テラーノベル
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そろそろ浴衣を出そうかなと思う今日この頃。
苔むした飛び石。静かに揺れる草花。
穏やかに時を刻む庭を駆け抜け、騒々しく扉を開ける。
「にっほ〜〜ん!俺だぞ俺俺〜〜〜」
シャワシャワと、表で蝉が返事をした。
しばらく返事を待ったものの、家の奥からは何の気配も返ってこない。
「…………マジか。」
肩を落としながらも、ずかずかと敷居を跨ぐ。
床板の木の匂いがやわらかに鼻をくすぐる。
日本、と呼びかけてみるが、生憎家主は不在のようだ。
仕方がない。
一息ついて、今のソファに体を預ける。
古びた布ばりが少し軋んだ。
障子越し、傾いていく日を眺める。変わりゆく色合いを目で追ううち、瞼が重くなってくる。
気がつけば、俺の意識はソファに深く沈んでいた。
***
スペインさん、と聞き慣れたささやき。
足元が沈む。目を開くと、黒い宝玉がこちらを見ていた。
「もう……勝手に入らないでください。」
ぷくりと膨らんだ頬が赤い。
照れ隠しか、と茶化すと、威嚇するように眉間にシワが寄る。
アクビで滲む視界の中に、いつもとは装いの異なる日本が映った。
「………その服、珍しいな。」
「あぁ……丁度お祭りに顔を出してきたところなんです。」
「ふぅん………それ、着物か?」
日本はたっぷりとした袖をひらりと揺らし、浴衣です、と言った。
「まぁ、夏版の着物と思っていただければ。」
そう語る彼の襟元が空調に煽られ、チラリと胸元を見せる。
つ、と目を細めた。
「スペインさんきっと似合いますよ!着てみますか?」
キラキラと輝きを放つ頬に触れ、冗談めかして首を振った。
「いいや?その腰布の解き方だけ教えてくれ。」
「…………帯ですよ、変態。」
ぷい、と日本が顔を背ける。
まっすぐな骨の隆起が、生々しく彼のラインを強調している。
白い肌をぴっとり包む、深い藍色。
微かに銀に光る帯に包まれた腰は思っているよりずっと華奢で、密かに生唾を飲んだ。
きちんと整えられた結び目は、言葉もなしに日本の性格を物語っている。
汗で張り付いているのだろうか。
スリットのような部分から、やわらかそうな太ももが覗いていた。
ただでさえ触れたくてたまらない薄い肩は、色香を纏ってツンと尖っている。
ソファから身を起こし、彼の背から腕を回した。
「拗ねてくれるなよ〜日本〜。」
「変態さんは黙ってください。」
雀の嘴のようになった唇を撫で、上目遣いでごめんと謝る。
騙されないぞと逸らされた目を引き戻すように、敏感な下腹部にそっと手を這わす。
そしてくるりと帯を回し、結び目に手をかけた。
「ちょっと………。」
咎めるような調子の声。
しかし俺は、背中越しでも伝わる胸の高まりを知っている。
「ん〜〜?」
先ほどと同じ表情を作ると、日本は真っ赤になって目を逸らした。
本当に俺の顔が好きらしい。
しばらく、布の擦れる音が響く。
人肌よりも少し冷たいその布は、複雑な構造をもって俺を苦しめた。
カリ、と結び目を引っかくたびに日本の肩がびくりと跳ねる。
「………結構、かっちり結んでるんだな。」
低く押し出した声が、自分でもわかるほど熱を帯びていた。
「………結んでいるだけなので。」
恥じるように背中が縮こまる。
それに引っ張られるように、たどたどしく布を繰る手がやけに恥ずかしくなった。
「………俺以外に何も見せないなら、それでいい。」
裏返すと、くたりと布の端が垂れた。
更に奥へと自身を進める。
爪が掠ったのか、ざり、と音を立てて指が穴へと沈み込む。
名残惜しそうに絡みつく最後の結び目に手をかけて、ぐっと指先を押し込んだ。
「あ…………。」
日本の背がふるりと小さく震えた。
きゅっ、と帯が夕闇に溶けるように形を失う。
「………いけたか?」
「ん……………。」
静かな首肯。濡れた瞳がこちらを振り向く。
「スペインさん………。」
向かい合うよう体を動かすと、焦らされ続けた熱に耐えきれなくなったのか、日本はそっと襟ぐりを開いた。
熱をはらんだ笑みが欲をそそる。
「日本。」
そっと布の隙間に手を差し込んで、外気のもとへと肌を晒す。
名前を呼び合って、深く深く求め合う。
うっすらと足にかく汗を感じながら、喜びを宿した嬌声に応えてやる。
いつしか、地平線へと日は溶けていた。
(終)
コメント
2件
🇪🇸🇯🇵 大好き ~ 😭😭💞 よほど顔がいいのだろうな .. 🫠💞直視できない 顔を 是非見たい 🤔 やっぱり 浴衣とか着物ってえっちだよね 🥰🥰 体のラインがグッとでてて すごく良き👍💞