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奇蹟あい
2,184
#勘違い
かませ犬S
455
#男主人公
パラレル・ゲーマー
173
にとり
1
地を揺るがす断末魔と共に巨大な何かが崩れ落ちる。
異世界の邪神を、数多の勇者、英雄、聖女、賢者、剣聖、魔女と共に戦い、俺は最後の一撃をお見舞いした。
しかし、護りたかった恋人も友も国も世界も既に失われてしまっていた。
もうこの世界には誰も残っていない。
血の海に立っているのは俺唯独り。
こんなのは勝ちではない。勝った喜びも何も無い、皆と共に死ぬべきだった。
許されるなら平和な世界で、みんなと普通に生きてみたい。
嗚咽を漏らし膝をつくと、そのまま仰向けに倒れる。
赤黒く染まった曇天な空を仰ぎ見ていると
力が抜け一切の力が入らないことに気づく。
身体が光りに包まれている。その光は邪神から虹色の光が立ち昇っていて、その一部が俺に伸びていた。
半分以上が崩れ塵となっているのに、光が人形を取ろうとしている。
こいつまだ生きているのか?
流石埒外の存在。
苦しい意識が飛ぶ、立ち上がれない、力が入らない。
しかし、もうどうでもいい。
邪神が塵となり、光が形造られるのを見ながら意識を失った。
死ねば、またアイツラに会えるだろう、待っていてくれ、迎えてくれ、俺は頑張ったぞ…
***
何もない、光の中に俺は漂っていた。
俺の核である魂だけ。
人の姿すらしていない。
人は死ぬとこんなところに来るのだろうか…
あいつらもここに居るのだろうか…
『魂なき木偶に魂を宿らせ給え…』
その声が、魂に絡みつく。
(なんだ?俺に絡みつくな!俺はもう…)
周囲の光が粒子となって上へと流れていく。
――違う。
強い願いが、俺を下層の世界へと引き込んでいくんだ。
やめてくれーーーっ!
………
重さを感じる。
重力に支配された牢獄のような感覚。
目の開け方を思い出せない。
パァアン!
(手を叩く音?)
耳が受け取った音に驚き開け方を忘れていた目が開く。
何だ、何が起こっている?
叩いた誰かの手が見える。
周囲を眼球だけ動かして周りを見る。
暗い部屋に、小さな灯りが一つ…
俺は寝かされているのか?
死んで魂になっていたのは夢だったのか?
俺はまだ生きている?
ハッ!
顔を覗き込まれる。手の持ち主か?
(お、男が俺を覗くな!!)
――んん?
(か、身体が動かないぞ。声も出せない)
「ははは、成功した?成功したぞ、今度こそ桜花さんに。桜花さんに魂を宿らせることに」
(な、何を言っている)
「起きあがれ、そして俺に全てを見せよ」
(なんだ!か、身体?体が勝手に動く!)
白い肌が目に入る、小さな手、視線が低い背が低いのか?き、胸部が重い、長い髪がまとわりつく。
(ちょっと待て!)
なんだいったい。これじゃ女性の身体じゃないか…
いや、見える範囲でだが、どう見ても女性の身体だ…
(え?えぇぇぇ?)
俺は男だぞ、男…俺の身体は?え!あれ!
俺は、男の前に立たされた。俺の意思では身体は動かせない。
俺を立たせた男は白いコート?を着ており二十代後半に見える。痩せて頬がこけていて幽鬼のようだが。健康なら精悍な顔だろう。
男は涙を流していた。
俺の手を両手で取ると跪き、額に当てて泣き崩れる。
裸の女の前に泣いて跪く男の絵面だ。言ってて悲しくなる。
「あああ。やっと、やっと…会えた。また会えた!
桜花さん
もう決して離すものか」
(桜花とは名前か?お、俺はブレイクという名だぞ…)
なんだ、この俺を見つめる、慈しむような表情は?恋慕なのか?
(ちょとまて俺は男だぞ!巫山戯ろよ)
男は立ち上がると、俺を抱きしめる。
(おいおいおいおい!嫌だぞ、お、俺は男なんだぞ!)
え、え、え?ちょ…
(だ、誰か助けて!)
ドンドンドン ドンドンドン
「博士!ドアを開けろ!」
突然、けたたましく扉が叩かれる。
「く!」男が呻く。
「桜花さん、貴方だけは奴らに渡せない…」
助かったのか?
(いや、違う!気配が悪意だ)
ダン
ダン
ドガン!
ほの暗い部屋に、光が差し込む。
扉が壊されたようだ。
焦げ茶色の同じ服を着た男たちが何人も入ってきた。
何か筒のようなものをこちらに向けている。
「ほう、これが最新作か?」
先頭の男が俺を見て呟く。
(最新作ってなんだ)
「ち、ちがう、これは違うんだ」
「直ぐに受領するとしよう」
「止めてくれ!お前たちには既に4体も渡しているじゃないか」
「ああ、とても良い性能だ、戦場で役に立っているよ」
「なんてことを…」
「おい、早く運び出せ」
「止めてくれ、この娘この娘だけは連れて行かないでくれ!」
男が俺の前で両手を広げて俺を守ろうとする。
だが…
焦げ茶服の男たちは筒の反対側の木製の部分を鈍器のようにして男を殴る。
「ガァッハァ!」
男が血を撒き散らして、俺の足元に蹲った。
裸の女の前に血を流して跪く男の絵面だ。言ってて悲しくなる。
「おい!!博士を傷つけるな軍にとって大事な人なんだぞ」
「は、すみません!」
「しかし、博士の造形品は美少女ばかりですな。実に美しい…おや?
この作品の顔は…」
先頭の男の表情が強張る。見覚えのありそうな表情?
「…運ぶ以上触っても問題ないよな」
「当然だろ」
男たちが俺を囲み、下卑た顔の男の手が、俺の顔や腕を撫でまわす。
「これが造りものなんですか…人間と遜色、いや。それ以上に美しい、だが造り物の美しさでもない…」
(うぇ、気持ち悪い触るな!どこ触ってるんだ。くそ、身動ぎすらできない!)
愉悦に浮いた男たちの顔が俺の顔に迫る。
(何をする気だ!)
血の気が引く。
「お、桜花、ロック解除、逃げろ!」
博士と言われた人物が血を撒き散らし俺に向かって叫んだ。
直立していた俺は、博士の声を受け取ると糸が切れたかのように身体が沈み込んでしまう。
「おっとと」なんとか足で踏ん張る。
手が、足が俺の意思で動く。
俺は立ち上がると、焦げ茶服の男たちを睨みつける。
「こいつ!逆らうのか!」
「状況は判らんが、お前らの行動は俺を怒らせるに十分だ!」
俺は、寝かされていたベッドのシーツを引っ張ると、自分に巻きつけた。
恥ずかしいからという感情ではなく、それが自然と思ったからだ。
—―不思議だ…
焦げ茶服の男たちが、俺と博士に向かって、鈍器部分で攻撃を加えようとする。
俺は足払いから、掌底で顎を狙う、掌にグシャリという感覚が伝わる。
「え?」
「貴様、木偶風情が!」
集団になって俺へ攻撃しようと、襲いかかってきた。
俺は跳躍気味に先頭の男に蹴りを喰らわす。
他の男を巻き込み5人が壁まですっ飛んでいった。
(なんだこの身体は?魔法強化もしていないのに…)
「博士を確保しろ!木偶は多少壊しても構わん」
指揮官風の男がそう言うと、筒がこちらに向けられる。
パン!
パン!
ガン! バァン!
何かが炸裂した音とともに、煙が吹き出し、こちらに飛んでくるものがある。
俺はそれを目で追うと、頭を横に左肩を後ろに、太ももを横にズラす。
後方の壁にガス、ギン、ガン、ガスと何かが穿たれ、額に迫っていたものは右手で掴んでいた。円錐のような何かだった。
焦げ茶の男たちが驚愕の表情を浮かべる。
「なんだ、なんだこいつは」
「早く、逃げるん…だ」
博士が後ろで叫ぶ、俺は後方に戻ると博士を拾い上げ、開け放れた扉に向かって駆け出す。
「絶対逃がすな!大事な兵器だ。お前らの首が飛ぶぞ!」
扉を出ると、朝日が昇るところのようだった。
四方を壁に囲まれた広い敷地であった。見たこともないような建物が幾棟も建ってる。
俺は壁に向かって走る、躊躇している暇はない。
走りがけ扉の出口に
「《エクスプロージョン!》」爆発魔法を放つ。
ズドゥゴゴヴァァァァーーーァーン
俺の意図した以上の爆発が吹き荒れた。
身体強化魔法を唱えると、博士を抱いたまま、俺は壁を越えるために闇夜に跳躍した。
「ちくしょう、こんな身体にされても、俺はまだ生きないといけないのか!」
コメント
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おおお、第1話からめっちゃ熱い展開じゃん!🔥 英雄として全てを失った後の転生、しかも美少女ホムンクルスってギャップが凄いわ。 「俺は男だぞ!」って内心で叫んでるのに、身体が勝手に動いて戦闘爆発とか、もう最高にカッコいいし面白い。 博士の執着も気になるし、この身体のスペックも謎だらけで続きが待ち遠しいわ。 戦闘描写の解像度が高くて、一気に引き込まれた!次話も楽しみにしてる📚