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夕暮れ
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「…あんな人、いましたっけ」
ある日の講義中、日本がふとつぶやいた
「誰のことアル?」
「ほら、右の方に座ってる、」
中国たちと同じ列の右の方、少々離れているが、顔に見覚えがない。あんなやついただろうか。
かと言って、2人はそんなに友好関係が広いわけでもなく、同じ学部でもまだ話したことない人もいる。
でも、なんとなく違和感がある。こんなに全く身に覚えがないなんてことがあるだろうか。しかも二人とも。
じーっと見ていると、日本に軽く小突かれた。
「僕が言い出したことですけど、そんな見ないでください。怪しい人みたいですよ」
それもそうかと思い、目線前へと移す。
だがその日の講義は、なかなか頭に入らなかった。
「あなた全然ノート書いてないじゃないですか」
「あーそうアルね」
講義が終わり、昼。日本は我のノートを見て怪訝そうな顔をしていた。
「…そんなに気になるんですか、あの人」
「…あー、まあそうアルね」
「じゃあ話しかけてきたらどうですか?」
「いや、なんかそれは…」
「まあ、ならいいです。お昼、食べに行きましょう」
「何頼むつもりアル?」
「んー、あっ今日の日替わり定食鯖の煮込み定食です!」
「それ好きアルね、」
「悪いですか。そういうあなたは何頼むつもりです?」
「あー、それうまいアルか?」
「鯖の煮込み定食ですか?もちろんですよ!」
「んじゃあそれにするアル」
「じゃ、行きましょ」
本人に自覚あるのかは分からないが、我が鯖の煮込み定食にする、といった瞬間明らかに目が輝いていた。そんなに嬉しいアルか。
まあこいつ食べ物にはうるさいアルしね。
食事を受け取り席につく、昨日の帰りに三毛猫を見たとか、教授が階段でつまずいてたとか、他愛もない話をする。
適当に喋り適当に笑う、それが楽しかった。
「まーた2人で食べてんの?」
「…相変わらず仲がいいな、」
食事をしていると、同じ大学の友人、アメリカとロシアが隣の席へやってきた。
「ん!お二人もお昼ですか?」
「まあな、でもこいつと食べたかったじゃねぇ」
「俺だってお前とは食べたくねぇ」
「相変わらずそっちは仲悪いアルね」
いつものように喧嘩する2人に少し呆れる。よく飽きないものだ。
「他の席空いてなかったんだよ、」
「仕方なく!仕方なくだ!」
必死で弁明する2人に日本が困ったような笑いを返す。
2人も我よりは年下とはいえ、日本と同い年と思えないほどまだまだガキだ。
隣で2人が食事を食べ始める。なんやかんや息ぴったりで相性良いのではないかと思ってしまう。
「あー、お腹いっぱい」
「…お前は食べ過ぎだろ」
食事が終わったタイミングを見計らい、話しかける。
「お前ら、パーカーかぶったちょっと背低い、あ、日本よりは背高いアルが、ちょっと猫背のやつ知ってるアル?我らと同じ学部アルが、」
「…そんなやついたか?」
「お前らが、知らなくて俺らが知ってるわけなくね?違う学部だし、」
「念のためアル、サークルとかで関わりあるかもしれないアル」
「てか実物見ないとわからん」
それもそうかと諦める。何か有益な情報はないアルか…
「あ、あの人じゃないですか?」
そうつぶやいた日本の視線の先には噂のあいつがいた。
「あいつか?」
「見たことねえな…」
「やっぱりそうアルか、」
「まあそんなやつの1人は2人いてもおかしくはないんじゃね?」
「まあ、そうですよね!考えすぎかもしれません」
そうか、そんなものなのだろうか。
違和感は消えないが、日本を不安にさせても悪いだろうと思い、自分の中で納得させることにした。
「ふぁー、疲れましたね」
「そうアルね、」
1日も終わり、帰路に着く。いつも通り帰ろうとすると、門の前にあいつがいた。
いづるも気づいたのか少し体をこわばらしたが、すぐに警戒をとき、
「さ、帰りましょ」
と手を引いてきた。だけど、突然
「なあ、」
びくりと体がはねる、あいつが声をかけてきた。
「何でしょうか?」
いづるが戸惑いつつも笑顔で返す。
「…覚えてないのか。」
「えっ、と、何のことでしょうか?」
そいつが息を詰まらせる。
「‥まずお前の名前は何アル。名乗るがヨロシ、」
「…韓国、だよ」
「韓国さんですね!僕は日本です」
「知ってる」
「えっ、」
律儀に自己紹介を返した日本に対して、そいつ──韓国はストーカーのようなことを言った。初めましてのはずなのに。
「おい何アル。なんか用があるならちゃんと言うがヨロシ。」
日本を庇うようにして前に立つ。
「、、じゃあな」
「あ、おい!」
何だったんだ、突然話しかけてきて、意味深なこと言って、走り出して、意味が分からない。
でも──あいつを知ってるような気がする。
いつどこで?何も説明できないだけどそんな気がする。
「何、だったんでしょう」
不安そうな顔して日本がつぶやく。その頭をわしゃわしゃとなでる。
「わっ、何ですかもう〜」
「心配することない、大丈夫アル」
すっかり頬の緩みきった姿を見て安心する。
まだ何も分からないが、何かあっても、我が守ろう。
二度とは失わないように、日本と並んで帰った。
コメント
1件
読み終えました!第2話、ぐっと引き込まれましたね。講義中に突如現れた「韓国」という人物――見覚えがないのに、日本を知っていると言い放つ。その不気味さと、中国が「二度とは失わないように」と日本を守ろうとする決意の対比がとても良かったです。この世界の「覚えていない」の背景が気になるなあ。次話も楽しみにしてます!