完結です。
〜riho side〜
「好きだよ、にし、すき、ごめんね」
震える声で呟くと、それに応えるように西がぎゅっと抱き締め返してくれた。
腕の中で眠る彼女に、何度もごめんねと繰り返した。
あの時素直に気持ちを伝えられなくてごめんね。
苦しみに気付いてあげられなくてごめんね。
いつも迷惑ばかり掛けてごめんね。
沢山苦しめてごめんね。
好きになって、ごめんね。
好きでいてくれて、ありがとう。
あぁ、好きだよ、西。
どれぐらい時間が経ったか分からない。
しばらく、腕の中で眠る西を見つめていた。
「んぅ、、、」
身動ぎをして、夢から覚めたばかりの目が私を捉える。
「おはよ、西」
「んん、ねぇ今何時?」
そう言われて慌てて時間を確認する。
朝の4時半、、。
「4時半、時間やばいじゃん、早く帰んなきゃ。」
「いいよ、適当に言い訳する」
それはそうか。今帰ったところで怪しすぎる。それなら朝に帰って具合が悪かったとでも言った方がまだマシだ。
「髪、触っちゃダメだよ」
「ん?」
「西は嘘つく時髪触るから」
「げ、りほにはほんと隠し事出来ないね。」
そういうことで、またしばらく2人でいられることになった。西はまだ眠そうだし、このまま寝かせてあげてもいいんだけど、
「西、お風呂入ろっか」
その前に、証拠を全部消さないといけない。
「えぇ、せっかくのりほとの匂い、消えるのやだ」
「だめだよ、ばれたらどうすんのさ」
「ふぅん、、、じゃ、髪乾かして?」
「いいよ、じゃあ入ろっか、にこちゃん」
言った途端、西の頬がぷくっと膨らんだ。
「あ、馬鹿にしてる」
「んんー?」
「だってりほ、子供扱いする時にこちゃんって呼ぶもん」
ツンケンな言葉とは裏腹に、ごめんごめん、と頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めた。
これで子供扱いするなって言われてもね。
ーーー
軽くシャワーを浴びて、お互いの髪を乾かしあった。
西の隣が私だったら、毎日こんな事ができていたのかと思うと鼻の奥がツンとして、目が潤んだ。
そんな私を見て西は、ねぇ、と消え入りそうな声で呟く。
「なぁに」
「私のこと、嫌いになっていいよ。」
その言葉が本心からではないことは直ぐに分かった。だってこんなに、苦しそうだから。
「、、無理だよ、そんなの、何年好きでいたと思ってんの」
「私のこと好きでいたって、私はりほと一緒にいられないんだよ。私がりほをいくら愛してたって、、、愛してるって、言えないんだよ。」
色んな感情がぐちゃぐちゃになって、言葉が出ない。
そんなんで嫌いになれたら苦労しないんだよ、ばか。
嫌いになれなくてどれだけ泣いたか、あんたは知らないんでしょ。
あんたのために、私がどれだけ必死になれるか、知りもしないくせに。
止まらない涙を、西は優しく拭ってくれた。
西の手が私の首の後ろに回り、ぐっと引き寄せられる。
そのまま唇が重なった。
なんで、、、そんな事するの。
嫌いとでもなんとでも言って、突き放してよ。
お願いだから、、
もうこれ以上、好きにさせないで。
「好きなんだもん、、どうしようもないぐらい、大好きなの、西以外愛せないの。ごめん、ごめんなさい。」
言い終わると、西は凄く哀しそうな顔をした。
何も言わずにもう一度口付けを交わす。
中々唇を離してくれず、苦しくなって肩を叩く。
「まだ時間あるから、、私もりほにしたい。」
「にし、、、すきだよ、」
それしか言えなかった。
西はそれをイエスと受け取ったのか、その細い指で私の手首を掴んで押し倒す。
ーーー
「んっ、ぁん、にしぃ、ゃっ、あ」
「ごめんね、ごめんね、」
行為中、西は何度も謝ってきた。想像も出来ないぐらい沢山意味の詰まったごめんねを、私はただ聞いている事しかできなかった。
「あのねりほ、すきだよ、だいすき、ちゃんと伝わってる?」
伝わってるよ、その言葉の裏側にある”愛してる”も、ちゃんと。
「つたわ、って、るっ、ぁ、にしぃ、んぁっ」
「、、、、かわい、」
「すき、ぃっ、すきだよ、っ、あぁっ、も、いっちゃう、っ、ぁあ」
「気持ちよくなろうね」
「はぁっ、く、ぅ、ッッッ!!」
果てたばかりの私の体にキスを降らせてたくさん跡を付けたあと、満足したように優しく処理して服を着させてくれた。
ーーー
隙間を埋めるようにピタッとくっ付いてなにを話すでもなくただ、お互いの温もりを感じていた。
一生この時が続けばいいのに。
切なくなって後ろから抱き締める手に力を込めれば、すぐに振り返ってお返しをくれた。
その顔は今にも泣き出しそうで、刻一刻と、この時間の終わりが迫っていることを実感する。
AM8:00
「そろそろ、帰らなきゃ」
「うん、そうだね」
またいつだって会えるのに、今日の西にはもう一生会えないんだね。
貴方は他に、愛すべき人がいるから。
机の上に置きっぱなしだった指輪を手に取る。素直に左手を差し出してくる姿に、最後を実感した。
指輪をはめる前に、
「最後に、キスして」
「うん、いいよ」
『嬉し涙の味は甘くて、悲しい涙の味はしょっぱいんだって』
遠い昔、そんな会話をした記憶がある。
もしそうなら、世界一しょっぱいキスだね。
名残惜しく体を離す。指輪をはめると、西はふっと微笑んだ。
「ねぇりほ」
「ん?」
「今度会った時にはさ、ちゃんと親友に戻ってようね。」
そう言って彼女は、
髪に手をかけた。
〜〜〜
完結まで読んでくださった方、この後上がる「あとがき」へのコメントのご協力お願いします🙇♀️´-
コメント
5件
私が主さんの作品で一番好きな話なんですけどとても切なくてこの話を読んでいる自分も泣くぐらいの胸が苦しくなる話でとても好きです。
ああ切ない、、とてつもなく切ないけどだいすきです。