄災ガノンが力を取り戻す日に現れるという全体が真っ赤の満月。
この月が現れるとハイラル各地の敵が命を吹き返し、人々を襲うと言われています。
この月を見た者は酷い難病にかかり、命の灯火が途絶えると噂されて人々は困惑と恐怖に満ち入られました。あ、ちなみに、この難病の病名は「赤恐病」(せっきょうびょう)と言うんですよ。
おっと…話が逸れましたね…その赤い月の恐ろしさを目の当たりにしたハイラル国初代王「ラウル」という者が「赤い月の日は窓を布で覆い、決して外には出るな」と人々に命令しました。人々はそれに従い、ここ一万年間、誰一人として赤い月の影響で命の灯火が消えることはなかったのです。
それと、1000年前年から赤防襲(せきぼうしゅう)という薬が開発されました。飲み薬や塗り薬もでていてこの薬を飲んだり塗ったりすれば赤い月の日に外を歩いても、全然大丈夫なのですよ。
ただ…中には薬が効かず、赤恐病にかかり、命の灯火が消えてしまう人もいるんですよ。
ミファーside
小さい頃、私の教育係のムズリに何回も聞かされてきた事を思い出しながら、私はハイラル城の廊下の長椅子に座っていた。
「あ、ミファー!」
向こうから、ウルボザさんがこっちに来ている。その顔は、焦りと不安、心配で包みこまれていた。
「ウルボザさん!」
「リーバルさん…大丈夫?」
「それが…どんどん悪化してくるばかりで…」
「そっかぁ……」
「ありがとう。後は私でしとくよ」
「ウルボザさん、疲れたでしょ?」
「おや、それはありがたいね。取り敢えず桶に入った水があってリーバルの額にタオルがのってるから微温くなったら変えてあげてね。あと、机の上に箱が置いてあるんだけどその中には飲むゼリーが入ってるから目が覚めたら食べさせといてね。」
「うん!分かったわ!」
「リーバルに何か異変が起きたらすぐに呼ぶんだよ?」
「うん、ありがとう!」
「それじゃあ、よろしくね」
「は〜い!」
〜リーバルの部屋〜
「お邪魔します…」
リーバルさんのお部屋は物が全然無くてスッキリしていた。リト族の模様の絨毯、壁にはオオワシの弓と英傑のスカーフがかけられていた。棚にはヒンヤリソウの消臭剤や香水が置いてあった。
「(必要最低限以外、持ってこないんだな…)」
そう思いながら私はリーバルさんに近づく。ベッドで寝ている彼はとても苦しそうだった。
そう…彼は赤恐病にかかってしまった。昨日の戦いで不幸にも赤い月が現れた。英傑の皆も兵士も普段から赤恐病の薬を塗ったり飲んでいたから、大丈夫だったんだけど…リーバルさんだけ薬が効かなかった…。
「リーバルさん…大丈夫?」
小刻みに震える彼の大きな手に私の小さな手を置いた。
「……寒い…??」
いつも強がっている彼が弱っていると、何か変な感じになる。なんだろう…無理しているのかなって…余計な事考えちゃうの…
「…………ミ…ファー……?」
リーバルさんが薄っすらと目を開けて私を見てきた。手は指がほんのちょっとだけ曲がっている。握っているつもりなのか、ただ力を抜いているだけなのか……
「あ、ごめんね。起こさせて…寝てていいよ」
「うう……ん……ぜ…んぜ……ん」
もう、消えてしまうんじゃないかなっていうくらいに声も体も全て弱っている…
「無理して…喋らなくていいよ」
「来て……くれて……あり…がと…」
「えっ!?ええっと……うん!」
「よい……しょ………」
リーバルさんが起き上がろうとする。けど…赤恐病のせいか、リーバルさんの体を支える力は限りなく少なくて、すぐ崩れてしまった。
「あ、起き上がらないで横になってて!もっと悪くなるよ」
「起き………上が……る……の…」
リーバルさんは私の言う事も聞かずに私の手を握りながら起き上がった。……本当に何がしたいのかな…
「えっ…………へへ……」
「っ!?/////」
リーバルさんが私の手を両手で持ってほっぺにスリスリとした。その顔は彼からは到底想像できない何とも可愛らしい笑顔だった。
「リ、リーバルさん…?どうしたの…?」
「えっへへ………ミ……ファー……」
さっきよりも沢山スリスリとして、上目遣いで私の名前を呼ぶリーバルさん。
昔、シドも風邪を引いたとき、よく私にしてきた。シドは風邪を引いちゃうと甘えん坊になってしまう。もしかして…リーバルさんもそのタイプなのかな…少し信じられないけど……
「えっ……………へへぇ…………」
とても可愛すぎる……だけど相手は病人だから安静に寝てもらわないと困る…
「えっと………リ、リーバルさん……」
「ん?」
「えっと……その……は、離して……もらえる…かなぁ……」
「え…あ、そうだよね…ごめんね……」
リーバルさんは、たまにとても分かりやすい。今だって、肩をストンッと落として眉も下げてる…完全に悲しい時の顔だ……
「あ、えっと…もう少し、触っててもいいよ」
「えっ…離してって…」
「あれは無し!!!」
「ヤッター!!」
リーバルさんはそう言って私の手をまた握り始めた。……可愛い…可愛すぎる…目の前に…天使がいる……この私の気持ちを誰かと共有したい……
「スー…スー……」
あれから30分くらい経った。リーバルさんは寝てしまって、私はまだリーバルさんの可愛さに浸っていた。
「(たまにしか見せない素直が本当に好きすぎる…よく言うツンデレってやつね〜!普段、厳しい感じでいるから皆、恐怖心持っちゃうんだよな〜…でも裏ではとても優しいんだよね。意外と礼儀がいいし、英傑の皆のこと大事にしてるし…リト族の女性は殆どリーバルさんに好意を持ってるって聞いたことあるけど……人気なんだなぁ……。そういえば、リーバルさんって好きな人いるのかな?今度聞いみよーっと!」
「あれ?寝てる…」
要約リーバルさんが寝てる事に気付いた私はタオルを水で濡らしてリーバルさんの額に乗せた。
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