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「今日は昨日に引き続き、外でゲームをしたいと思います」


アリスが両手を広げると、広間は大きな噴水広場に変わった。


ここまでの流れは昨日と同じだ。


しかし―――。


『ママー!パパがそろそろご飯食べに行こうだってー!』


目の前を小学生くらいの男の子が駆けていく。


『回れ回れ!ほら!二塁まで行けるぞ!走れ!』


少し離れたところで、中学生くらいの野球部たちが、練習試合をしている。



「これは―――」


尾山があたりを見回す。


「ええ。現実の世界です」


花崎も眉間に皺を寄せたまま、バッターが打ち上げたボールを目で追っている。


「6月19日。あなたたちが死んだ日に、日時を合わせています」


「ーーー映像ってことかよ……?」


キョロキョロとあたりを見回した隆太の膝に何かがぶつかった。


「―――?」


見下ろすとそれは2歳くらいの女の子だった。


隆太の脚の間に転がった小さなゴムボールを取ろうとしているらしい彼女は、隆太の膝に片手をついて、がんばってもう片方の手を伸ばしていた。


「―――さわれるぞ……?」


隆太は彼女が転ばないようにゆっくりと足を開きつつ言った。


「ええ。だから現実の世界なんですってば」


アリスは微笑んだ。


「でも安心してください。皆さんのゲームの邪魔はしないようにプログラムされています。彼らには僕たちが見えている。僕たちも彼らが見えている。でもゲームには支障ありません」


アリスはそう言うと、広場の端にある隆太が名前を知るわけもない武将の石像のところまで歩いて行った。


簡易的なガードレールの向こう側には片側二車線の大きな道路が走っていて、車がビュンビュンと音を立てて行きかっている。


「こんな煩いところで何のゲームやるってんだよ……」


呟いた隆太に微笑みながら、アリスは銅像の足元に腕を付けた。


「これ、なーんだ」


「――――」


3人は鼻を引くつかせながら、アリスを睨んだ。


「……だるまさんがころんだ」



花崎が苦虫を嚙み潰したような顔で言うと、アリスはふっと笑った。



「正解!三つ目のゲームは、『だるまさんがころんだ』です」


「このゲームは、実は鬼の視力や観察力に頼る部分が多いので、公平とは言えません。ですので、少しルールを変えます」

アリスは人差し指を立てながら言った。


「ルールを変える?」

睨んだ花崎に軽く頷いてからアリスは続けた。


「ずばり。僕に背中を見せた人が負け」


「――――」


背中を?

馬鹿かこいつ。だるまさんがころんだの中で背中を見せるシーンなんてないだろ……。


隆太は眉間に皺を寄せた。


「もし、俺たちの誰かが鬼であるあんたに触れたらどうなるんだ?」

花崎が問うとアリスは笑いながら両手を開いた。


「その時は特別ボーナスです。全員、無条件で生き返らせてあげます」


「―――無条件で……?」

尾山が目を見開く。


「つまり、誰も犠牲にせずに、ということか?」


「そうなりますね」

アリスは微笑んだまま尾山を見つめた。


「他に質問は?」


「もし―――」


花崎が口を開いた。


「もし、誰も背中を見せず、誰もタッチすることがなかったら。その時はどうする」


「うーん。それはつまり、ゲームを拒否することと同義ですから……」


アリスは顎に人差し指を当てて考えた。


「よし。あそこに時計台がありますね」

アリスが指さした先には銀色の丸い時計台があった。


「あの時計が正午を差したときまで勝負がつかなければ、その時は連帯責任。全員に自殺として死んでいただきましょうか!」


「―――!」

事も無げに言うアリスを花崎が睨む。


―――待てよ。わかんなくなってきた。


隆太は頭を抱えた。


尾山が言うように誰かが鬼であるアリスに触れたら、全員無条件で生き返る。

これで得をするのは、花崎を生き返らせたい尾山だ。


花崎が言うように、正午までにだれも負けず、誰も勝たなければ、全員が自殺。

自分の命を無駄にすることにはなるが、尾山を自殺で殺したいと考えている花崎の願いは叶うことになる。


どっちだ。

どっちを選べばいい?



話に信憑性があるのは、自分を刑事だと言った花崎だ。

自分ではなく、隆太を優先させて生き返らせてから、という考え方が、すでに常人ではない気がする。


しかし尾山が言った、「法の下でちゃんと裁きを受けさせたい」という言葉も、殺人犯からは出てこないように思う。



―――わっかんねえ。


隆太はぶらんと脱力した両手を垂らした。



―――俺、馬鹿だから。


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