彼女は学園一の美少女と言われているだけあってとても可愛らしい女の子だけど、今は何故か敵意むき出しといった感じで睨み付けてくる。
それにしてもよく僕の名前を知ってたね。
クラスメイトとはいえまともに話したことなんて一度もないはずなのに……いや待てよ。
彼女の後ろにいる数人の女子生徒たちはどこかで見たことがあるぞ。
というか彼女たちは以前、西園寺さんの取り巻きをしていた人たちじゃないか。
ということはこの人たちは今現在進行形で彼女に付き従っているということなのかな? うーん、だとしたら面倒くさいことになりそうだ。
とりあえずここは大人しく従っておくことにしよう。
別に喧嘩をしに来たわけではないんだし、穏便に済ませられるならそれに越したことはない。
「えっと、どこへ行けばいいですか?」
「ふんっ、ついて来なさい」
まるで女王様みたいな口調で告げると、西園寺さんは踵を返して歩き出した。
そのあとに続いて取り巻きの皆さんも続く。
ちなみに僕もその後ろについて行くのだが、その際にちらりと背後を確認すると、案の定というべきかそこには一人の女子生徒の姿があった。
彼女はこの学校における風紀委員の一員であり、その役職に就いているだけあって真面目な性格をしている女の子である。
そして彼女もまた例にもれずに整った顔立ちをしており、肩口にまで伸ばした髪を首元で束ねているのが特徴的であり、どこかお姉さんといった雰囲気がある少女であった。
また背丈の方も高くスタイルも良い方なので、制服を着ていなければ大学生と見間違えられるかもしれない。
「ねえ君、ちょっと待ちなさいよ!」
「……何か悩み事ですか?」
「えっ!?……いや別に何もないよ」
いつの間にか隣にいた少女からの突然の言葉に驚いてしまったが何とか誤魔化した。
この子は隣のクラスにいる僕の幼馴染みであり、昔から一緒に遊んだ仲でもあるのだが……相変わらず表情の変化に乏しい子だと思う。
いつも何を考えているのかよく分からなくて少し怖いけど、決して悪い子ではないんだよなぁ……。
それに可愛いところもあるしね。
例えば今だってそうだ。
彼女は僕の顔を覗き込むようにして見つめている。