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――走っていた。
オリバーは、
ジップとエドワードと並んで、
校舎の廊下を必死に逃げていた。
どこに向かっているのかは、
もう分からない。
ただ、
立ち止まれば終わる
それだけは、全員が理解していた。
息が荒い。
足音が重なる。
そのとき――
職員室の前で、
空気が変わった。
「……あ」
オリバーの喉が、
ひくりと鳴る。
そこにいた“邪”は、
見覚えがありすぎた。
「ク……クレア?」
その姿は、
かつてのクレアだった。
自分が、
何度も笑った相手。
何度も追い詰めた相手。
――死に追いやった相手。
両腕は、
邪の力で鋭い形へと変質している。
背中からは、
二本のアーム。
エドワードのドローンの部品。
かつて、図書館で
クレアを掴み、
落としたときに使われたもの。
それが、
生き物のように、
不気味に動いていた。
「……逃げろ」
誰かが叫んだ。
三人は、
反射的に走り出す。
――だが、遅かった。
クレアが、
邪の力で宙を滑るように迫る。
次の瞬間、
エドワードが引き離された。
悲鳴が、
途中で途切れる。
オリバーは、
振り返らなかった。
振り返れなかった。
背後で、
何かが終わる音がした。
直後、
邪の気配が増える。
エドワードの身体は、
そのままでは、
終わらなかった。
邪がまとわりつき、
歪んでいく。
背中に、
工具のようなものが形成される。
――クレアの、しもべのように追従する。
「……くそっ……!」
オリバーとジップは、
必死に走った。
そのとき。
ひらり、と。
紙飛行機が、
空を切って飛んできた。
「……っ!」
ジップが、
とっさにオリバーを突き飛ばす。
紙飛行機は、
すべて――
ジップの背中に突き刺さった。
ジップは、
その場に膝をつく。
息が、
急速に弱まっていく。
オリバーが駆け寄ろうとした。
「来るな……!」
ジップが、
必死に叫ぶ。
「弟を…… チップを……頼む……」
それだけ言い残し、
ジップは動かなくなった。
「……ジップ……!」
だが、
悲しむ暇はなかった。
邪が、
ジップの亡骸にも絡みつく。
背中に、
禍々しい紙飛行機が形成される。
また一体、
配下が増えた。
オリバーは、
歯を食いしばり、
チップの手を掴んだ。
「走れ!!」
チップは泣きながら、
それでも走った。
オリバーは、
力の限り走り続けた。
息が切れても、
足が震えても。
――止まれば、
次は自分だ。
そして何より。
これは単なる逃げではない。
これは、
自分が蒔いたものから
追われている。
オリバーは、
振り返らず、
ただ走り続けた。