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「あ、よろしくお願いします……」
私は蚊の鳴くような声で挨拶するのが精一杯だった。
成瀬先輩は、私よりずっと背が高くて、スラリとした手足がジャージの上からでもわかる。凌先輩と並ぶと、まるで雑誌の表紙みたいに絵になっていた。
「凌、あんまり新入生を驚かせちゃダメだよ? ……あ、君。さっきからずっと一生懸命見ててくれたよね。テニス、興味あるの?」
成瀬先輩が優しく微笑みかけてくれる。でも、その余裕のある態度が、今の私には一番眩しくて、苦しい。
「あ、いえ……その……」
「こいつ、マネージャーやりたいとか抜かしてたんですよ。バカですよね」
隣で黙っていた遥が、突き放すように言った。凌先輩は驚いたように目を丸くする。
「えっ、紗南ちゃんが? それは嬉しいな。なあ成瀬、どうかな」
「うーん……気持ちは嬉しいんだけど、今年はもう人数が足りてて。それに、うちは三年の引退までかなりハードに追い込むから、初心者の子が今から入るのは、ちょっと厳しいかもしれないかな……」
やんわりとした拒絶。
凌先輩は少し残念そうに「そっか……」と呟いて、私の頭をポンと叩いた。
「残念だったね、紗南ちゃん。でも、応援に来てくれるだけでも力になるよ。な?」
先輩のその言葉が、とどめだった。
私は『チームの一員』になりたかったのに、結局はただの『近所の妹』。外側の人間なんだ。
「……ですよね。急にすみませんでした!」
私はたまらず背を向けて走り出した。
後ろから凌先輩が「紗南ちゃん!?」と呼ぶ声が聞こえたけど、止まれなかった。
校舎の影まで来て、ようやく立ち止まる。
悔しくて、情けなくて、視界が滲む。
「……だから言っただろ。三秒で振られるって」
すぐ後ろから、呆れたような、でもどこか落ち着いた遥の声が追いかけてきていた。