テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
こういうドロドロシチュ大好きすぎる、、続き楽しみにしてます‼️
その瞬間ーースピーカーから、
低くノイズが走った。
誰かが息を呑む音が、大きく聞こえる。
『——プレイヤーの皆さま、ようこそ』
無機質で、感情のない声。
男か女かも分からない。
『これより皆さまには、
脱出ゲームに参加していただきます』
『制限時間は——6時間』
ざわ、と空気が揺れた。
『この施設には、
複数の脱出ルートが存在します。ただし』
一拍。
『安全なルートは存在しません』
その言葉に、みことが小さく息を
詰まらせ、こさめの肩がびくりと跳ねた。
『誤った選択、時間切れ、
致命的な判断ミスは——即、
脱落となります』
『それでは。健闘を祈ります』
ノイズ。
そして、沈黙。
——終わり。
誰もすぐには口を開けなかった。
緊張と恐怖が、部屋に張り付いている。
その沈黙を、すちが切った。
「……よし」
声は落ち着いている。
さっきと同じ、いや、それ以上に。
「まず、慌てないで。
今の説明で分かったのは三つ」
指を一本立てる。
「一つ。敵はいない。
少なくとも、追ってくるタイプのやつは」
二本目。
「二つ。選択ミスが死に直結する。
だから勘で動くのはナシかな〜」
三本目。
「三つ。時間制限がある。
つまり、全員で慎重すぎてもダメだね」
全員の視線が、自然とすちに集まる。
(いい。ちゃんと聞いてる)
「で、動き方だけど」
すちは床にしゃがみ、指で簡単な地図を
描くような仕草をした。
「まずは二人一組で行動する。
三人以上は目立つし、
情報共有が遅れるかもだしね」
らんが眉をひそめる。
「二人で大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃない?」
すちは即答した。
「でも、六人固まって死ぬよりはマシ」
一瞬、空気が凍る。
でも、誰も反論できない。
「次に、怪しいルートは一回引く。
行けそうでも、最初は様子見」
その瞬間、こさめが不安そうに
口を開いた。
「……誰が、様子見を……?」
すちは、すぐにそちらを見た。
優しい目で。
「俺がやるよ」
即答だった。
「俺、慣れてるから。
戻ってこなかったら、
そのルートはアウトってことで」
みことが慌てて首を振る。
「え、で、でも——」
「大丈夫」
すちは微笑む。
「28回、こうやって生き残ってきたから」
その言葉に、誰も何も言えなくなる。
(信用、確保)
「組み分けは——」
すちは一瞬だけ、全員を見渡す。
視線が、自然に配置を決めていく。
(……もう、決めてある)
「いるまちゃんとひまちゃんは一緒。
動き慣れてそうだし、判断も早そう」
二人が、わずかに視線を交わす。
すちは見逃さない。
「みこちゃんとこさめちゃん。
初参加同士で、無理しないで情報集め
お願いしたい」
二人とも、ほっとしたように頷いた。
「らんらんは……一旦、俺と」
らんが一瞬、驚いた顔をする。
「理由は?」
「慎重そうだから。
俺と一番相性いいと思う」
——半分は本音。
半分は、計算。
すちは立ち上がり、静かに言った。
「いい?勝手な行動はしない。
戻ってきたら、必ず情報共有」
「俺が戻らなかったら——」
一瞬だけ、言葉を切る。
「その時は、生き残ることを最優先に」
誰も笑わなかった。
冗談に聞こえなかったから。
(……さあ)
すちは心の中で呟く。
(ここからが、本番だ)
ーーー
5⁄23
通路に出た瞬間、空気が変わった。
さっきの広間よりも、静かすぎる。
(……音がない)
足音が、やけに響く。
◆ すち&らん
すちは先を歩き、らんが半歩後ろにつく。
床、壁、天井——
視線は常に動かし続けている。
「……やけに、何もないな」
らんが低く呟いた。
「うん。最初はだいたい、こう」
すちは即答する。
「“探させる時間”。焦らせるための」
角を曲がる。
細い通路の先に、開いた部屋。
中に足を踏み入れた瞬間——
バッ、と
天井から藁人形が落ちてきた。
らんが一瞬、肩を跳ねさせる。
「……っ」
だが、それだけ。
刃も、毒も、仕掛けもない。
紐で吊られただけの、粗末な人形。
(……幼児向けかよ)
すちは内心で鼻で笑う。
「大丈夫。ただの脅かしかな」
「なんだよ……拍子抜けだな」
「そう思わせたいんだよ」
すちは部屋を一周する。
引き出し。壁の裏。床。
——何もない。
ヒントも、地図も、番号も。
(“探しても無駄”って、
最初に刷り込む気か)
◆ いるま&なつ
少し離れた通路。
二人の声が、微かに聞こえる。
「大丈夫だって。深呼吸しろ」
「……うん」
なつの声は、まだ硬い。
彼らの前でも、同じように
突然、壁の隙間から藁人形が飛び出す。
なつが思わず立ち止まり、
いるまが前に出る。
「……これだけ?」
何も起きない。
「子ども騙し、だな」
いるまの声は落ち着いている。
なつも、少しだけ呼吸が整ったようだった。
(……いい。まだ余裕がある)
◆ みこと&こさめ
反対側の通路。
「え、な、なにこれ……」
みことの声が、必要以上に大きい。
目の前で、床から
ぬっと藁人形がせり上がる。
「ひっ……!」
こさめが声を詰まらせ、
思わずみことの袖を掴む。
だが、何も起きない。
「……動かない、よね?」
「……うん。怖がらせるだけ、だと思う」
二人は恐る恐る、人形の横を通り過ぎる。
その先にも、
ヒントはない。
案内もない。
ただ、同じような通路が続くだけ。
(初参加組には、きつい空気だな)
◆ 全体の共通点
罠はある
でも、殺す気がない
ヒントは、一切出てこない
(つまり)
(これはまだ“前半”)
参加者を減らすフェーズじゃない。
精神を削るフェーズだ。
すちは足を止め、らんに言う。
「たぶん、分岐は後から来ると思う」
「今は?」
「今は……」
すちは、静かに言った。
「“何も起きない”ことに
慣れさせられてる」
6⁄23
その瞬間、
どこかで、重い金属音が鳴った。
——次の段階が、動き出す音。
金属音の正体は、扉だった。
各通路の奥が閉じ、誘導されるように
全員が最初の大部屋へ戻される。