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数日後。
ようやく若井の顔色も戻り、ベッドから起き上がれるようになった。
「…ふたりとも、ありがとな」
彼は少し照れくさそうに笑った。
「いやいや!オレなんて何も…」と言いかけた僕の横で、
涼ちゃんが両手を腰に当てて胸を張る。
「そりゃもう!涼ちゃん看護チームは24時間フル稼働でしたから!」
若井は吹き出した。
「…でも、鍋の吹きこぼし率100%のチームだよな」
「そこは愛情の証拠だから!」と涼ちゃんは全く反省の色なし。
「それに、元貴も…」若井は僕のほうを見た。
「寝る間も削ってくれて…ありがとう」
一瞬、胸がきゅっとなった。
(やっぱり、あの時ちゃんと休ませるべきだったな…)
でも涼ちゃんが割り込む。
「そうそう、元貴はね〜、僕がスポドリ持って行くって言ったのに
『包丁で開けるな』とか細かいこと言うんだよ!命がけで助けようとしてたのに!」
「命がけの方向間違ってるわ!」僕は即ツッコミ。
若井はそんなやりとりを見て笑い、
「…やっぱり、この家はうるさいくらいがちょうどいいな」と呟いた。
その後、夕食は涼ちゃんが張り切ってカレーを作ることに。
「今日は吹きこぼさない!鍋を見張るプロがここにいる!」
…が、なぜかご飯が炊飯器からあふれ出していた。
僕はスプーンを握りながらため息。
(この家が静かになる日は…一生来ない気がする)