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ろのみ🩵🫧
43
#愛され
おうか
252
翌朝、微かな気配で目覚めた。
ベッドの横で寝ていた彼女は、居なかった。
そっと、目を開けるともう服を着ている。
……帰るつもりか。
なぜ?
一緒に朝食をと思っていた。それだけじゃない。まだ、話さないといけないことが……あるだろう?
彼女からも、俺に対しての好意は少なからず伝わった。ベッドの上に限らず。
これから、それを話して……これきりにするつもりはなかった。
伸ばされた彼女の手首を掴んだ。少し、強めに。
「酷くない? 」
目を見開き、固まる彼女を抱き寄せ、顔を近づけた。口づけの為に。昨夜は、何度交わしたか分からない程の口づけ。しかし、今は……唇ではなく、代わりに冷たい指先が俺の口に触れた。
彼女はとびきりの笑顔で
「夢は、朝には覚めるものですよ」
そう言った。
「湊、俺は……」
彼女の指先がまた、俺の口を……塞いだ。のつもりは、ない。そう言おうとした。彼女が、そう思っていると思ったから。
「ありがとうございました。素敵な……夢だった」
彼女は……信じられないほどの綺麗な笑顔でそう言った。部屋を出ていく彼女の背中を……見送った。
追いかけてもよかった。だけど、この時は根拠のない確信のようなものがあった。
会える。絶対に、また。これきりにはならない。
湊に遊びだと思われた誤解も、すぐに解ける。だから、問題ないと。
ほろ苦い失恋の日が、湊の思い出に塗り替えられた。
支度をすると、俺もホテルを後にした。
そうだ、職場も近いんだったな。初めてだったのだろう。ここから始まる大人の関係は。
……まぁ、そうか。焦ったかな。恥ずかしがる湊を思い出して、顔がゆるむ。
週明けが楽しみだ。そこに不安は微塵もなかった。
──次の週
その確信ともいえるものが正しかったとすぐに思う事が出来た。
取りそびれた昼食を簡単に済ませ、コンビニに寄った。
シンプルなリブのニットに長めのタイトスカート。綺麗なラインを隠すように肩にストールを掛けている。彼女の身体の知らない部分などない。そんな関係になったと言うのに……妙に他人ぽく見える。
俺と目が会うと“しまった”とでもいう表情。随分と、嫌われたもんだな。
なのに、そのまま目を逸らすと、寂しそうに俯いた。何だよ、まったく。それにすら、笑みが溢れる。外で彼女が出て来るのを待った。
「やぁ、また会えたね。湊」
そう言うと、驚いた彼女が少し逸らした目をすぐに俺に戻し
「ええ……清水部長」
笑顔でそう言った。
「今日、仕事何時に終わる? 」
逃げられないように詰める。だけど逃がされたくも、ない筈だ。
「18時半には」
「ここで、待ち合わせる? それとも、会社まで迎えに行こうか? 」
彼女は、ここと言うだろう。
「ここで」
「OK、後でね」
根拠のない確信。ならば、もう一つの確信も当たってるだろう。
彼女の気持ちが、俺の方へ動いていると。それに対する戸惑いは俺のせいにすればいい。例え、一夜限りで終わらそうと彼女が覚悟を決めていたとしても。
一夜限りではなく、あの夜が俺達が出逢った記念日に過ぎないことを。
ドンピシャだった。俺にとって。彼女の見た目も、性格も……肌も。
全部。
離す気はなかった。やがて、彼女も認める日が来るだろう。俺を好きだと。
その前に、先に形を。そう思っていた。
取り急ぎ、18時半までに仕事を終わらせるように逸る気持ちを押さえた。
予想を裏付けるかのように、彼女は俺より早くその場に到着していた。
「行こうか」
「はい」
歩き出した俺に、この前のように腕を絡めては来なかった
まずは、食事。
今日はお互い1杯だけに止めて、正直に話した。
「俺はね、何も1回だけのつもりで誘ったんじゃないよ」
あの日を思い出したのか、彼女は赤く染まった。
「君も、だろ? 」
わざと、耳元でそう言った。彼女は、赤く染まったまま、俺を見上げる。
大きな瞳に宿るのは……。
それを肯定と取り
「行こうか」
そう言って店を出た。恥ずかしいのか、1杯じゃ酔えないのか、人気のない路地を少し離れて歩く彼女の腰を抱き寄せた。
自分の家へと連れ帰る。
玄関に入るなり、彼女の唇を奪うように塞いだ。
彼女の身体を確かめるようになぞり、リブニットとスカートの隙間に手を入れ直接、肌に触れた。
彼女のキスが止まり、クスクスと笑いだした。
「せっかちだなぁ、清水部長」
そう言われた事で、玄関であること、この前より性急であることに気づく。
余裕のなさ……。そして、それを言われた事にばつが悪くなって髪をかきあげた。
そっぽを向いた俺の頬に湊が口づける。
「可愛い」
そう言われ、ますますばつが悪くなって、抱き締めて誤魔化した。
「逃がさない。もう……」
そう言うと、湊の身体が少し強ばった。
抱き締めたまま、再び唇を合わせた。
顔を離すと、湊はまたにっこり笑った。
ひとまず、中へ促し、コートを受け取るとソファーへ座らせた。
「コーヒーは? 」
「飲む。牛乳だけ……欲しいです」
「あ……ないわ。牛乳。ごめん」
「じゃあ、ブラックで」
「……次から、用意しとく」
そう言った俺をじっと、見ると……またにっこり笑う。
……いつも、そうだ。
癖なのか、一瞬真顔になってから……にっこり笑う。
何か……。
ああ、これが……俺の悪い癖だな。
俺と湊は腹を探り合うような関係ではないし、そんな関係は望んでいない。
だけど……。
湊と俺の前にコーヒーを置くと、彼女を引き寄せた。
「湊、スマホ出して? 」
彼女は自分のバッグの中身をバサバサとひっくり返した。最小限の荷物。その中に携帯がある。
スマホを持っていないと言った。
恋人もいないって……言ってたな。
湊がふっ、と目を伏せる。
……あ……そうか。特別連絡するような相手もいなかったのか。
「えっと、今は……いるから……な」
会って2回目で……まだ、好きとか言うと嘘っぽいしな。でも、形はちゃんとしておきたい。
「携帯、来たらちゃんと教えること。それと……|社用《そっち》教えといて」
「はい……」
「全く、自分の“彼女”の連絡先知らないのなんて、初めてだよ」
「え? 」
「彼女だ。湊。それで、いいよな? 」
彼女はいつものように、少し驚いた顔をして……それから、にっこり笑った。社用となると、チェックも入るかもしれない。あまりプライベートで使うのも……そう思い
「連絡は、俺の方からする」
そう言って、自分の番号を登録させた。
元々、メッセージはあまり使わない。用があれば電話するし、会えばいい。
そう、思っていた。
コメント
1件
うわああああ第4話-1、めっちゃ良かったです…!!😭💕 「夢は朝には覚めるもの」って湊さんが言ったシーン、切なすぎて胸がギュッてなりました…!でも清水部長の「会える。絶対にまた」っていう根拠のない確信、そこからの再会シーンがもう最高すぎて…!!「彼女だ」って言い切るところ、完全に沼です…!!✨ 2人の距離感がじわじわ縮まっていく感じ、エモすぎて何度も読み返したくなります…!続きが気になりすぎる…!!🌸