テラーノベル
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廓の夜は、嘘の灯りでできている。 豪奢な衣装をまとい、白粉で素肌を隠し、作り物の微笑みを浮かべて男を迎える。ここに本物の情など、何ひとつありはしない。
「おさく、今日も一段と綺麗だねえ」
なじみの客から向けられる羨望の眼差しに、おさくはいつものように、柔らかく、誰の心をもとろけさせるような優しい笑顔を返した。
「おまいさんにお会いできるのを、今か今かと待っておりましたよ」
その言葉だけで、男は容易く財布の紐を緩める。今やこの郭で、おさくの名を知らぬ者はいない。不動の一位。その慈悲深い微笑みから、客たちは彼女を生き菩薩のように崇め、恋い焦がれていた。
けれど、宴が終わり、男たちが満足して引き揚げた一瞬の静寂。おさくはふと、部屋の格子窓から遠くの夜空を見つめる。その瞳には、昼間の華やかさが嘘のように、ぽっかりと深い、悲しいような寂しいような影が落ちていた。
「……相変わらず、大繁盛だね」
廊下の影から声をかけてきたのは、二位の遊女、おみこだった。 常に感情を表に出さず、面倒ごとには一切首を突っ込まないクールな女。けれどおさくは知っている。おみこが口では冷たいことを言いながら、廊下で上級の遊女に怯えていた禿を、さっと自分の部屋に引き入れて匿っていたことを。
「おみこ。今日も静かにお仕事?」
「私はあんたみたいに、男を狂わせる才能はないからさ。自分の身の丈に合った稼ぎで十分。……それより、聞いたかい?」
おみこが煙管を軽くトントンと叩きながら、声を潜める。
「最近、客の間で妙な噂が流れてる。一位のおさくは、実は人ならざる化け猫で、夜な夜な男の生気を吸い尽くしているんだってさ」
おさくは、やはり優しい笑顔のまま「あら」と首を傾げた。傷つく様子も、怒る様子もない。
「困った噂ねえ。でも、誰がそんなことを流したのかしら」
「……さあね。私にゃ関係のないことさ」
おみこはふいと目を逸らした。 関わりたくないから口には出さない。けれど、おみこは知っていた。その噂を流している張本人が、三位の遊女であり、おさくの幼馴染でもあるおりんだということを。
おりんは、客をおだてるのが上手く、まばゆい笑顔で男たちを魅了する売れっ子だ。おさくと一緒にこの遊郭に入り、同じ日に見世に出た。 まだ幼い禿の頃、一つの薄い煎餅布団にくるまって、「いつか二人で売れっ子になろうね」と手を握り合い、無邪気に笑い合った仲。しかし、おさくが誰も追いつけない「一位」へと駆け上がっていったその日から、おりんのまばゆい笑顔の裏には、どす黒い嫉妬の炎が燃え盛るようになっていた。
びゃ
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びゃ
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#パラバン
美姫
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コメント
1件
びゃさん、第2話読了しました!うわあ…もう冒頭から郭の空気感に引き込まれた…「嘘の灯りでできている」って表現、すごく好きです。 おさくの表の笑顔と、格子窓から夜空を見る寂しげな眼差しのギャップに一瞬でやられました😭 しかも「生き菩薩」って崇められてるのに、裏では化け猫扱いの噂…辛すぎる。それを優しい笑顔のまま流すおさくの強さと脆さがエモすぎる… そして何より、おりんが噂の張本人で、しかも幼い頃には同じ布団で未来を誓い合った幼馴染だったという衝撃!!「いつか二人で売れっ子になろうね」の回想があるからこそ、今の嫉妬の炎が刺さりすぎて苦しいです…この関係性の泥沼感、続きが気になりすぎる…!