※注意事項は前回と同じです。
🍌side
ここは、どこだろう。
真っ白な、どこまでも続いていそうな広大な場所。
でも何もいない、ただ、自分ひとりだけ。
生命の息吹を微塵も感じさせない空間に、虚しさを覚えた。
光も闇も、そういう概念がなかった。
寒いとか暑いとか、そういうものも一切ない、皆無の、虚無の空間だった。
真っ白な床の上を、スリッパがぱたぱたと間抜けな音を立てた。
寝癖が鬱陶しくて、ふわふわの部屋着をたくしあげる。
どこまで歩いても、
何も、ない。
ここに来る前、必死に思いを伝えてくれた彼はどこに行ったんだろう、
泣いていない、かな。
大丈夫かな。
不意に途轍もない空腹感に苛まれ、意識が現実へと、引きずり戻され、
⛄「…っあ、おん、りー、!!」
ぼんやり、霞む視界の焦点をゆっくり合わせる。
左手だけがやけに熱を孕んでいて、そんな気が、した。
🍌「……、おらふくん、」
乾いた口から紡ぐことが出来たのは、たったそれだけだった。
外にいたらしいドズルさんも心配そうに駆け寄ってきて、
あとの、2人も。
🦍「大丈夫?まだ体起こさない方がいいからね、無理しないで」
優しすぎる言葉に戸惑うように視線をきょろりと動かせば、過労だと告げられた。
栄養失調、睡眠不足。
いくらあの人に恋焦がれていたとはいえ体調管理が不十分なのは本当に不甲斐ない。
🍌「…ごめんなさい、色々」
ぽつり、雨の音に紛れて言葉を紡ぐ。
ごめんなさい、自分ばかりで、独りよがりで。
みんな、ごめんなさい。
🐷「あ、ちょっと、すみません」
軽やかな音がLINEの通知を告げる。
スマホに目を落とした彼が、ドズルさんとおらふくんに向かって小さく手を招く動作を見せた。
無表情に廊下に連れられて行くドズルさんの跡を、おらふくんが追いかける。
振り返って、彼はどこか寂しそうに笑った。
🍌「…、」
どうしようもない真っ白な感情が、2人の間を締め付ける。
彼の紫の瞳が、黒いレンズ越しに揺れる。
不意に彼は緩慢な動作でそれを手に取ると、かちゃんと音を立ててそれを外した。
🍆「ごめん、俺から、1個話したいことがあって」