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「そんな言葉..もう聞き飽きたよ」
言い方は暗く沈んでいるがルシーカは儚く、消えそうな笑顔で笑った。
「この世に“ルシーカ”という者はいなかった…そうでしょ?…ここで死ねば皆んなの記憶から“私”なんて者は元からいなかった事になる。」
そんな事があってたまるか。
「俺はルシーカの事を覚えていたい。」
ルシーカは唇を強く噛み締めた。
「“英雄”は…!みんな同じ言葉を並べる。そんな言葉に意味はないんだよ!なのにキィニチはまるで“本当”みたいな嘘吐いて..だから私はこの世界に期待してしまって…生きていたら苦しめられる。だから少しでも希望を持たせようとする“英雄”が…大っ嫌いなんだよ!」
本当に…俺に似ている。
過去の自分に会っているみたいで心が痛くなる。子供みたいに泣いているルシーカと幼い俺が合わさり、気が付いたらルシーカを抱きしめていた。
「…..もう..遅いよ…..」
冷たい言葉が響くと同時にルシーカの腕が俺を突き飛ばした。ルシーカの体は黒い繭に包み込まれて行く。晴れた時にはルシーカに感情無く、先程の涙が頬に伝っていた。